「ドラマのよかったところが省かれている別物の映画」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD えーごさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマのよかったところが省かれている別物の映画
ドラマから映画へ、何でこんな事になってしまっているのか、映画を見てからずっとモヤモヤ考えています。
元々ドラマのコンセプトも脚本も深夜ドラマのレベルでざっくりしたものしかなかったんですね。
そこへあの俳優陣が素晴らしい肉付けを行なった。
特に牧を演じる林さんは牧のマイノリティである心の葛藤とかいろいろな感情をセンシティブな目の演技で表現していて、その気持ちの揺れ、憂い、悲しみなど牧のいろんな感情に見ているこちらまでもが気持ちを同じくしてしまい、自分の中の弱く柔らかな部分に突き刺さって、ドラマに嵌りまくったんだと思います。
田中さんもドラマの時のインタビューで春田をどう魅力的に、誰にでも受け入れてもらえるような春田を演じるかが重要、答えていました。
なのに、映画ではその春田のいいところが全然出ていなくて、春田の人となりを通り一遍に描いて、ストーリーを進めたらあんな春田が出来上がってしまっていました。
ドラマの時のような吸引力のある春田ではなかったんですよね、映画の春田は。猪突猛進ではあったけど。
映画での牧は春田と気持ちが通じているけど、忙しい仕事と恋愛のコントロールが出来ずマジデリな春田に振り回されていて、前向きな話を春田に出来ないまま、爆破に突入して救出大作戦&仲直り告白しての海外勤務での背を向けての歩き出し。映画では私の気持ちが牧にも春田にもついていけなかったんです。
私がドラマに嵌った、ドラマでのよかったところが映画ではことごとく省かれていて、映画のアクション、コメディー、ラブラブシーン、これらのどれもが心に響かず。
映画制作陣はこのドラマのヒットした理由を正しく理解していなかったんだと理解しました。
そして今はもしかしたらドラマも俳優陣が自由にできる余白が多かったからあの素敵なドラマが仕上がったのか⁈とまで思ってきています。
それともドラマの制作ではよかったけれど、社運を賭けた一大プロジェクトになれば上層部のトンチンカンな指示に振り回されて思っていたところに着地できずに、現場ではだから違うって言ってたのに…とか、世間でよくある走り出したら止まらない失敗プロジェクトの典型なのでしょうか?
いや、ドラマと映画は別物、ヒットドラマの虎の威を借りて二匹目のどじょう狙いだったんで、ドラマファンとは違うところにターゲットが置かれ、コアなドラマファンはお呼びじゃなかったのかもしれません。
でも、ドラマファンの目ではなくフラットな目線で見た映画としてはどうなのか?はよくわかりませんがアクションにもコメディーにもラブにも振り切れてなかったので映画の醍醐味は感じられませんでした。
どちらにしろ、ドラマファンの私は映画の事は忘れることにします。
もう一度あの深夜ドラマのテイストで続編でリベンジされることを期待しています。