「「ワイスピ」と言う沈み行く泥船を捨て、新たな可能性を提示した作品」ワイルド・スピード スーパーコンボ カガチさんの映画レビュー(感想・評価)
「ワイスピ」と言う沈み行く泥船を捨て、新たな可能性を提示した作品
まず初めに、この作品に「ワイスピらしさ」を求めてはいけない。
本編が行き詰まり、急遽招集した大物俳優2名を主演にして、ドル箱タイトルを冠した新たな作品、それが本作だ。
だからタイトルも、「Hobbs & Shaw」がメインなのだろう。
もはや本編に登場したキャラが出てくる以外何の共通点も無いが、それはそれで良い。
と言うかその方が良い。スピンオフなんだから。
結局何が言いたいかと言うと、この映画を見て「もはや別物」と不満げに言っている人は、少し教養が足りない。だって別物だし。スピンオフまでワイスピ色に染まっていたら、それはスピンオフではなく本編の続きだ。
本題へ
制作陣もようやくひしひしと感じだした「ネタ切れ感」「出し切った感」を払拭する為、今までのワイスピらしさを一切合切捨て去り、新たな可能性を見出すためにフランチャイズ形式で制作したワイスピ初の実写版スピンオフ。
内容はまさに上記の通りで、出てくる車両にこそこだわりを感じるのは確かだが、ワイスピほど全面に押し出す訳でも無く、ド派手なカーアクションと言うよりは「超近未来バトルSF」と言う印象を受けた。
本作のBGM歌唱を担当したイドリス・エルバ扮する敵役「ブリクストン」はまさかの改造人間だし、完全独立型バイクも登場し、現代ではまだ想像すらできない技術がふんだんに盛り込まれていた。
しかしこのSFは、映画全体を見ても非常に良い方面へと働いていた。
それは何故か?
そもそもワイスピ本編の舞台が「現代」であり、ドラテク的に「あり得ない」と言える部分は数多あるが、科学技術的にあり得ないと言える部分はそれほどない。
それこそ直近の「ゴッドアイ」くらいなもので、それ以外はまだ「もしかしたら?」と思えるほど映画や現代の技術に馴染んでいた。
しかし今作の「ブリクストン」や「完全独立型バイク」は、どう考えてもワイスピの世界観に会わなかった。
だがそれは、ワイスピ本編で考えたらの話し。本作はあくまでスピンオフだ。
そこがこのSF染みた演出や敵役の数々をより良いエッセンスへと変貌させた。
もしこの設定がワイスピの続編へと持ってこられたら、如何せん受け入れ難い状況になるだろう。
そう言った本編からの離脱が、今作を成功へと導いたのかもしれない。
まぁ、ドウェインもジェイソンも、主演俳優絶対主義のシリーズ映画で細々とやっていく様な落ちぶれた役者で無いのは間違いないし、それならまだ辛うじて同タイトルのスピンオフと言う形で同系統シリーズに出てくれるだけありがたい。
マジで、この主演二人がこのシリーズから抜けてしまったら、ワイスピは終わる。
個人的感想
シリーズ外ではあるが、ワイスピの中では1、2を争うほど好き。
まぁもともと「ジェイソン・ステイサム」が好きなのもあるだろうが、それにしても近年の映画の中では本当に出来が良かったと思う。だからこそ残念なのは、本作を「ワイスピ」と言うくくりに入れてしまっている事だ。
いや、この映画ホントにワイスピな意味ある?
何かこのままだと足を引っ張られて一緒に沈みそうで怖い。
まぁワイスピも全世界的に有名で人気があるドル箱に違いはないから、爆死こそしないだろうが、このまま人気が落ちてくるのも事実だし、せっかくこんなに面白いなら独立した映画でも良かったんじゃないかなぁ。