「賛否両論というけれど…」天気の子 かえるさんの映画レビュー(感想・評価)
賛否両論というけれど…
エンディングで賛否両論、と言われる所以は「愛する人か、世界か」を論じているのかな、と思います。
その点においては、美しいエンディングでした。
「自分たちの選んだ世界で君を愛する」。
素敵だと思います。
世界なんてそうそう変えられないし、そんな責任を誰かが追う必要なんてありませんし。
純粋に、映画の題材としても、カッコイイ。
しかしながら鑑賞中の心情は、「いや、世界救うかどうかはさておき、犯罪者にならない方法はあったんじゃないか??」という時点で置いてきぼりになってしまいました。
「世界の天候を変えてしまった」ことなんて、彼らがあの事件の後、生きていく上でなんの意味もないでしょう。
ですが、「補導歴があること、逮捕はされなかったけど、重大な犯罪を犯したこと」は、彼らの人生を一変させたはずです。
実際、刑事が途中「彼は人生を棒にふった」と言っていましたよね。
しかし、あのエピローグでは平々凡々な学生に戻っており、犯罪を犯した代償は、「愛する人と3年間会えなかったこと」のみ。そんなことがあり得る「世界」に納得できる大人が一体どれだけいるのでしょう。
世界に楯突く少年を描くなら、それだけの代償も考えてほしかったです。
あれだけ「現代社会」に似た世界を詳細に映像で表現しておきながら、
「現代社会を模したシステム」があまりにお粗末すぎます。もはや夢オチだといってほしいくらいの御都合主義。
「雲の上に世界があって、天気を変える巫女がいる」というファンタジーは許容できても、「就職活動中であったり、親権の申し立て中なんて微妙な立場にある成人が、公務執行妨害を始め、様々な犯罪を犯した後、3年後に幸せにくらしてます」なんてファンタジーは許容出来ません。
主人公はエピローグで「天気を変えてしまったこと」を反省してますが、「多くの重大な犯罪を犯したこと、周りの人間も巻き込んだこと」に対しては特に何かを感じている様子もなし。
あれだけの犯罪をして、エピローグでそれ相応の生活になってしまってるなら、納得も出来ます。
それらをきっちり清算しての、あのエンディングなら、私はきっと涙して絶賛していたと思います。
私は本作の「気持ち悪い駄作」だと感じましたが、それは「監督の性癖てんこもりだから」ではなく、「整合性ガン無視で違和感ありありの妄想」だからです。
いくらあれが「妄想を描いたファンタジー」だとはいえ、「物語と世界観の整合性」は無視しないで欲しかったです。
人生を棒に振ってまで誰かのために何かをしたかった。
罪を犯してそれを償わせることも、また許すことも大人ではないでしょうか。
高校生の3年間ってとても長いです。
きっとその3年間、彼は反省したと思いますよ。
やり方は間違いでしたが、誰かのために必死になれる人なんですから。
言葉や態度だけが反省ではないです、エンディングの2人を見て私はこれからの生き方でそれをみせてくれるんだろうなーって希望は持てましたけどね。