「爽やかだった、ひたすらに」天気の子 バーンスタインさんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかだった、ひたすらに
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映像美が素晴らしい、特に水の表現と花火のところ
そういった意味で視覚的な感動はあるのだけれど・・
今までの新海作品は距離感と喪失にひたむきに向き合っていた。
時間、空間、国境、年齢、成熟により変わっていくもの、忘れていく記憶、そういった茫漠とした断絶、どうしようもない距離が、等身大の現実として突きつけられていた。
だから、喪失を痛み、強く乗り越えようとしていた。
なぜだろう、天気の子は、それが薄いような気がする。
今までは、本人ではどうすることもできない距離に葛藤する姿を丁
寧に書いてきたはずだ。
宇宙規模の距離間で想いをつなぐこと、
国境を超えて昔諦めてしまった約束を果たすこと
昔なりたかった自分と決別すること
地の果てで喪失の痛みを受け入れること
背伸びしても届かない年上の女に青臭い想いを伝えること
時も記憶の喪失も超えて想いを紡ぐこと
子供だけの逃避行と社会秩序との矛盾を思いの強さだけで乗り切る姿を、一途ととるか、無鉄砲ととるか。
彼女を迎えに空へ行くことに、主人公はどれぐらい葛藤しただろうか?
取って付けたような警察との逃走劇、
真夏の水浸しの都心を掛ける姿は爽やかだし、爽快。
世間も気にしない程に一途で、だから抜群に浅かった。
街が海に飲まれようが、最後まで社会との結びつきは薄く、透き通っていた。
総じて、爽やかだった、ひたすらに。
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