「ただ寂しい」天気の子 モルさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ寂しい
新海監督の良さが出ていない気がした。
秒速五センチメートルや言の葉の庭などではヒロインの秘密をそれとなく我々視聴者に伝えることによって彼女らの「想い」の強さ、いじらしさ、感情の深みを表現していた。しかし、今作では露骨に秘密を公にし表現に手を抜いているとしか思えなかった。
大まかにこの作品のテーマは2つあると考えられる。
1つは「大人に対しての反抗」である。この作品では度々大人が悪く描かれている描写があり、警察やチンピラ達が少年達に対して言葉と身体の暴力を行います。それに対して少年や就職活動の上手くいかない夏美、大人になりきれない須賀、小学生の凪くん達が反抗していく姿が描かれている。今までの新海誠の作品では聞き分けの良い大人な子供、自立した人たちが描かれていたので新鮮であった。しかし拳銃やカーチェイス、トラックの火災などぶっ飛んだ描写で露骨に反抗し大人が悪いと決めつけすぎるのは子供ならではの危うさも含んでいた。私自身の主観としてはただの子供のワガママのように感じた。僕は悪くない、大人が悪いんだと言う自分勝手な考えが透けて見える。
2つ目は「世界か彼女なら彼女を選ぶ」である。この作品ではラストのシーンでもわかる通り世界から太陽を奪うことによって彼女を手に入れている。なぜ彼女が人柱に?と言うような説明はセカイ系では不必要であるがその分もう少しヒロインや周りの気持ちを表現した方がリアルさが増した気がする。セカイ系を表現する場合は非現実的なことに対してキャラクターがどれだけ真剣に、重く受け止めるかで作品の納得度、説得度が増すと思われる。今作では2時間と言う短い時間であったが数々のSF作品を作り上げてきた新海監督ならもっと上手く表現できたと言う気がして残念でならない。中途半端な巫女の説明ならいらない、ただの茶番でしかない。結局何も分かっていないから正直無駄である。
最後のシーン、帆高君、君は世界を犠牲にして彼女を選んだのだからもっと堂々と会いに行き、世界に少し罪悪感を抱きながらも幸せに2人で生きていくぐらいの覚悟をもっと見せなさい。あと新海監督にも一言、2人の離れていてもずっと想い合っている描写をたくさん散りばめるからこそ会えた感動があることを数々の作品で証明してきましたが今作では全くそんな描写ありませんでしたね。だから最後の会えたシーンに感動なんてないんですよ。
全体の感想
単体としては良かったかもしれない。しかし君の名はの登場人物を出すことによってラストの世界で彼らが生きていくことを想起させられ他の作品のキャラクターまで巻き込んで欲しくなかった面がある。また自分の知っている新海誠は今作を通して変わってしまったと感じただただ寂しいという思いである。途中から新海誠の雰囲気を醸し出した別の監督の作品と言う目で見ていた。私は面倒くさいオタクなので大多数の人は素直に楽しめると思うのでこのコメントはほっといてもらって良い。ただの自己満足で書いているので。
まず前提からちがうんですよね、新海誠さんの作品をいくつ見てきたか知りませんが。たった数作品を見ただけで貴方が彼の作る映画の何がわかるんですか?そもそも映画なんですよ?別の種類なんですよ?前作、前々作に大人側を悪に見立てて描かれている描写がないとしても。今回の映画はそう言った描写を描かれた作品なんだ。新鮮だな。これでいいと思いますけどね。