「真っ直ぐな気持ちに、心震えるストーリー」天気の子 名もなきアホウさんの映画レビュー(感想・評価)
真っ直ぐな気持ちに、心震えるストーリー
前作、前前作と新海監督の作品を観てきた。
今回のストーリーは、陳腐な表現であるのかもしれぬが、わしはどストレートな恋愛ファンタジーであると評する。
ヒロインである陽菜には、天気を晴れにする特殊な力が授けられるが、それは同時に自身の悲劇の始まりでもあった。陽菜を普通の家出少年である穂高(ちなみに、穂高がライ麦畑でつかまえて を愛読書にしているあたり、監督のニヤリとさせる演出が憎いのう)が、助け出すという、なんとも分かりやすい恋愛ファンタジーではないか。
しかし、この映画は、音楽、映像、また脇を固めるキャラクターの魅力により、それらの要素が乗算的に高め合い、否が応でも感情移入させられる作りとなっているのじゃ。特にキャラクターの魅力が、素晴らしい。ドラマで言えば、脇役が主役を食っていると言えるほどの出来になっている。特に過去に妻を亡くしている須賀のキャラクターにやられてしまう。最後のビルの場面で、ただ陽菜を救うために、「僕にできること」を全力でやろうとする穂高を、大人であるために、周りのことも考え「諦めた」須賀との対比が、より映画のクライマックスを盛り上げる。
須賀のどこか哀愁漂う姿に、自分の妻にできることがあったのではないか、何かできたのではないか、と自責の念が見え隠れするようだった。しかし、自分のこれまでの「大人である」ための行動は正しかったのだ。しかし、何かが引っかかり続けていた。それが、陽菜のために全力で行動する穂高の姿を見て、一つの答えが出たような気がしたのではないかのう。それは、「夢」「希望」「絆」といったような、青臭くて真っ直ぐで、素晴らしい言葉で紡がれる感情なのではないか。警官に対して、「お前らが穂高に触るんじゃねぇ!」と、大人であることをやめ、飛び込んだシーンには涙がつい、出てしまったのう。
新海監督、アニメでどこまで人の心を揺さぶるのか。次回作も期待しているぞい。