「これが完結編なら無かったことにしたい」劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD marinoさんの映画レビュー(感想・評価)
これが完結編なら無かったことにしたい
ドラマからの大ファンで、この公開を心待ちにしていました。
「子供から大人まで楽しめる、この夏最高のエンタテインメントに仕上がっております!」
という謳い文句にはピッタリ当てはまっていると思います。
ただ、他のドラマファンの方々も書かれておりますが、登場人物の心情描写があまりにも雑すぎて、ドラマのときのような感情移入はできませんでした。
プロポーズのあとも人生は続く。いざ結婚して一緒に暮らすとなったときに、仕事と家庭の両立に悩む、そういうところを描いたと、事前の監督と脚本家さんのインタビュー記事を読んでいたので、爆破の予告シーンを見ても不安はなかったのですが…
やはりかなりエンタメに寄った作品となっていました。
途中、春田と牧は仕事による生活のすれ違いで別れてしまいますが、最後はやはり一緒にいたいとヨリを戻します。
ただ、なぜお互いそのような結論に至ったのかがさっぱり分かりません。
春田が牧へ強く当たってしまうのは、仕事が充実していて夢を持っている牧への嫉妬であると気付いたり、
牧はプライドが高すぎて相手に気持ちを伝えることが疎かになっているけれど、言葉にしないと分からない、と部長に叱咤されたりと、
お互いの欠点に気が付かせるシーンはあるのですが、
それを糧に、今後2人の関係をどう再構築していくかが描かれませんでした。
最後のキスシーンも、情緒に欠け、戦友のようなハグ…
ドラマ版では、こちらの心が痛んだり、嬉し泣きしてしまうくらいの丁寧な心情描写(脚本)とそれを可能としていた俳優陣の演技力の高さで、非常に素晴らしい作品となっていましたが、
映画はファンサービスとしてのエンタメを追求し過ぎたかな、と思います。
迫力はあそこまでなくて良いですし、部長と牧の春田取り合いシーンや新キャラ絡みを削って、もう少し丁寧に春田と牧にフォーカスしてもらいたかったです。
けれど、ファンであることには変わりませんのでもう2回は見に行きたいなと思っています。
---下記加筆---
ドラマ版の春田は相手を思い遣る塊だったからこそ愛されキャラだったのに、今回の春田は自分本位で考えの浅いただの自己中。
牧だって、気持ちを押し込めるキャラながら、お弁当作ったりキスしたり、溢れる想いを行動で示すキャラだったのに、今回の牧はただのプライドの高い意地っ張り。
唯一、2人のシーンは、田中さんと林さんの演技(表情や仕草、相手への視線)で、それまで2人で築いてきた関係性(交際一年)が分かるものとなっていました。流石。
というか、最初の浮気誤解シーンとか要る?
香港ロケなら、なんとか2人で遠距離やってきた感じが分かるようなデートシーンとか、その中で指輪を眺めながら結婚について意識させるきっかけを描くとか他にもあったんじゃないですか?
最初から喧嘩ばかりで、すれ違いになる切なさが全く伝わらない。例えば、牧が仕事で大役に抜擢されたのを春田も自分のことのように喜ぶけど、忙しくなって生活がすれ違ってきて段々不満が募っていく、とかもっと描き方あったんじゃないですか?
せめて…ジャスの結婚式のシーンを削って、春田が牧に指輪を渡すシーンと、牧が春田にシンガポール行きを告げるシーンは欲しかった……
作品において、脚本は本当に大切なんだな、と実感しました。