「718という運命」天気の子 みりぽんさんの映画レビュー(感想・評価)
718という運命
7月19日、公開の日。朝一番の回を予約しておいた。
起きられるか不安に思いつつ予約したのが1週前。
予告編で公開を知ったのは1ヶ月前。
ようやくレビューを書いた。
さすが君の名はの大ヒットの後ということで関心も高く話題にもなった。
感想といえばほとんど出尽くした感じでこれといって特に書きたいことも無くなった。
作品自体は好きだと思う。
相変わらず細部にまでこだわった背景描写には畏れ入る。
冷蔵庫のドアを開けるとワンテンポ遅れてついてくる牛乳パックの動きだとか。
雨粒が地面を叩く様だとか。
しかしそれ以上に大きく水を差されたのは否めない。
まさか公開前日にあのような大事件が起きるなんて…
新海誠という人物は宮崎駿の後継として期待されているのはわかる。
しかし作画のクオリティだけでは鬼才を超えるのは不可能だ。
何故なら宮崎氏は戦争を体験している。
今の日常では計り知れないほどの絶望と不安、そして悲しみを味わった世代。
そこから来る怒りでもない恨みでもない微妙な感情が使命となって彼を突き動かしている。
どうも私には新海氏の作品は平和ボケしているように感じられて仕方がない。
東京が水没して水浸しになっているのに汚泥がまったく含まれていない透き通った水。
呑気に窓を開けてオフィスに流れ込む水を眺めている場合ではないと思う。
やはり生きる喜びや命を失う悲しみが作品に込められていないと。
最後の展開には落胆した人も多いだろうが話としては納得できなかったわけではない。
ただ被災した東京で苦しみながら必死に生きているという人々の生き様が全く感じられなかったことに、温室で育った世間知らずな価値観を感じざるを得ない。
あまりにも主人公とヒロインの狭い範囲の中でこじんまりとしたスケールの狭い話になってしまったのは残念。
せめてヒロインを助けることで世間から非難され孤立して苦悩に満ちた日々を送り続ける主人公の姿があればもう少し心が揺れ動いただろう。
新海氏は今回の許しがたい悲劇から何を学び、何を悟るのか。
718という運命を背負った世代がこれからの時代を導く。