アスのレビュー・感想・評価
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無意識の領域を可視化するという高度なテクニックに熱狂
自分とそっくりな訪問者が、我が身に襲いかかってくる。そんな「ドッペルゲンガー」をモチーフにした物語は数多くあるが、ジョーダン・ピール監督のこの強烈な一手が世界中を震撼させている理由はひとえに、これまで視界にすら入っていなかった世界をエンタテインメントの文法で可視化したことにある。
SNSの浸透などで、人と人とが容易につながりあえる一方、都合のいいことだけを見て、それ以外には蓋をする時代となった。隣人がどのような顔をしてるかなど気にもとめない。経済格差、移民問題、政治をめぐる分断。アメリカの問題は、今や世界共通の課題となりつつある。
「無意識の闇を可視化する」という意味において本作は、ミヒャエル・ハネケ監督の「ファニー・ゲーム」や「隠された記憶」とも重なる。かつては先進的だった語り口を、今やピールがエンタテインメントの領域でよりわかりやすく炸裂させていることに、高まる興奮が抑えられない。
とりあえず家族みんな強い
自分の影と戦う映画?難解でよう分からんかった。とりあえず家族みんな強い。誰か死ぬかと思ったら1人も死ななかったな。せっかくなら各々が特技を活かすバトルシーンもっと欲しかった。アデレードのしなやかなバレエキック、ジェイソンのマジックファイヤー、ゾーラの全力疾走(ちょっとあったけど)、ゲイブは自慢のボート活かしててナイス。
ちなみに俺の特技は特にないから影と戦ったら瞬殺される自信ある。
貧困の奮闘。
武力だけでなく精神力もヤバい。死体が転がってる人の家で堂々としてるし。貧困家庭が裕福な豪邸に居座るのはパラサイト思い出した。
アデレードが逃げようと説得した時に「ここには食料も充分にあるし困らない」と言ってたのは金持ちに対する皮肉か。豪邸ってsiriみたいに音声であんなに管理できるの?羨ましい。欲しいよー。警察呼ぶ時ファッ⚪︎音楽かかるのワロタ。肝心な時に役にたたねぇな。
恐怖のニヤリ。
最後のアデレードの微笑みで正体が影だと分かった時にはゾっとした。だとすると襲って来た方が本体だったのか。そういや最後の死闘でバレエで戦闘してたな。影のバレエうまいなーと思ってたけどそういうことね。
何で影が生まれたのか?影の目的は何なのか?入れ替わってたのはアデレードだけ?
難解で分からないことだらけだから、何回も観ないと理解できなさそう。考察記事を読んでみよ。
まぁそういう終わり方にするよね〜っていう。
面白かったけど期待以上という訳でもなかった。
予告でどんな映画かあまり想像つかなかったから本編を見た時結構意外で驚いた。
ドッペルゲンガー物といことで、まぁホラーな後味ちょいワルにするなら、実は自分が偽物でした〜っていう終わり方かな〜と思ったらまさにその通りの終わり方で笑った。
序盤以降はただのバイオハザード
序盤は面白かったです。不気味な見世物小屋、家の外に立って微動だにしない4人の家族。
でもここまででした。4人のドッペルゲンガーと対面して話し合いを開始したところで、20分くらい。それ以降の1時間はただの鬼ごっこと殺し合いです。殺し合いも、一般人のはずの主人公とその子ども達の殺しがまぁ手馴れてること。慣れすぎて殺した数を家族同士で自慢してるくらいで、ドッペルゲンガーもただのゾンビ。
正体不明の敵、不気味な存在だから怖いのに、パンデミックで量産しちゃったらただのバイオハザードです。結末も、序盤で「ここでもう偽物と入れ替わったんだろーな」「あの子の気配をずっと感じて怖い(本物の復讐が怖いんだろーな)」とか色々読めてしまうし、テザードが何なのかよく分からないけど、クローンなら何故 地上の動きを模写しないといけないのか、模写しか出来ないなら地上に出る計画のとき自由に動けたのなんで?地上で出産したら地下でも出産して、管理人もいないのに相手も勝手に決められてるのなんで?そもそも入れ替わってるんだから偽物の妊娠と合わせて地下の本人が孕む構造がおかしくね?とか色々分かりませんでした。
他の方も書いてるとおり、やりたい事ありきで隅々まで考えず作られた感があります。てかアメリカ国民と同数か州単位なのか分からないけど、人口の2倍を地下に収容してたわけで、ウサギ(自然繁殖)で食いつないだって水も電力も放棄されたら1ヶ月で全滅すると思う...それだけの規模のクローン作っといて放棄て……。
クローンの逆襲
自分たちと同じ姿をした赤い服の人たちに襲われる。一家は勝つ。
婦人はクローンで子どもの時に入れ替わっている。
クローンは政府の実験で作られ、魂が繋がっているため同じ行動をとる。
細かい点がよく分からない
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少女時代の主人公は、家族で遊園地に行った際にはぐれて変な建物に入った。
そこで姿形が自分と全く同じ少女と出会い、戻った少女は口をきけなくなる。
PTSDと診断されたが、やがて成長して結婚し、一男一女の母となる。
で休暇に夫の強い希望で、その遊園地に家族でやって来た。
別荘での夜、自分達と全く同じ姿形の赤い服を着た4人がやって来る。
主人公以外の分身は知能が低いが、主人公の分身だけは片言の言葉を話せた。
しかし何が目的かよく分からないまま、命の危険を感じた4人はスキを見て逃亡。
近くの親戚の別荘に行くのだが、親戚は彼らに全員殺されてた。
主人公らは彼らを殺すが、何百何千もの赤服が殺人しまくってるのをTVで知る。
やがて主人公の息子がさらわれる。主人公は一人、例の遊園地の建物へ。
そこで自分の分身を発見、殺して息子を取り返す。
実は赤い服の集団はかつて人間が作り出したクローンだった。
肉体の複製は可能だが、魂は作れないため全個体で共通にしかできなかった。
で無責任にも施設はそのまま地下に放置、彼らは何代かに渡って生き延びて来た。
少女時代に例の遊園地から帰って来た主人公は偽物の方だった。
だから赤服のボス的な、唯一しゃべってたのは本物の人間の方だったのだ。
結局偽主人公は本物を殺し、引き続き本物として人間界で生きることとなる。
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どんでん返し的なオチの意味は何となく分かったが、一部よう分からん。
何で全個体で同じ精神のはずなのに、偽主人公は普通の人間みたくなれてんの?
あと本物の主人公は他の赤服同様、なかなか死なん人間離れした強さやったが、
普通の人間なんやったらそれはおかしいんちゃうの?
ってか赤服達が結局何をしに来たんかもよう分からんし、
主人公らを殺さんのに、その親戚やその他大勢の一般人は即殺す。何故?
まあホラーじみた感じはなくてゾンビ映画みたいな感じかな。
思わず笑ってしまうシーンもあったりして、後味は決して悪くない。
怖かったが、オチにリアリティが感じられない(アメリカ人だと違うのかも?)。
自分達にそっくりの家族に襲われたシーンは怖かった。しょっちゅうホラー映画を観ているが小当たりだけに関しての怖さは相当のレベルだと思った。途中からコミカルになり、SFっぽくなり、最後は訳が分からなくなって終わったかに見えたらオチがあった。オチには敬意を表したいが、リアリティが感じられない(アメリカ人だと違うのかも?)。学生時代"ウィーアーザワールド"を聴いて胡散臭いと思ったのはよく覚えているが、ハンズ・アクロス・アメリカ・キャンペーンと言うのは知らなかった。主人公の息子の名前がジェイソン(分身の死に方は正に13日の金曜日)というのには気がついたが、他にも色々製作者が意図的に挿入した暗示があるのだろう。
表情の演技に驚愕。
NOPE を鑑賞して、旧作を観たくなった。
GET OUT に続き、こちらも鑑賞。
GET OUT はシンプルでじわじわくる感じだったが、こちらは色々散りばめられていて、
より2回目の鑑賞が面白い感じでした。
とにかく表情の演技が凄い。GET OUT のメイドさんもそうだったが、
ジョーダン ピール作品にでる方々は、とにかく、印象深い演技をされる。
バレエの描写について、よく分からなかったところがあったが、未公開シーンの中で
『本来、あの演目は二人で踊るものであった』ことの説明があり、納得しました。
表も裏も賞賛を受けたわけだが、才能有りの彼女は、世界観を変えるほどの演技だったわけですね。
眼に見えない貧富の格差が確実に存在すること。
人の光と影は表裏一体であること。
自分を守る。家族を守るためなら、人は影になりうること。
色々なことをスリラーの中に組み込んでいるのが、ピールさんの凄いところ。
観れば観るほど、色々、感じるところがある。新たに見えてくる。
次回作も、きっと複数回、観ちゃうんだろうな、私たちは。
監督のものすごい熱量を感じる、サスペンスホラーの傑作!!
「ゲット・アウト」に続きジョーダン・ピール監督がドッペルゲンガーを題材にした監督2作目
前作同様、何とも不気味で気持ちの悪い脳裏に焼き付く映像と緊張感漂うBGMでどっと疲れましたが、これも面白かった
「ゲット・アウト」よりもこっちの方が好みです
ルピタ・ニョンゴさんが主人公ファミリーのママ・アデレードを力強く演じてますが、もう一方の2役目、地下から地上に現れたテザード(クローン)・レッドのしゃがれ声の怪演に終始 圧倒されます
最後に明らかになる、アデレードとレッドが少女時代にビーチのミラーハウスで入れ替わっていたという事実、それに気づいてしまった?息子・・・なんとも衝撃的なエンディング、またもや予測不能でみごとでした
"エレミア書11章11節"のサインを持って立つ男は本作の根底にある"対照性"を示唆し、自分とそっくりなクローンの存在、11時11分、地上の世界と地下の世界、双子の姉妹、ビーチの簡易トイレから出てくるジェイソンを挟んで両側に立つトイレの構図など、全編に渡り、シンメトリーが表現されています
政府が無責任に行ったクローン実験の犠牲者として生まれたテザード達、この対照性は富と貧困も象徴しており、タイトルの「Us」はアメリカ合衆国の意味も含んでいるとのこと
ピール監督が現代アメリカに対して伝えたいメッセージが明確な作品コンセプトになっており、とても興味深いです
今回も映像・音楽そしてストーリー共にジョーダン・ピール監督の卓越した才能が爆発した、ものすごい熱量を持った作品として完成されていました、すごかったです
最後に、今でも不明な点
ジェイソンのテザードは何故 顔に大火傷を負っていたのか? どんな意味があるのか今だに不明です
影の存在
ところどころにブラックユーモアみたいなものがあり、映画全体の暗さをコミカルにしている。
影とまじりあったことで、影が街に襲来する話。影とは何なのか。それに対しての説明はなく、ただ昔から影がいた、という設定。
というか、この町にしか影はいないのかな…?
他の影はさっさと同じ姿の者を殺すのに、主人公たちだけは中々、殺されない謎。
不思議。復讐したいんじゃなかったのか…。
それにしても、最後のシーンはなかなか愉快だった。
やっぱりホラー(ミステリー?)はこうじゃないとね(笑)。
面白い所はかなり面白い
序盤のホラー演出はかなり怖くて期待が盛り上がる、ドッペルゲンガーが家の前で向こう向いて立ってるだけなのに怖い
斬新な怖がらせ方で期待を高めるもまさかのこのシーンが怖さのピーク
お向かいさん家族のドッペルとのバトルはかなりギャグよりでなんじゃこら状態(監督がもともとコメディの人だったんですね)
でも中盤を我慢するとスケキヨボーイが焼身自殺するあたりから面白さが戻ってくる(ホラーとしての面白さではないけど)
全体的な印象としては、一つ一つの素材は素晴らしいのに1本の映画としてはまとまりが悪い感じ、初っぱなから主人公とドッペルゲンガーが入れ替わっているてオチが丸わかりだったり、ドッペルゲンガーが本体の特徴を奇妙な形で引き継いでいる、ある意味分かりやすく大衆向けな親切さがある一方で、地下世界の説明があまりなかったり主人公とドッペルの戦いがダンスのように優雅、最後のドッペルたちがモニュメント的に手を繋ぐエンディングなど、芸術性が高い作品名にありがちな不親切さがちぐはぐに思える
かなり間延びして見える中盤のギャグ風な展開もガチホラーかと思ったら肩透かしを食らってガッカリするけど、この監督はこういう作風とわかっていれば演出自体は悪くないし楽しめる
他の作品も見てみようかな
面白い!
自宅PS4にて、U-NEXTで鑑賞しました。
『ゲットアウト』のジョーダンピール監督の作品になります。今作は映画館で一度字幕版で鑑賞済みなのですが、近々同監督の『ノープ』公開ということで、自宅で吹替版でまた見てみたいと思い鑑賞しました。
今作でも、『ゲットアウト』でもそうなのですが、ジョーダンピール監督の作品はアメリカ社会をテーマにしたものになっているようです。やはり自身が黒人のアメリカ人であるからでしょうか。よって我々一般の日本人にとっては、初見では(相当アメリカ社会に詳しくない限り)深くまで理解するのが難しいのではないでしょうか。ただ、鑑賞後に考察、解説サイト等を見ると、面白さが分かると思います。
『ノープ』がどうなるか楽しみです。
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている。
配信110円に釣られてiPadで視聴。
夜の場面、暗かった・・・差別語みたいだけど、主役のルピタ・ニョンゴは、
美人の黒人女性だが、かなり黒人としても黒い方。
パソコン画面の中に沈むようだった。家族も然り。
非常に観にくい、これならDVDで観たかった。
内容も自分たち家族にそっくりの分身(ドッペルゲンガー)が現れ、現れただけでも怖いのに、襲ってくる。命の危険に晒されるのだ。
主役のアディ(ルピタ・ニョンゴ)は幼い頃、お祭りの日に、行方不明になる。
たった15分間だったのにダメージを受けて、失語症になってしまう。
アディはいったい何を見たのか?
この問いはラストでとんでもないホラーな回答が出される!!
ここからネタバレですので、ラストを知りたくない方は、どうか読むのをやめて下さいね。
最初の説明でアメリカには何万キロメートルに及ぶ「地下道、地下室」が存在する・・・
テロップが流れます。
地下には自分の分身(影・・・とか、分身、あるいはクローンとか説明される)
地上の本人は幸せを謳歌しているのに、影は暗く貧しく浮かばれない地下生活。
彼らの恨みが決起へと向かう。
《手を繋ごうアメリカ》
赤い服を着た分身たちは決起して《殺し合い?》を始める。
最後に一番驚いたのはアディはお祭りの幼いあの日に、分身と入れ替わっていて、
今のアディ(お母さん)はクローンなのです。
けれど、その後の展開はまるで分かりません。
・・・その後も知りたい!!
ジョーダン・ピール監督の言うには、恵まれた一部の人々が富や幸せを
独り占めしている世界への警鐘・・・だとか!
でも結局は殺し合い(暴力)で、解決するのなら、今までと同じこと・・・
そう思えてしはいました。
結末が予測出来てしまう
序盤からの導入で、どうせドッペルゲンガー(クローン)と入れ替わっているのだろうと思いながら、鑑賞して「やっぱり」感が否めない。
内容のスッカラカンさは兎も角として、主役陣の俳優さん達の演技が惹き込まれる程に素晴らしかったです。
それ以外は何とも言えない。
同監督の前作が面白かったので、今作も期待値高めだったのですが…楽し...
同監督の前作が面白かったので、今作も期待値高めだったのですが…楽しみにしていた分、だいぶ残念な内容でした。
終盤、不気味な存在側が物語の肝を説明してくれちゃっていたのが1番残念でした😂
そしてその説明を聞いても、いまいちよく分からなかった「なぜ自分がもう1人いるのか」問題。
なにより主人公の夫の行動が抜け過ぎていて、彼の魅力はどこ?状態でした。
娘の足が早い設定なども別にいらないような…
こわかったけどなんか惜しい
序盤に怖さのピークがきて、その後はずっと戦闘で、ホラーというよりアクションシーン多めな感じ。
影の説明もしっくりこないけど深くは考えない方がよさそう。
不幸な人たちは自分だったかもしれないし、立場は簡単に入れ替わってしまうことに、幸せに暮らしている人たちは気づいていないことが恐怖なのだという映画だった。
良かったところ
・影の家族が家に侵入してくるところが最高に怖くて良かった。そこがピークだったかも。
・影の動きが気持ち悪くて怖くて良かった。
・アクションシーンも楽しかった。
・主人公が実は地下出身で入れ替わっていたオチにも驚いたし、息子たちから見れば母親はあの人なので、バッドエンドなのかハッピーエンドなのかよくわからない感じが良かった。
・極限状態でも誰が運転するかとか些細なことで言い争いが始まるのが家族っぽくてあるあると思った。
悪かったところ
・全体的に編集がどうなの?って思ってしまう。
見せる順番とか変えたらもっとわかりやすくなる気がするけどどうなんだろう。最初の子供時代のとことか、現在にすすんだ時にさっきのは母親か娘か?ってなったし。普通に家族で引っ越ししてきたシーンから始めた方がよかったんじゃないだろうか。
・実は一番ワクワクしたのが影が出てきたときで、こういう場合、だいたいその正体は、幽霊、宇宙人、妖怪、精神病の幻覚あたりがありがちだけど、そのどれでもない影という新しい存在が発明されたんだ!と思ったのだが、ラストに実は地下世界のクローン実験の生き残りという、わかりにくく微妙な全然納得できない設定であることが判明し、とてもがっかりした。
・友達の家族が殺されるところ、ふざけすぎだろあれ
ドッペンゲルガーの告白
飛び抜けてアデレードに強い殺意を持つレッド。
あえて手錠をかけさせたのは何故か、
レッドの正体が明かされた時に分かる。
地下に押し込められた魂のないクローンたち。
その中で唯一、魂をもつオリジナルであるレッド。
彼女の絶望や苦悩を、久しく喋らなかった喉をつかい、絞りだすように一言一言吐き出す。ルピタ・ニョンゴの鬼気迫る演技。
冒頭に出てくる手を繋ぎ抗議する人間たち、ドッペンゲルガーたちの荒唐無稽な地下社会。
映画だけでは読み取りがたい監督の思いは、アメリカの移民問題など、社会への風刺であると知り納得がいった。
ジョーダン・ピールはダメだ
「私たちはアメリカ人だ」という台詞、テザードたちの赤い服、共通するハサミという武器。何か意味ありげな描写は多いものの、ありげなだけ。
ジョーダン・ピールを「鬼才」とするコピーも見かけるけど、鬼才っていうのは狂ってるけど、その中に美学や芸術があるひとのこと。フォン・トリアーとか、園子温とか。ジョーダン・ピールの場合、ぶっ飛んでいるだけ。
「ゲット・アウト」のときもぶっ飛んでいるだけで、最後まで何も回収してくれなかった。
今回も、人間を複製して生まれたのがテザードたちなのはいいとして、複製していないはずの人間が勝手にうまれてくるのもよくわからないし、何より入れ替わったアデレードとレッドが、入れ替わったことをお互い忘れてるのも意味がわからない。
ホラーというより不気味系スリラー ※ネタバレは纏めて最下部
ジャケ写が完全にホラーですが、見てみると完全にスリラー。設定がちょいホラーかな…程度。
ただ、宗教(キリスト教)要素やアメリカの社会問題(格差社会・白人特権・ネイティブアメリカン迫害等)を多分に含んだ内容なので、それらに関心のない人はスリルを楽しむだけになってしまうかも。それだけでも充分楽しめますが、やはり知っていた方がのめり込めると思います。日本人には知識量の面でちと厳しい。
映画.comで評価見た時、何でこんなに低いんだ!?とガッカリしたんですが(現時点で☆3.3)、そのせいかな。同監督のデビュー作『ゲット・アウト』が良すぎたせいもある。
オカルトホラー要素はなく、どちらかというと中盤からはスプラッター。ちょっと激しめの流血あり。R-15なので、殺人シーンもグチャァ!ブショァ!みたいな、なかなかの音がします。苦手な方は要注意。『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』『キル・ビル』辺りを見られる人なら大丈夫。
ホラーによくある大量の虫や無意味なエロシーン、やたらと傷口の断面をアップで見せる、突然の爆音でビビらせる等の不快表現はなく、怖がらせ方はかなり正統派。ちゃんと演技とストーリーで怖がらせてくれるので、安心して家族やカップルで・音量は最初から最後まで大き目で・食事中でも観賞できます。虫は序盤で蜘蛛が1匹出てくるだけ。
「もう一人の自分」達が襲ってきてからの本筋はほぼ夜のシーンなので、洋画あるあるですが画面が暗くてちょっと見づらいです。白人監督の作品よりはマシだったような気もしますが…(白人が人種の中で一番光に対して目が敏感なため、白人は暗い方が見やすい)
黒人監督ならではの(ってのもおかしな話だが)、主人公アデレードのドレッドヘア。良いですね。個人的にまったく違和感なく、本人が望めばどの作品でも黒人はこの髪型の方が良いんではないかと思うくらいしっくりくるんですが(これも偏見か)、監督は特典映像で「主人公の女性が細いドレッドヘアにしている、これは映画史上とても重要なこと」と語っています。
…いや、良くね?別にドレッドでも。違和感ないよ。むしろ似合ってるよ。人の誇りにまでいちいちケチつける奴がいるらしいけど、気にせず今後のスタンダードにしてこうぜ。
主演のルピタ・ニョンゴはMCUの『ブラックパンサー』で主人公の婚約者役で出てたけど、全然存在感なくて記憶に残らなかったんですが(主人公に婚約者なんていたっけ?レベル)、本作では圧倒的。撮り方ももちろんあるんだろうけど、普段の愛嬌がある可愛い系の顔から何故ああなる???1人2役の演じ分けが凄すぎて、「コレ本当に同一人物?」と笑ってしまいました。
こういうの見てしまうと、MCU映画ってやっぱり雰囲気で乗り切ってるところも大きくて、俳優陣の実力を充分に引き出せてはいないのかなと思ってしまったり(※MCU大ファンの言い草)。
本作の監督ジョーダン・ピールは、前作『ゲット・アウト』でも思いましたが、特に有名俳優ばかり起用しているわけでもないのに違和感ない人選をしていて好感度高いです。見た目やキャリアより演技力にこだわり、「有名俳優を起用して、その名前を利用して宣伝して一定の視聴者数を稼いで…」というセコさを感じさせない、2作とも実力勝負の映画という感じがします。ルピタは賞獲ってますけども。
どうでもいいけど、本作の直前に『透明人間』も見たんですが、『透明人間』の主演エリザベス・モスが本作では主人公の友人役で出てて「アレーッ!?さっきの人!」と心の中で突っ込んでしまいました(ほんとにどうでもいい)。
意図せず数時間のうちにエリザベス・モスの演技力の高さを思い知ったのでした…
あらすじ:
主人公アデレードは幼少期に海辺の遊園地で迷子になり、ミラーハウスで自分と全く同じ姿の少女と出逢う。親元へ戻った時にはPTSDを発症し、失語症になっていた。大人になったアデレードは失語症も治り、結婚・出産を経て普通の生活を送っていたが、家族の要望で故郷サンタクルーズへ帰ることに。夫ゲイブがしつこく誘い、トラウマの原因になった海に行くことになるが、息子ジェイソンが誰にも言わずトイレに行ってしまい、行方不明になったと勘違いしたアデレードは激しく取り乱しジェイソンを叱責する。別荘に戻った後もアデレードの不安は刻一刻と増していき、遂には「もう帰りたい、見張られている気がする」と言い出す。最初は馬鹿にしていたゲイブだったが、アデレードの必死の形相に押され始め、そこに停電、見知らぬ不審な家族の不法侵入が重なり、ゲイブも徐々に事の深刻さを理解し始める。
あらすじ読んでわかる通り、ゲイブがちょいウザ系キャラ。つまんないジョークや変なタイミングで空気を和ませようとして頓珍漢なことを言う、ノリもちょいウザだし子供より子供っぽくて、一番お荷物というか、役に立ってはいるんですが役に立ってる感よりウザ感の方が強い。
作中では緩急の「緩」担当という感じで、ゲイブが出てくると良くも悪くも雰囲気がちょっと緩くなる。
監督は元々コメディアンだそうで、緊迫した雰囲気を壊さない程度にちょっとだけおもろい台詞を入れてくるのが上手いです。とはいえ爆笑とか、心が和む笑いとかではなく、鼻で笑う感じというか、「いや今そんな場合ちゃうやろ」と心の中で突っ込んでしまうような、一人だけ空気読めてないゲイブを「オイオイ、ええ加減にせえよ」と呆れ笑いというのかな。とにかく笑いは笑いなんだけど、明るい笑いじゃない。だからホラーの中に入れても違和感がないのかも。
アメリカのコメディ映画が馬鹿で下品な内容が多いせいかよく誤解されていますが、アメリカのコメディアンは基本的に、日本でいう「馬鹿やって笑わせる」芸人とは違います。
どちらかというと噺家の類で、割と社会批判や、皆が当たり前と思っていることをあえて深堀りし、痛い所を突いたり風刺をしたりする人が多いんですが、そういう意味でコメディアンの監督がこういった作品を撮っているのは当然といえば当然の成り行きな気がしますし、それで更に美術的センスがあるならば、映画監督やるの自体が理にかなってるなと感じます。
↓↓↓
以下
ネタバレ
あり
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上にゲイブがあまり役立ってる感じがしないと書きましたが、これには訳がありまして。
アデレードや娘のゾーラ、ジェイソンも、自分の意思で人を殺すシーンがちゃんとあるのに、ゲイブだけは自分の分身アブラハムを殺したのは俺だ、と自己申告するのみ。ゲイブがアブラハムと闘い始めたところで場面転換してしまうため、死闘が映らないどころか、本当にとどめを刺せたのかどうかすらわからない。
2019年の映画とあって、女性主演の作品が圧倒的に少ないというのはアメリカで既に問題になっていたので、そういう意味でも女性主人公だからってヘナチョコにするのではなく(女性主人公だと何故かサポートの男性が見せ場を攫っていく映画は結構多い)、女性でも主人公最強設定でいくぞ!みたいなのもあるのかなーとかユルユル考えてたんですが、最後まで見ると多分違うんでしょうね。
衝撃の(そうでもないか?)ラストで、結局アデレードが「地下の住人」、異常者と思われていたレッドが本来のアデレードであり元々「地上の住人」だったことがわかります。地下の住人はまるで獣のようで、地上の人を殺すことに全く抵抗がありません。だから、アデレードは「強い」のではなく、殺すことに抵抗がない、だから強く見えるのかなと。
そして、アデレードだけならば「幼少期の地下で育った経験が猟奇的な側面を残した」と考えられなくもないのですが、子供達も結構マジになって殺してるんですよね。無論やらなきゃ自分の身が危ないし、相手が明らかに異常者だとわかった上で「もう殺すしかない」となるわけなんですが、それにしてもとどめの差し方がかなり激しい。子供だから容赦ないだけ…??
ジェイソンはそうでもないのですが、ゾーラは友人の分身をゴルフクラブで何度も殴打した後、クラブの柄で滅多刺しに。アデレードに至っては獣のような唸り声を上げながら分身を植木バサミで滅多刺し、火掻き棒で滅多刺し。その後すぐに普通の「子供を心配する母」に戻るのが逆に不気味。
恐らく視聴者に対し、「子供のために必死な母親」とギリギリ思わせられる線を狙ったかとは思うのですが、既に1回目の唸り声で「おっと、コイツは…」と割と勘付いてしまった人は多いと思います。
地下で育ったせいというより、テザードとしての「本性が出た」が正しいのでしょう。そして、その本性を見たジェイソンは怯えた顔で仮面を被る。
ゾーラとジェイソンは、いわば人間とテザードのハーフです。自分達もいつ母と同じように本性が出るかわかりませんし、沢山のテザード達の殺戮を見たジェイソンからすれば、母がいつまたその本性を現すかもわかりません。アホの父は多分今後も気付かないでしょう。
ラストの地下の住人が手を繋いでいる長さを見ても、この先生きていくのも一筋縄ではいかないことが想像できます。ただ、恐らくこの手を繋いでいる地下の住人(=テザード=「繋ぐ人々」の意)はアメリカ国内だけなんですよね。何故なら、冒頭で流れるCM、"Hands Across America"(アメリカの西海岸から東海岸までを人々が手を繋ぎ1本の線にして貧しい人間を支援してやろうという試み)を模しているから。
アデレードの言う通りメキシコまで逃げてしまえば安全…なんでしょう。きっと。
『アス』というタイトルは原題も"Us"で英語で「私達」という意味の単語ですが、同時にU.S.=United States=アメリカを表してもいるそうで、作中でも「お前ら一体何者なんだ?」と尋ねたゲイブにレッドが「私達はアメリカ人」と答えています。
ぼーっと見てたので「唐突に!?」と思ったのですが、地上に住む人=持つ者、地下に住む人=持たざる者と考えると納得。つまり、「私達は(お前らと同じ)アメリカ人(なのにお前らと違って人として扱われない)」と言いたいんですね。
地上に住み、当たり前のように自分の意思で貧しいながらも自分の好きなことをして生きる人間たちと、地下に住み、地上のオリジナルの操り人形として生きる以外の道を知らないクローンたち。
「私達はアメリカ人」、この一言がそのまま、「持つ者は持たざる者の気持ちも境遇も何一つ知らず、知ろうともせず、搾取していることにも気付かない」という痛烈な批判に繋がっています。
そして、操り人形として生きる地下の住人達の中でレッドが唯一「自分は特別だ」と気付きます。気付いたこと自体が特別ですし、彼女は地上のオリジナル(アデレード)に操られずに動くことができ、だからアデレードと成り代わることができた。むしろオリジナルを操ることすらできたのかも?
これが、社会が無視してきた底辺の人々が革命を起こすキッカケとなる。
そのほか、宗教的な話やネイティブアメリカンの伝説など、語り切れないし詳しくもないので割愛しますが、こうして書いてみると『ゲット・アウト』の時より盛り込み過ぎかなという印象はあります。個人的には社会的な意味など考えずに見ても充分楽しめましたが、アメリカ人には身につまされる話だったのでは。
日本人には、少し前に話題になった韓国の映画『パラサイト 半地下の家族』(こちらも2019年)の方が、貧困層との圧倒的格差をわかりやすく感じられると思います。
こちらは本作と違い、宗教だの特定の人種の歴史、伝説、その国の社会問題など、その国に住んでないとわからない問題ばかりをネタにするのでなく、恐らく最初から海外に向けて「韓国社会の今」を発信するつもりで作ったのかなと思います。
なので韓国国内の状況をよく知らなくても本作よりはわかりやすいですし、ただ格差社会の問題に触れたいだけなら『パラサイト』をお勧めします。
が、俳優の迫力、演出、テンポなど、全面的に本作の方が良かったと個人的には思うので、アメリカの社会問題などは抜きにしても、ぜひ一度見てみていただきたいです。
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