「構成の失敗・メタファーの不明確を感じました(超絶ネタバレなので映画見てから読んで下さい)」天気の子 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
構成の失敗・メタファーの不明確を感じました(超絶ネタバレなので映画見てから読んで下さい)
超絶ネタバレなので映画見てから読んで下さい。
この映画を見ながら、映画としての構成に失敗している、との思いを強く持ちました。
まず、前半がすごく退屈で、その理由をずっと考えていました。
前半退屈な理由は、この映画の目的が最初に明確にされていないことから来ると思われました。
例えば、
<最近の日本の天候は異常気象が続いている、その天気を回復する存在として天野陽菜という少女が現れた>
と映画の目的を例えば、(普通の天気でなく)異常気象(世界の異常)を陽菜が回復する物語だと一番初めに示せば、観客はそれを目的に大きな物語を見ることが出来、前半の退屈さは劇的に解決したと思われます。
次に、ずっと映画に深みがないな、と感じていました。
その理由は、悪天候が何を表しているのか、陽菜が天気を回復させることは何を表しているのか、明確に描かれてなかったからだと思われます。
つまりメタファー(暗喩)の不明確さです。
例えばこれも、
<異常気象(悪天候)は、今の日本の世の中が(小さくとも)狂ってるというメタファー>
<陽菜の天気の回復は、狂ってる世の中を回復させるというメタファー>
と明確にすれば、物語に深みが出たと思われます。
そして例えば物語の進行として、
<実は異常気象(悪天候)は、狂ってる世の中を洗い流す作用もあった>
<異常気象(悪天候)を陽菜が回復させたことで、かえって世の中の狂ってる部分が白日の下に明らかになるようになった>
と物語が展開していけば、
(例えば、須賀は帆高らにも知らせていない過去に拳銃交えたとんでもない犯罪を犯していて、陽菜の天気の回復がなぜか作用し過去の犯罪が白日の下にさらされ、帆高たちを交えて切迫した事件に後半巻き込まれていくなど‥)
映画の後半の大転換につなげられたと思われます。
感想結論としては、
1.物語の目的が、特に前半明確でなかった
2.悪天候や天気の回復が何を表現しているのか、明確ではなかった
ことによって、かなり食い足りない、前半退屈で描かれているストーリーに深みがない映画になってしまった、と思われました。
これは非常に残念な鑑賞後の気持ちでした。
もちろん新海監督の描きたかった、両親を亡くした子供や、田舎の価値観に違和感を抱えている若者、ネットカフェ住民や安易な風俗勤務など東京での裏側に隠れた貧困、離婚後の家族の想い、など、小さくとも「狂ってる」今の日本の世の中の部分は伝わっては来ました。
しかしそれらの描写も残念ながらこちらをハッとさせるような切迫感や深みやリアリティがなかったと思われます。
これらの(小さくとも)「狂ってる」描写の深さ問題も、上に書いた天気に関するメタファーの不明確さと相まって、物語を薄く感じさせた要因だと思われました。
新海監督の映画『君の名は。』は紛れもない傑作だと今でも思っています。
それは(入れ替わりの謎を解くストーリーだと)何を目指した物語かすぐに明確であったこと、入れ替わりのメタファーが(震災や、観客にとって大切な人との)描写として深く明確であったこと、後半への展開に予想外の驚きがあったこと、などが理由だったと思われます。
今回の映画『天気の子』はそれに匹敵するアイデアがあったと思われます。
ですが構成や深さの問題によって大変惜しすぎる中身になってしまっていたと思われます。
もちろんアニメーションの世界ではこのレベルでももしかしたら満足度が高いのかもしれません。
しかし勝手な個人の思いからは、普段アニメーションを見ない一般人々の日常の深さにも届く傑作を今回も期待していました。
勝手な思いからは、次作でのリベンジを願っています。
(今回も、アイデアや映像の素晴らしさはもちろん前提として‥)