劇場公開日 2019年12月20日

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「これでお別れ?納得と少しの感傷」ヒックとドラゴン 聖地への冒険 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5これでお別れ?納得と少しの感傷

2023年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

個人的には、やっぱり最初のオリジナルが好きだけど、この映画に文句つけるのはよっぽどの頑固者かドラゴン嫌いの人ぐらいか。

あらゆる角度から見て、隙がない造りになっていて、たとえば誰かに映画のおすすめをする時にも安心してしゃべれる。なおかつ、ディズニーじゃないのでちょっと傍流というか、「意外と知られてないけど、こんな面白い映画があるのよ」みたいな話題にもなる。レビューも、これほど好意的なコメントが寄せられているとは、予想もしていなかった。見た人の数が少ない分、辛口コメントも少ないということか。

あえて文句を言わせてもらえば、ヒックもトゥースも成長していて、まわりとの距離感や、役割が変わっているという変化を受け入れることが嫌だということ。落ちこぼれの男の子が、同じく飛べなくなったドラゴンと絆を結び、世界を変えていくというテーマが、思い入れのポイントだった。ところが今作ではすでにヒックは王様になっており、民衆の生殺与奪を考える責任を負わされている。もちろんその部分は軽めに描写してあるだけで、新天地を目指す方針を打ち出したときに、強いリーダーシップを発揮するための方便だ。

本当にそんな王がいたら、民族はすぐに滅亡してしまうし、ドラゴンという最強の武力を持つ村が、世界を征服してしまうのは歴史的に見て必然だろう。軍を組織して、他国を侵略していくことこそが、本当のリアル。もちろんこのシリーズにふさわしいストーリーとは言えない。

たとえばヒックの親戚のドラゴン嫌いの少女とか、仲良しで体の不自由な男の子とかが主人公なら、もっとストーリーに感情移入できたかもしれない。ヒックがあまりにも優等生すぎて、自分から見て随分遠い存在になってしまったな。なんて感傷に浸ってしまった。ドラゴンとバイキングという、ファンタジーな設定が係っているだけに、現実離れした路線を引っ張る物語はより身近で深刻なものがふさわしかったはずだ。

シリーズの流れで言えば、落ちこぼれが周囲から認められるストーリーに独自の世界観を打ち出した一作目。そこからの続きを描き、父親越えという難しいテーマに向き合った続編。(予定されていた劇場公開が中止になったのは残念でならない)ドラゴンの世界観も膨れ上がり、テレビシリーズも好評で着実に広がっていった。どうやらこれでお別れになりそうだ。それにふさわしい作品になったと思う。

うそつきカモメ