「B級映画としては及第点」HELLO WORLD hogeさんの映画レビュー(感想・評価)
B級映画としては及第点
はっきり言って何が描きたかったのか不明。
物語のSF的構造、ラスト1秒でひっくり返る驚きを描きたかったのであれば足りない。
映画の予告の時点で「10年後の現実世界から来たナオミと記録の中の直美」という二層構造まで喋っていたのでもしや...とは思ってましたが本当にやるとは。
あとラスト1秒じゃなくてラスト10分か15分くらいですよね?
二層の世界にキツネみたいなのがあらわれた時点で「ああ本当は三層構造なんだ」と気づくし、ナオミもセリフで言っているし。三層の人が誰なのかまでは分からなかったので、ラスト1秒で「ああ瑠璃か」とはなりましたがひっくり返りはしない。正確には「この物語はラスト10分か15分くらいでひっくり返る」だろう。
また矛盾点というか設定が曖昧な部分としては気になったのは、例えば改ざんされた記録を修復するキツネの存在です。彼らは瑠璃を殺すためならいきなり瞬間移動させたりなんでもやります。なのに雷が落ちる瞬間を回避できればOK?そんなことはないでしょう。修復のためならなんとしても殺しに来るでしょう。またラストで直美は瑠璃(高校生瑠璃の記憶を持った大人瑠璃)を連れて元いた世界に戻るが、戻ったら戻ったで瑠璃の存在が不整合となり修復されるのでは?というか博士によって装置は停止されたのですべて消えてしまうのでは?「彼らは新しい世界で生き続けるのじゃ」と言っていたけれどもただの記録にすぎないし、停止したら終わりでは。パラレルワールドとは意味が違う。
他にも記憶の同調はどの程度必要なのか?完全一致?なんかいい感じになればいいの?
二層目の世界のナオミを三層目の世界へとサルベージするときの同調基準がかなりいい加減。
これらのみならず全体的に説明がなさすぎる。「原作を読め」は怠慢、一本の映画を作っているのだから映画の中で語ってくれ。SFというのは説明があるからこそSFなのです。設定を曖昧にしてあとは考察してね、なんてのはSFではない、ただのファンタジーにすぎない。
では二人の男女のメロドラマが書きたかったのかというと多分違う。
ナオミが自分のことを想ってくれていると気付いて抱き着く瑠璃。いいシーンだけどもっとナオミを見る瑠璃視点を描かないと唐突すぎる。二人の距離が縮まるところとか恋に落ちるシーンとかもっとキャラクターに演技させないと感情移入できない。
声優がダメなのかCGだからダメなのかわからないけど、キャラクターが描けてなさすぎ。
個人的には世界設定をもっと削って、キャラクターをちゃんと描いて、SFではなくメロドラマとして作っていればよかったのにと思う。
そうすれば三重の世界構造の中で「10年後のナオミが瑠璃を」「さらに10年後の瑠璃がナオミを」助けるという大恋愛物語になったのにな~と思ってしまう。
またアニメとして見ても不足。
あれだけ三鈴を目立たせておいてなんの関係もないというのは何なのだ、何度も言うが原作読めというのは怠慢だ。ならば書かなければよろしい。
また直美がドローンで怪我をしたシーン。あそこはナオミが額の傷を見せて「俺は10年後のお前だ」というシーンを描くもんだろう。自由に変えられるアバターとか言っちゃうし、なんで直美に怪我をさせたのだろうか。
またラストの絶望的にセンスのないBGM。
CGも低予算感が凄い、顔が青ざめたり赤らめたりするときあんなにはっきり色を塗っては安っぽく見えてしまう。
いろいろ書いたが、最近凄い劇場アニメがポンポンと出てきたせいで感覚が鋭くなっていたのかもしれない。
これはB級映画なんだと思って気楽に見れば楽しめるのかもしれない。