「春田からの悪いところ10個と牧の一途なウソ」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD マイブームさんの映画レビュー(感想・評価)
春田からの悪いところ10個と牧の一途なウソ
ドラマのときから1回目と2回目で印象が大きく異なる作品のため、2回視聴し、その後考察したことを確認するために3回目を視聴して、レビューしています。
1回目は案の定、これなら映画にしない方が良かったストーリー破綻のお祭りファンムービーだと思いました。演者はもれなく上手、スタッフの熱意も十分伝わり、笑えるし、ほろりとする部分もあるけど、なんだか消化不良。この時点であれば評価は☆3が限界でした。ただ、スタッフ・キャストとも全力で作った悔いはない自信作だと何度も伝えていたため、なぜ自分が納得できないかを頑張って考えながら、ストーリーや各キャラクターの立ち位置を理解したうえで2回目を視聴。
結論として、牧の本心がドラマ以上に見えにくいことが原因でした。劇場版ではドラマより色々スケールアップしていて、コメディ部分に関しては言わずもがな、春田は大騒ぎ、爆破ありと「動」が激しい分、ラブとして牧の「静」はよりひっそりと沈み込んでいました。
劇場版の牧は歯切れが悪くモヤモヤした印象で、違和感があります。仕事>恋愛だからかな、と思えば春田のピンチに上司全無視で飛び出したり。春田への小言を飲み込んだり。どうしてかな、と思いましたが工場で二人が炎に囲まれるシーンで色々解決しました。
春田が牧に自分の気持ちを伝えるシーンの最初に、結婚しようって言ったけど男同士だから法律上できないし、俺子供好きなんだよね、と言います。この時、牧は当然だというような表情をしていました。ここから、牧は春田は子供が好きで元々女性が好きな人だから、いつかは普通の結婚をして普通の家庭をもつだろう、それこそが春田の幸せだと考えていたのだろうと思いました。
自分以外の誰かが春田を幸せにするということ、つまり牧は終わりのある恋愛だと思って春田と接していた。だからこそ未来のことは考えていなかった。また、ドラマでもう我慢しないといった通り、牧から終わらせる恋愛ではなく、春田から終わらせられるその時まで、と自ら断ち切ることもしなかった。春田にいつか訪れるであろう幸せを考えると、偏見にさらさず変な男を近寄らせないよう必死に守る一方で、仕事や体調不良で春田に負担をかけることでフられるのではないかと怯えて少しでも長く一緒の時を過ごせるように行動をしていたのでしょう。前にも後ろにも動けないためモヤモヤしていた印象に。いずれも春田に幸せになってもらいたい、ただそれだけだったのかなと感じます。
劇中では、「結婚って本気で言っているのか」と思わず言ったり、春田の母に友人で通したり、自分の仕事を良く思っていない春田に仕事の話をしなかったり、部長の再アプローチを全力で阻止したり、過労で倒れたことを伝えなかったり、春田からの別れでは取り乱さず笑顔で応じたり。健気で一途です。
炎に囲まれるシーンはその後、春田が牧へ「二人で生きていくうえで考えた嫌なこと」を伝えました。おっさんずラブでは「悪いところ10個言えますか?」が見どころの1つで、単発ではハセから、連続ドラマでは牧から、劇場版では部長から、それぞれ春田へ悪いところも好きという、より上の好きとして表現されていました。春田から牧へは、春田なのでハゲとかデブとか情緒もデリカシーもない言葉ですが、今現在ではなく未来について、春田なりに牧が死ぬまでを想定して言葉が紡がれます。その数、11個。+1っていうのは悪いところがいくつあっても良いということでしょう。そして、牧でなければいけない、牧でなければ幸せじゃないと真正面から伝えます。
春田に幸せになってほしかった牧。自分は何もわかっていなかった、わかろうとしていなかった、春田と向き合うことで関係性が壊れることが怖かったから仕事を言い訳にしていただけだった、と臆病な自分を認めます。そして、春田の幸せのために自分がではなく、春田でなければ自分は幸せではない、とやっと認めることが出来ました。
神様もいなければ、指輪もなく、服はボロボロ、祝福してくれる友人もいない、王子様も助けに来ない、死にそうな状況で、二人は好きだけではない、確かな「永遠の愛」を知りました。Love or Deadじゃん…。
工場から二人で支えあいながら出てきたことから、二人は互いを支えあいながら生きていくことを選択したんだなぁ、と3回目で涙、涙。
二人がこの結論にたどり着くには部長の存在が必要不可欠ですね。春田の背中を押し、牧に叱咤激励する様は圧倒的ヒロイン!かまってヒロイン爆誕、は本当に好きです。その通り(笑)
ただ成就する恋があれば、敗れる恋もある。部長は敗れた恋を受け入れることで、少女漫画のような恋は終わります。これは完結だ、完結しちゃったよ、と涙。
劇場版はいたるところにいろんな形の愛が確かにあって、特に春田と牧の胸を穿つ愛に深く感銘を受けました。おっさんずラブの凄いところってこういう何度も見ることで気が付く繊細な表現だよな、と実感。各キャラクターが良く作られていて、荒唐無稽なこの世界観を見事に完成させています。キャストの方々、本当にすごいです。吉田さんは言わずもがなです。田中さんは春田を確立させましたね。林さん、牧をよくここまで表現しきれたなと拍手。
劇場版すごいじゃん!数段パワーアップしてる!ということで☆5。見るたびに新しい発見があるため何度でも、また見に行きたくなる映画です。
素晴らしい説明ありがとうございます!3回目でようやく細かい言葉も聞こえてくるのがこの映画の楽しみですよね〜私は部長に臆病さを指摘され、図星だろ!と言われて足を踏み外して落下する牧くん、それをしっかり支える部長に向けた、もう迷わないという決意の瞳に号泣でした…シンガポールの話が出た時も牧くんとても嬉しそうでしたね、今度は牧くんの駐在の番ですが、この2人ならちゃんとやっていけると思います。