劇場公開日 2019年3月22日

  • 予告編を見る

「難あり」アンノウン・ボディーズ R41さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 難あり

2025年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

アンノウンボディズ

2019年の作品
ベルギーのベストセラー小説が原作
クライムミステリーになると思うが、犯人が誰かと考察しながら見るミステリー要素に主軸が置かれている。
そしてこのミステリーに関して、小説であればドキドキ・ワクワク感があると思うが、実写化することで犯人が特定しやすくなる欠点が出る。
この物語にでてくる警察の捜査手段と上司の命令、これと対照的な主人公フレディの捜査が作品を面白くさせているものの、上司ベンケンのあまりに画一的な思考は、警察という組織がいかに無能かを浮き彫りにすることの是非は残ってしまう。
ここにコメディタッチを感じるが、冗談のない真面目さがベルギーの国民性なのかもしれない。
その分フレディのいい加減さが光る。
さて、
プロファイリングという捜査方法は、アメリカなどで始まった。
日本では、あの「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」がきっかけで捜査方法にプロファイリングが採用されたが、この捜査方法をこの作品では否定的に扱っていることが非常に特徴的だった。
ただ、その理由がプロファイラーより精神科医のほうが優れているというのはいささか合点がいかない。
そして最も不可解で、明らかにされなければならない犯人の「動機」が、この物語では削除されたことが理解できない。
物語の着地点は、画一的思考のベンケンといい加減な捜査官フレディの和解だった。
そのためのオチが、最後に起きた交通事故によって犯人の頭部が切断されたというもの。
では、その動機とは一体何だったのだろう?
まず、
プロファイリングとは、犯罪者の行動や心理的特徴を分析して、犯人像を推定する捜査手法。
犯罪の分析 行動パターンの分析 心理的特徴の推定 社会的背景の推定 捜査支援などから構成される。
つまりベンケンはこの方法によって操作を進めたことになる。
そして容疑者になったコーディは、自殺に見せかけて殺されたが、どうやってそんな事ができたのかという疑問は残ってしまう。
リナがパトリックとともにやったのだろうと推測できるものの、あまりにも見事な「結果」は、正直ありえないし、そんなことが可能である場合、当然プロファイルなど役に立ちそうもない。
リナはプールで助手のスザンヌに「注意」するという伏線がある。
「あまり患者に近づきすぎないで」
一見至極普通の注意のようだが、リナはパトリックに非常に接近している。
物語の始まりが野山の中にあった女性の首無し遺体の発見だったが、似たような事件はベルギーだけでなく、ドイツでも起きていた。
プロファイラーが見破れなかったのは、リナがその時々で精神疾患者を利用して事件を起こしていたからで、その患者の症状はどれも異なっていたからだろう。
ミステリーとしてはいい思いつきだと思う。
問題はリサの動機だ。
そして、何故スザンヌが殺されなければならなかったのだろう?
プールでの件を察すると、リナの注意はスザンヌにとって違和感を感じるものだった。
ひとつは、いつもと違うリナの言葉の可能性があり、もうひとつは誰もが理解していることを何故わざわざ言ったのかということ。
パトリックに対し異常接近しているのはリナの方で、それをよく見ていたスザンヌはあのリナの注意によって、彼女に不信感を抱いたのだろう。
特に殺害される直前のリナとパトリックの様子は異常で、スザンヌはその様子を報告することに決め、それをリナに話したから殺されたのだろう。
リナがパトリックを洗脳していたのは間違いない。
フレディがパトリックに不信感を抱いた時点で激しく講義したのも頷ける。
しかしリナの動機はどこにも見当たらない。
殺人事件 そして首無し しかも連続
このクライムミステリーを描くために仕掛けたトリックはそこそこ面白いが、動機の不在はあり得ない。
また、ベンケンが冷凍庫の鍵がないことにこだわり、矢継ぎ早に犯人を精神科医のリナとしたのも納得できない。
なお、これらについてはベルギーのネットでも説明不足を指摘されている。
ベストセラー小説ならばそのへんはしっかり描かれているのだろう。
日本でもよくあるタイプの映画化で、原作を忠実に描かないことで起きる違和感が、この作品かもしれない。

R41
PR U-NEXTで本編を観る