「一度だと伝わりきらない」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD いよかんさんの映画レビュー(感想・評価)
一度だと伝わりきらない
連ドラ放送時からのファンです。
映画の公開とても楽しみにしており、いままでに4回見ました。
好きなところもたくさんあるけれど、モヤモヤするところもあったというのが正直な感想です。
ドラマ未見の方や、ドラマをラブ要素のあるコメディとして見ていた方はとても楽しめると思います。
でもドラマの熱心なファンや、春田と牧のラブストーリー部分が好きだった方には物足りないところもあるのではないでしょうか。
初見のときは、笑ったし泣けたし最後は寂しさもありつつ幸せに終わったけど、あまりにもキャラクターの気持ちがわからなかったことが多くて、見終わったあとはモヤモヤが残りました。
お互いぶつかったり傷つけたりすることもあるけれど、そこに悪意はなくて、好きという気持ちゆえであるというのが、おっさんずラブのいちばん好きなところでした。
映画の中で春田と牧はすれ違っているけど、それはお互いを大事に思ってるからこそで、それはドラマのときと変わっていません。
でも、初見のときはそれがわかりませんでした。
映画では牧にはドラマでは一切出てこなかった夢があって、ずっと想い続けてきた春田より唐突に出てきた(ように見える)夢のことが大事になってしまったように見えて、なんで???と思ってしまいました。
繰り返し見ていると、牧に夢があったのもおかしなことではないし、春田より夢を大事にしているわけではないことも、疑問に思った行動の理由もだんだんとわかってきます。
でもその大事なところが伝わりにくいのは惜しいと思います。
伝わりにくさの原因は心理的にも時間的にも空白の多いことが原因だと思いますが、演技はその空白を埋めてくれるほどすばらしいです。
たとえば春田が海外赴任中の一年間、どうやって過ごしていたのかほとんど説明はありません。
でも映画でのふたりの様子を見れば、恋人としてそれなりに仲良くやっていたんだなということは十分伝わってきます。
ただそうやって毎回表情や雰囲気から察して理解していくのは、何度も繰り返して見ないと難しいと思うんです。
私の理解力が足りないところもあるかもしれませんが、もう少し説明があったらよかった。
限られた時間の中でそれは難しかったのかもしれません。
とはいえ他に削るべきところがあったとも思えません。
コメディ部分も声を出して笑ったし、スケールの大きい爆発も私はすごく楽しめました。
笑いあり涙あり切なさありで、いろいろ詰め込んだ目まぐるしい展開もおっさんずラブの好きなところだったので、そこを削られたら違和感があった気がします。
たくさんの人に見てもらうためには、こういうバランスがベストだったのだとも思います。
だから「夢と家族」という大きなテーマをやるなら、連ドラでもう少し時間をかけてやってくれればよかったのに、と思わざるをえません。
ただ実現するかわからないその機会を待つより、映画で春田や牧、他のみんなの未来を描いてしっかり終わらせてくれたのは製作側の愛なのだと感じています。
いままでいろいろと書きましたが、やっぱりおっさんずラブもこの映画も好きです。
スタッフさんキャストさん方がこの作品を熱い思いで作ってくれたこと、とても伝わってきますし、感謝しています。
ラストシーン、素敵でした。
でもこれで完結というのはやっぱり寂しいので、続編期待しています。