劇場公開日 2019年7月19日

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「良い意味でなかなかのクセモノでした」天気の子 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0良い意味でなかなかのクセモノでした

2019年7月23日
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個人的な好き嫌いで言うと、私は子供の頃から「雨の日」が大好き。雨の下に出るのは嫌いだが、屋根の下で雨音を聞き、降り注ぐ雨粒、小さく跳ねる無数の水しぶきを眺めるのはどこか安心する。そして雨が上がった風景のキラキラ感、雲間から差し込む光、街が色を変えていく瞬間の気持ちよさ。その一方で雨の振り始めるあの不穏な感じは、アスファルトが濡れる匂いまで伝わってくる。
そんな私にとって、作品全体に繰り広げられる「雨表現」を堪能するだけでも十分この作品を観る価値があった。

…とまあ、そんな個人的嗜好がベースにあることを前置きして。

物語の大筋は、意志とは関係なくいわゆる「異能力」を得たキャラクターを巡る、比較的昔からあるタイプ。
あの「君の名は」はストーリーに若干難解さがあったが、今作は子供たちでもさらに観やすくなっている。

ただし、その表面的に進む青春ファンタジーと並行して、劇中で明確には語られないキャラクター達の細かな背景が物語に厚みを持たせている。
特に小栗旬演ずる須賀という男。おそらく彼の視点でもう一本「天気の子」ができるんじゃないかと思わせるほど。
映画が終わると、清々しい気分の奥に何かモヤモヤが心地よく残る。

「んんん。もう一回観たい…」

前半はサントリーやら日清食品やら画面のそこかしこに宣伝が登場して辟易する感じも無くはないが、まあそれは新海誠作品の注目度であり、業界にお金が流れている証左として映画好きとしてある程度は歓迎すべきなんだろう。

叩かれがちなタレント声優たちだが、皆さん頑張っていると思う。
前作に続いてRADWIMPSの音楽も見事。
「あの二人」が登場するあたりのファンサービスもあり、観たあとにいろんな視点で皆で話したくなる話題が散りばめられている。

私にとっては雨を楽しむ鑑賞映像としても十分以上の価値があったが、作品としてはあくまでいい意味で、観客を掴む「罠」が周到に仕込まれた小憎らしい作品。

是非大画面で。

キレンジャー