「好きな事を邪魔する奴らには天罰を!」マイ・ブックショップ マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
好きな事を邪魔する奴らには天罰を!
映画鑑賞意欲の幅が広がっている時でもなかなかアンテナに引っ掛からないジャンルですが、予告編上映で観てから、興味が湧いて、鑑賞しました。
で、感想はと言うと、思ってたのと違ってちょっとびっくりしましたが、面白いです。
心地好い雰囲気に田舎社会特有の排他的な陰湿さが混同した、ちょっと稀有な作品。
ポスターや予告編を観る限りでは、本好きの女性が田舎町で本屋を開くが、本に興味の無い住民達は冷やかな目をしながら無関心を装うが、良質の本に徐々に住民達は本に興味を示し、町に読書の文化が根付いていく…みたいな感じかと思いきや、村八分的なお話でびっくり。
主人公の未亡人、フローレンスが文化的に価値はあっても、長年の空き家を改装して本屋を開店するまで良いとしても、その空き家を前から狙っていた富豪で町の権力者のガマート夫人があの手この手でこの家を手に入れて、芸術センターを作る為にフローレンスを追い出そうとする。
イギリスの田舎町の曇った天候が、この町の閉鎖感を終始暗示させているが、自然豊かな情景が作品の穏やかさを醸し出していて、なんとも言えない心地好さがあります。
その分田舎特有の閉鎖的な人間関係と余所者や新しい者には排他的な空気が陰湿で、昔でも外国でも変わんないんだなぁ~と思ったw
主人公のフローレンス役のエミリー・モーティマーがチャーミングで本好きな芯の強い女性を演じていて良い♪
名優 ビル・ナイ演じる老紳士のブランディッシュがフローレンスの良き相談相手であるが、淡い恋心は大人と言うより紳士な対応で、まさしくジェントルマン。
ガマート夫人も絵に描いた様な鼻持ちならない嫌な奴で仲間の様で長い物に巻かれろを地で行くミロも絵に描いた様な小悪党。
もう、早くこいつらに天罰がくだらないかなぁと思いましたw
その中でもフローレンスの良き理解者でお手伝いのクリスティーンがナイス!
子供ながらに歯に着せぬ物言いに筋の通った行動と言動、そして子供の純粋さを最大限に使った仕返しが溜飲を下げた感じです。
要するに良い奴はスッゴく良い奴で嫌な奴はスッゴく嫌な奴とハッキリしてます。
クリスティーンの反撃的な報復に報われた様な感じがしながらも、それでもフローレンスが可愛そうでやるせなさは残るけど、伏線の張り方が上手いです。
町の個人店の本屋が少なくなっていく中で、本を読むと言う行為自体も個人的にも以前より少なくなりましたが、ネットで検索なんて事が無かった時代は何気なしに入った本屋で本を探してる時間やお気に入りの本が見つかった瞬間は実は至福の時間でもあったんですよね。
本を探すと言うよりも“本と巡り会う”と言う言葉がぴったりなそんなささやかな時間を潰す悪党どもに沸々と怒りがこみ上げてきますが、作品のテーマと真意は好きな事を続ける事の困難さではなく、その思いの果てにある至福の時だと思いますし、作品にはゆったりとした雰囲気を醸し出されてます。
まったりとしていて、毒のある稀有な良い作品でもあります。結構当たりな作品かと思いますので、お薦めですよ♪