劇場公開日 2019年8月23日

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「ドラマを知らない人に観て頂きたい作品。」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD りょうちん365さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5ドラマを知らない人に観て頂きたい作品。

2019年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

まず、私はドラマファンです。こういった所に投稿するのも初めてです。
ドラマファンとして言いたいことは山ほどあるのですが、なるべく客観的に書いてみたいと思います。

私は今の所、この映画を3回見ています。
初めて見た時の印象としては、つまらなくはなかったです。思いがけず泣いた箇所もあります(部長)もちろんいろんな場面で笑いました。しかし、恋愛関係にある2人の印象が全く残らなかったし、最終的にハッピーエンドっぽいのに、どういう事?と疑問が残りました。

今思えば、初めて見た人に「面白い」言ってもらえる映画にしたかったという制作側の意図は汲み取れます。しかし、その面白さの方向が荒唐無稽。所謂コントであり、寸劇なのです。万人に面白いと思ってもらう為には手っ取り早いです。そこだけ切り取っても面白いんですから。

 でもそちらを優先するんだったら(私は娯楽ムービーとして別にそれでもいいんです)メイン2人のゴタゴタは「ちょっとした喧嘩」、くらいにしてほしかったというのが素直な気持ちです。それこそ仲直りも簡単に出来てしまうような。あの2人はかなり重い喧嘩をしていました。相手に対する言葉がびっくりするほどキツイ。だからこそ、描かれた仲直りが唐突すぎて意味が分からない。重い言葉を言わせておいてその言葉を見ている方が理解できない状況で簡単に乗り越えさせてしまう所に違和感しかありません。そりゃ役者さんたちはその理由を自分なりに解釈して演じられているのでしょう。しかし、見ている方はそれこそ「言われなきゃわかんない」んですよ。または、映像作品なので、心情を「表現されてなきゃわかんない」んですよ。想像にお任せします、汲み取ってみたいなノリはほんとそのラブストーリーとして作品を作りたいという思いを捨てているようにしか思えません。本当にラブストーリーが軸というのなら、その辺りをきっちりやらなければ共感など1ミリも得られません。

 つまり、面白いシーンやインパクトあるシーンを優先させる為に組み立て、尺の都合で入りきらなかった部分をバサバサと想像にお任せします的に切り落としたようなストーリーのせいで、登場キャラクターの心情まったく伝わってこない。もしこのコント的おもしろさをメインストーリーとして優先させるならば、2人の恋愛関係のゴタゴタシーンは、あくまでそのおもしろさを更に引き立たせる為の役割を果たさせる様なプランにするべきで、余った時間でシリアスをやろうとした所で謎しか残らず、おもしろ楽しいムービーとしては、蛇足にしかならない。2人を本気でフューチャーするなら多すぎるコントシーンが邪魔ですし、1本の映画としてバランスが悪すぎる。ドラマファンは、ドラマの様なその2人を中心としたラブストーリーが見たいのですから、そんな扱いの2人にファンが納得しないのは当然です。

 ドラマは軸がラブストーリーだったので、その上にちりばめられた面白いやりとりがとてもバランスが良かった。しかし今回の映画の軸がコントになってしまっています。ラブストーリーを断片的にちりばめられても、なんだこりゃです。しかも今回の2人のラブのテーマはネガティブが中心ですか面白シーンすら、不謹慎にも思える所もある。お互いがお互いを邪魔してるってどういう事なんでしょう。

 正直、違和感だらけですが、素人の私が考えてもほんの一言、ほんの1カットあれば解決できるよう違和感が沢山あります。それをしなかったのは何故なのか。力量不足ならばもう語ることすら意味がないので、ここは、やはり詰め込み過ぎたが故の尺不足と、作品への客観視点及び俯瞰視点の欠如と言わざるを得ない気がします。

 もちろんいろんな映画を鑑賞されている方や何度も映画館に足を運ばれる本当の映画ファンの方々には最初から箸にも棒にも引っかからないのだと思いますが、たまに映画を娯楽として見る位の方々(私もその層です)への映画としては、成功のような気もします。見て、楽しかった、面白かったという印象が残る事は、それだけで、ライト層の映画鑑賞の目的を果たしているとも言えると思うので。

 重ねて言いますが、軸がコントの面白ストーリーだったとしても私はいいんです別に。ただし、その為に一番重要なラブストーリーの部分をその面白ストーリーのつなぎの様に扱われた事が納得いかないのです。

 あと一つ言いたいのは、ドラマファンがこの映画を素晴らしいというのであれば、描かれていない部分をそれぞれの「解釈」で納得させているからです。『映画でこう言ってるのは、きっとこういう気持ちだからだ!素敵!!』と。私もファンなので、その気持ちはわかります。そうしないと到底受け入れらないのです。人間って不思議な物で、そう思えばそう見えてくるんですよね。まあ、それも悪いとはいいませんが、それが1本の映画作品というものの評価を捻じ曲げるのは違うと思います。映画作品は受け取った第一印象が大半です。もちろん、理解ができなくて何度も見て見えてくるものもあるのも確か。でもそれは、ただの妄想補完ではありません。あくまで映画から読み取れるものである必要がある。その読み取れるものを表現するのが映像作品であるべきなのではと思います。

 私は今回の映画版への評価は果てしなくネガティブですけど、
娯楽作品の一つとしては、ドラマ未視聴の方にも見て頂きたい気持ちがあります。
そうして、その方がどう思うのか片っ端から聞いて回りたい。
それは決してファンのヒットの為の裏工作のようなものではありません。
でも好きな物の前では冷静でいられないのも確か。

 そしてこれだけこの映画に対してネガティブな感想な私ですが、「確かめる」という意味でまた見に行かなければ、と謎のモチベーションがあります。普通は回を重ねる毎に理解が深まるものなんですけど、見れば見るほど謎ばかり増える作品はそうそうありません。ドラマが好きだったからこその反応なのだと思いますが、客観的に考えれば、とてもポジティブもとてもネガティブも関心の度合いとしては高いですよね。そういう意味で問題作を与えてくれた公式にはまあきっと人生振り返れば貴重な経験をさせてくれたと感謝する時が来るかもしれません。

 しかし、この場を借りて公式にいいたいのは、この映画を純愛だのラブストーリーだの言うのは、対外的に恥ずかしいし、失礼なので本気でやめてくれという事です。ドラマで凄く良い評価ばかりを受けたから、麻痺してるのかもしれないけど、酷評も全て見た上で、ガチの反省会をやって頂きたいと思います。スタッフキャストが仲が良く、話し合ってシーンを構築したというなら、キャストも含めてです。人数が多い方が偏らずに済む。この状態のまま続編など作られても、期待は全くできません。さらに傷口を広げられる位なら、ドラマ版の綺麗なまま記憶に残しておきたいという気持ちです。正直映画というコンテンツに踏み切った事がそもそもの間違いだったというか、踊らされて持ち上げられて勘違いした結果の様にしか思えません。今一度思い入れや思い込みを捨てて1つの作品として俯瞰で映画を見てみるべきです。

 こう思うのは悔しいですが、過去はもう変えられないですから、この先に生かしてもらうしかない。例え、それがおっさんずラブというコンテンツではなくても、この先もクリエイターとして制作に携わるならば、私が言うのはおこがましいとは思いますが、成長の為の貴重な経験になる筈です。
制作陣にはこの映画が成功した、良かったなどど決して思ってほしくはないです。

 客観的にと冒頭に書いたにも関わらず、やはり感情的になってしまいました。あくまで私の1意見です。それが正しいとは思っていません。一番欲しいのは俯瞰的視点であり、客観的視点です。

 映画、というかストーリーのあるものは最初の入り口はみんな俯瞰で見始めると思います。見ているうちに自然と引き込まれて心を動かされている、という形が本来の良作なのではないかと思います。だからこそ、ドラマ未視聴の方に観て頂きたい。私達ファンや制作陣は少なからず先入観、思い入れ、思い込みがあります。そんな私には作品を評価するにはふさわしくないと感じます。
「なんかすごく評価が割れている作品だけど、実際どうなんだろう」そんな気持ちで構いません。とにかく是非見てご意見をして頂きたい作品だと思います。

長文をお読み頂き、ありがとうございました。

りょうちん365
むさしさんのコメント
2019年8月30日

代弁頂きありがとうございます。ドラマが本当に素晴らしかったから、映画が駄作でも脳が勝手に補正してる感じ、良く分かります。それだけ、ドラマは本当に素晴らしかった。それは事実だし、その記憶まで塗り替えて欲しくないです。ファンは二重に辛いです。この意見が正しいかどうかは分かりませんが、関係者はこういう意見もきちんと真摯に受け止めるべきです。

むさし
ジャスコさんのコメント
2019年8月30日

全く同感です。
私も1度観て落胆し、いてもたっても居られず他サイトですが、初めてレビューというものを投稿しました。
そして謎のモチベーションであと2回は観に行く予定です。
でも今以上に悲しい気分にさせられるのではという恐怖心もあります。
普段はSNSなども見る専門ですが、今回ばかりは低評価をされているファンの方々と直接話して慰め合いたい気分です。

ジャスコ