「大ヒットドラマ人気にあぐらを書いた駄作。」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD てんてこさんの映画レビュー(感想・評価)
大ヒットドラマ人気にあぐらを書いた駄作。
ドラマが大ヒットして、グッズや関連書籍もソフトもガンガンに売れてる。イベントだって連日の大入り満員。だからドラマと同じキャストに映画からの新キャストを足して、アクションや海外ロケを入れて派手にすれば、ファンはみんな何回も観にきてくれる。
そういう読みはまあその通りだと思います。
でもそれにしてもあまりにあまりじゃないですか。
ドラマも確かにコメディだったけど、コメディはコメディなりに、出演者と制作者全員が一生懸命同性同士の恋愛という難しいテーマにとりくみ、真摯に向かいあい、繊細に表現しようとしたからこそ、国内でだけでなく海外でさえもあれだけの共感を得たはずです。
この映画には、制作者の真摯さも繊細さも、毛ほども観ることはできません。
むしろ、出演者が全力で演技すればするほど、可哀想で胸が痛くなってしまうくらい。
どんなシナリオであれ、出演者は皆さん、楽しみに映画館にくるファンのために必死に演じてくれています。
その努力と才能には惜しみない喝采を差し上げたい。
けどこのシナリオはコメディとしてもサスペンスとしても雑すぎます。
本社が立ち上げたという大プロジェクトの内容についての説明がないから、営業所の抵抗が薄っぺらく見えてしまい、登場人物たちの葛藤がただ幼稚な感情論にしか見えない。
提携企業の隠されたサイドビジネスがただの記号にしかなってないし、そもそも提携先を海外企業にした意味がいっさい不明。
企業内ヒエラルキーや人間関係の描写がとにかくおざなりでリアリティの欠片もない。
ジェンダーや固定概念を超えた人間愛を純粋に描こうとしたドラマの映画化として、いったい何をやりたかったのかがまったくわからない。あ、ファンにお金を落としてほしかったんですね。内容はともかく、劇場まで来てくれればいいんですもんね。
あの、ドラマのときにおそらく当事者の皆さんにあれこれリサーチはされたはずだと思いますが、映画版の制作時にはそういうことはされましたでしょうか。
してないですよね。
もうそんなことどうだっていいんですよね。きっと。
私は映画が好きだけど、「日本映画はつまらないから観ない」という友人知人にいつも「そんなことない、日本映画だってみんな一生懸命つくってる。いい作品だっていっぱいある」と抗弁してるけど、今回はあえて言わせていただきます。
こんなことやってるから、日本映画、ダメなんだと思います。
こんな作品が大ヒットして企業がバカバカ儲かってみんな喜んでハイおしまい、ハイめでたいなんていう日本映画なら、もうダメになっちゃってるんだと思います。
ご愁傷様でした。
観ててホントに疲れました。情けなかったです。