「コメディパートは最高!なんだけど…」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD ザラメせんべいさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディパートは最高!なんだけど…
面白かった?と訊かれれば文句なく。劇場でもお笑いシーンでは笑い声が漏れていましたし、娯楽としては申し分ない面白さでした。
ドラマをご覧になってない方には、ぜひオススメ。笑えて感動する場面もある映画です。
満点にできないのは、どうにもモヤモヤが晴れないからなのです。
以下、モヤモヤしたポイントです。
①春田の性格
ドラマ版ではどんなにけなされてもあしらわれても、もう!って程度の怒り方でした。なのに、映画ではやたら牧にキレています。
牧に対して嫉妬しているのはどうしてなんでしょう?エリートってわかりきってるのに。怒るなら、あれだけ言ったのに、まだ牧が勝手に決めて無理するところではないでしょうか。恋人が一人で苦しんでいて、頼ってもらえない苛立たしさなら理解できます。
別れようって言葉も辛すぎでした。春田から言わないで欲しかった。せめて勝手にしろ、くらいじゃないとドラマのあの熱烈プロポーズはなんだったのか?
そして、取って付けたような夢も。牧に気持ちが通じても海外勤務を断らなかったのに、いきなり仕事への姿勢が変わってしまった。
いっそ本社勤務を受けて、牧は海外勤務なのに春田だけ牧家に住む、って展開なら面白かったかもしれません。本社に通いやすいし、実家追い出されちゃったし。
②ジャスティスは必要か?
ヘラヘラしてた後輩が、いきなり暗い告白を始めて???…なんで?と、胸打つより困惑してしまいました。
役者さんのお芝居は良かったけれど、唐突に熱演が始まっても気持ちがついていきません。キャラとして必要なのかどうか。
牧が嫉妬する相手は部長一人で充分。
③唐突な武川のロマンス
ドラマのラストに乗っかって、部長が大好きになる武川。追う側だった部長が追われるのには鈍くて面白かったです。でも不自然過ぎて、ご都合感が強いです。元カレが牧なのに。もう少しだけ、部長を好きになった説得力があればと残念です。
④牧の努力不足
仕事が面白くてのめり込んで、大好きな恋人がほんのり煩わしくなる経験をした人は多いはず。牧くんはそれで前の恋人と破局してしまったのに、何故乗り越えようと頑張らないのでしょう?一年ぶりでやっと一緒に暮らせるのに、あっさり出ていって、見ているこちらは拍子抜け。
取り残されて、ぶっ壊れた春田も見ていたのに。
どうせなら、限界まで頑張って倒れて、春田に説得されて実家に戻る、って流れなら良かったのにと思います。
⑤春田母へのカミングアウトは?
母と牧がはじめましてではないことに、春田は驚いていないようだったので、一年の間に牧から伝えられてたのでしょうかね。
さておき、春田が男を見せるかと思いきや、曖昧のままで牧が出ていっちゃうという…。
一番越えるべきハードルをスルーしてしまいました。孫の顔は確実に見せられないって、伝えなくていいの?春田の覚悟はそんななの?
家族に理解して貰うって、最難関で見せ場だと思うのに、触れられることなくあっさり終わりました。牧パパも説得できず。
思うに、ドラマ版に夢中だったからこそ、違和感がつらいし、気になってしまうわけで、映画単体で予備知識なく見ていたら絶賛していたはずです。
特に部長は最高でした。
コメディシーンは笑いが抑えきれなかったし、牧に炎の中で言ったことは涙が出るくらい感動しました。
だからこそ、あと少しで手放しの大傑作だったのに、もったいないと思ってしまうのです。
語られなかった部分も多く、余韻の残るラストだったので、ぜひ続きを製作してほしいと願ってしまう映画です。