劇場公開日 2019年7月19日

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「過去の名作へのオマージュ満載、玄人向け作品」天気の子 不都合な真実さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5過去の名作へのオマージュ満載、玄人向け作品

2019年7月24日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

難しい

あえて、今回ののレビューでは、内容ではなく、新海監督が盛り込みたかった事について考察したいと思います。
まずは、映像美。
これは、新海誠名物とも言えるでしょう。素晴らしい再現度、そして聖地巡礼をしたくなるクオリティの高い背景。新宿が普段の活動拠点なので、自分が日頃通っている場所がそのままロケーションとして使われている事で、没入感を得られました。
JR大ガード脇の側道の落書きまで再現…すごい。

続いて、キャスティング。
これは本当に唸る配役だったと思います。
普段は声優ではない俳優さん、純粋に今をときめく声優さん、そして、ジブリに関わった重要な方々を起用した事!
とにかく、各方面の方を満遍なく散らしているので、思わずニヤリとさせられる声が出てくる。本田翼ちゃんだけがやはりちょっと浮いてましたが、予告ほどではないですw

次に、過去の名作へのオマージュ。
何よりも、ラピュタでしょう!
二人が手を繋いで落下するシーンのカット、巨大な雲の中には他の何かがいる…などなど。
良い意味で真似ている!
最高ですよ。
新海監督自身の前作とも時間軸を合わせてあって、ちょくちょく関わってくる。これもいい。

そして、主人公が歩む道筋とは別のIF設定として大人になってしまった男、須賀。
彼には物凄く思い入れを込めて作ってますね。
物語最終盤で発するセリフ「世界は元々…〇〇〇」
これは、生きる事に疲れた現代人(大人)に突き刺さります。それでも生きなあかんな、と思わされました。

キャラ達のセリフもよく練られていて、聞いてて心地いい。あんまりこんなセリフあったとか言っちゃうとネタバレなるのでやめときます。個人個人で伝わる思いも変わると思いますし。

追記。物語には関わってこないが、主人公が上京してきてからずっと持ち歩いて読んでいる本「ライ麦畑でつかまえて」。これ、読んでるって事は島で生活していて、鬱屈してたんだろうな、と想起させる。結構この部分だけでも空想で帆高のサイドストーリーを膨らませられると思います。

とにかく、おれの中では「君の名は」よりもはるかに身近で起き、そして現実に起きてもおかしくないこの映画の事件、お天道様のいたずら。
すごい入り込めたし、いちいち刺さりました。
面白い、深い。

最後にマイナス点。
多分、もっと詰め込みたかったと思います。やむなく切り捨てた設定や展開の早さで気になる所がありました。
映画って、仕方ないってのもわかるんですがね…

そして、新宿がメインロケーションなので、風俗や拳銃など、ちょっとアングラな設定です。子供に、見せたいか、と言われると、見せないかなー。大好きな街ですけどね、大人になった自分としてはw

総評。
「君の名は」で取り込んだ若い層への訴求力のみならず、大人達へのメッセージ性、コアなアニメファンまで取り込もうとする貪欲さ、そして舞台をまさに生きている現在の大都会にしておきつつも、ファンタジー色を壊さない。素直に拍手。

内容を完全に理解させるために全てのピースを提示するという方法ではなく、断片的に欠片を散りばめることで、観ている側が想像し、補完して欲しいというメッセージもある気がします。
これは、賛否あると思いますが、非常にうまい。
鑑賞後に観た人と語れる要素が多くなるので、チャレンジとは思いますが、自分は賛成派です。

好きな映画です。

不都合な真実