劇場公開日 2019年3月9日

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「重い色の空」マイ・ブックショップ aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0重い色の空

2019年4月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1960年あたり、英国ロンドン近郊の田舎町での物語。静かで綺麗な映像だが、内容とかさなり、どこか重さを含んで描かれる。

本筋ではないが、風景が印象的。海に面して、丘に囲まれて狭小な平地。そこに、中世から取り残されたかのごとく、石造りで作られた小さな田舎町。海風が強く、雨もよく降る、オールド・イングランドのイメージが色濃く残る世界だ。北部の埃っぽく荒々しい自然とは少し違った、湿度の高い海辺の街の雰囲気で、ロケ地を訪れてみたくなった。

そこは、貴族と平民の区分が明確に存在する小さな世界だ。そこで戦争未亡人のフローレンスが、亡夫の思い出を胸に、街に無かった書店を始める。近所の生意気な少女を助手に雇い、読書家である丘の上の引きこもり老紳士との交流を得ながら、書店は軌道に乗り始める。
だが、その街のわがまま貴族夫人の嫌がらせを受けてしまう。それでも負けずに、書店経営を続けるのだが…。

戦争と昔のしきたりが暗く影を落とした中で、前向きに生きようとする主人公と、それを応援する人たちとの交流が暖かく、描かれる。厳しい状況の中で、優しい物語となっている。冒頭に繋がるラストシーンは、豊かな余韻を残してくれる。観て損は無い良作だ。

AMaclean