「最高純度の純愛映画 - クライマックスの演出にノックアウト」天気の子 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
最高純度の純愛映画 - クライマックスの演出にノックアウト
素晴らしかった。
許されるなら、立ち上がって、拍手したかった。
初見の心地よさは「君の名は。」を軽く超えました。
これ以上の感想は、長くなりそうなので、4つのポイントに分けます。
①クライマックスの演出力
②陽菜を演じた森七菜の魅力
③彼女をとるか、世界をとるか?
③銃の登場は必要だったか?
①ジブリやピクサーの名作ばかり観てると、映画にクライマックスがあるのは当たり前と思いがち。
でも、実際はそうでもない。
ジブリ作品でも「ゲド戦記」や「アリエッティ」は、いつの間にか終わってしまい、何処かクライマックスだったん?とキョトンとしました。
その点「天気の子」はパーフェクト。
自分が勧めた活動で、大事な人を喪った絶望。
取り戻せるかもしれないと、難関を振り払い、一途に走る。
遂に彼女と再開できたら、世界を救うのではなく、彼女を選び取る。
このクライマックスの演出が素晴らしい。
特に、「愛にできることはまだあるかい」「グランドエスケープ」の使い方が秀逸。
地表に落下しながら、二人が手を取る瞬間にテンションが集中し、疑うことのないピークを迎える。
自分は、帆高が線路を走ってるあたりから、涙がとまりませんでした。
愛する人を失った経験がある人は、彼の一途さに、文句なしに共感するでしょう。
②ヒロインの陽菜は、とにかく魅力的でした。
その魅力の大部分は、森七菜の声にあるのかもしれません。
ヒロインのキャスティングと演技指導に関しては、監督の腕はたしか。
プロの声優を起用しても、同様の魅力は得られたかもしれないけそど、知名度があるキャストはどうしても何らかのイメージがついているので、新人の起用のメリットは大きい。
その上で、あれだけの演技を引き出せるのなら、森七菜さんで大正解でしょ。
夏美を演じた本田翼には異論がある人がいるかもしれないけど、個人的には8割型正解だったと思います。
演技そのものは、プロっぽくなく、キャラに合っててよかったですが、時々本田翼が喋ってるという雑念が入っちゃったので、無名キャストならなお良かったかもしれません。
③東京を救わず、陽菜を救ったことにモヤっとするという感想もみうけましたが、この問は完全な愚問です。
だって、そもそも陽菜が消えれば、晴れ続けるだなんて保証は、どこにもないからです。
そういう設定でしょと思い込んでる人もいるようですが、噂話がちょろちょろ出てくるだけで、確定的な法則は何も語られてません。
それに対し、陽菜が今まさに消えてしまいそうなのは、ほぼ確実。
陽菜自身が、自分は消えてしまってもいいと諦めてたのも事実。
そうであれば、止めるために、もう晴れ女の役割はどうでもいい、自分のそばにい続けてくれって、願うのは当然。
それに、そうしたからって雨が何年も振り続けて、東京が沈んでしまうと、予測できる確証は何もなかったはずです。
不確定な世界を救えるかもという可能性より、目の前の確実な愛を優先して、何が悪い。
④一方で、都合よく登場する銃の存在は、必要なかったかもとちょっと思いました。
確かに、銃は陽菜を救うキッカケにも、彼女と親交を深めるキッカケにもなってはいる。
ただ、その後すぐビルで投げ捨てて、かなり長い間退場する。
と思いきや、終盤そのビルに戻ってきたところで、たまたま銃の近くに投げ飛ばされて、再登場する。
しかし、威嚇射撃であっても、あからさまな違法行為を警察の前ですることで、保護観察処分を受ける。
正直、後半に銃が再登場しなくても陽菜を救えたし、盛り上がりは演出可能。
前半に、陽菜を救う時も、最終的には走って逃げ切れてるので、銃はどうしても使わなきゃいけないアイテムではなかった。
ともすると、帆高に違法行為をさせることありきで、銃を拾わせたのかと思うくらい、無理に銃を登場させてる気にさえなる。
といっても④は些細な不満で、総合的にみたら本作品は、最近みた映画の中では、飛び抜けて出色の映画でした。
レビュー拝見しました。陽菜の魅力が声の演技の緻密さから来ていることや、現実での喪失感の追体験が涙を呼ぶという考察に同意です。銃についてですが、海外にもわかりやすい反抗の象徴としての起用や、二回とも空に向けて発砲したことから、天候という世相への反発を示しているのかもしれません。色んな解釈が出来ることに魅力を感じる人には、最高の作品ですよね。