「新体制のこれからに期待」名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) さかきさんの映画レビュー(感想・評価)
新体制のこれからに期待
毎年、コナン映画はGWの目玉として5月に観ているのですが、今年は少し早く本日鑑賞。
それでも大型連休には入っていたのでお子さんがたくさんいましたね。
しかし去年の相棒ばりの難解用語解説に続いて今年は英語のセリフが多く、今年も小さい子にとっては流れを追うのが大変な作品だったかもしれません。
まあ23作目(!)ということで観客層の平均年齢も上がってきているのでしょう。
さて感想。
一言でいうと「前半は良かった」です。
謎の散りばめ方は魅力的というか、雰囲気があったと思うんですよね。
倒叙ミステリを思わせる怪しいおっさん、血反吐吐く不気味なマーライオン、宝石の台座から転がり出る秘書の死体、何故か罠にかけられるキッド……
特に秘書の死体なんか原作ばりに「死んでる!」って思える死体顔で、現れ方といいなかなかショッキングで良かったです。(台座の下になんであんな空洞あるだとは思いましたが、そこはそれ)
逆に後半失速したなーと思うのは、そういった謎の正体や暴き方が思ったよりしょぼいと感じてしまったからでしょうか。計画実行の合図がマーライオンに血を吐かせるってなんなんだ……演出過多なおっさんだな……
そのおっさん(レオン)も終始怪しげな雰囲気や語りで翻弄してきますが、明らかに弟子の糸目の方が怪しい。声が梶くんの時点で怪し過ぎる。レオン役の山崎育三郎さんは歴代のゲスト声優の中では屈指の好演だったと思いますが、あんな不気味な催眠術にかかるのは真面目不器用な京極さんぐらいなものです。
リシくんが黒幕だとわかりやす過ぎるのは別にいいのですが、その暴き方はもう少しこだわって欲しかったところ。一応コナンは気付いていてキッドは気付けてない風な描写はありましたが、レオンや観客に対しては自分から正体を明かす展開だったので、「正体を暴く」カタルシスは弱かったですね。コナンがミスリードの質問をしておくなら、それを利用して罠にはめるとかして欲しかったです。
キャラクター作品として観ても、良いとこ悪いとこ半々といった感じでした。
アーサー平井を名乗るシーンは第1話のカットバックと懐かしBGMのファンサービスが最高。コナンとキッドの共闘関係も丁度いい塩梅だったと思います。半ば強制的ではありましたが、コナンはキッドか殺人事件かなら後者を追うと思いますので納得できるかと。
怪盗と探偵の対比を「芸術家」と「批評家」と例えるあの名シーンのオマージュも良かったですね。「怪しげに拳を握る者」と「拳の中身を明らかにする者」という対比は「紺青の拳」にもかかっていて、終盤で華麗なタイトル回収来るか? と思ったんですが特に無かったのが残念です……一応、怪しいレオンを出しておいて黒幕はリシ、という展開はこの拳のミスリードと同じ構造を狙っているとは思うんですが。もう一捻り、タイトルと絡めて欲しかった。
メインとなる園子&京極周りはほぼほぼキャラ崩壊もなくいつもの感じで安心していたのですが、やはり中盤からの園子わがまま女化には少し着いていけませんでした……コナンの女性陣では一番育ちが良く人間が出来ているいい女だと思っているので……あれぐらいが等身大の高校生なのかもしれませんが。
一番納得できなかったのは宝石をレオンの前に落としてったキッドですね……まあ逮捕されるのでレオンの物になるわけではないのですが、「返す」というなら見つけたジイさんかリシなのでは……というかリシの前に現れたキッドが一言二言カッコいいこと言って説教して、リシ項垂れる、がコナン的な定石なのでは……レオンは一番返しちゃいけないヤツ……
というわけでコナンを「殺人ラブコメ」として観た場合、殺人要素もまあそこそこ、ラブコメ要素もまあそこそこ、トータルでやっぱりまあそこそこという中々難しい評価になりました。初海外、キッド、園子&京極、新一&蘭、これらを殺人事件に絡めて纏めるのはやはり要素が多過ぎたのでしょうか、風呂敷の大きさの割には中身が小さい、でも風呂敷は綺麗、みたいな印象です。
ただ、今回初監督の永岡監督には今後もコナンをよろしくお願いしたいなと思いました。心理描写や演出は静野監督より丁寧ですしコナン向きかな。(タンカーが迫るシーンで「月の光」流すなんて静野監督には出来ない演出かと……笑)
脚本の大倉さんはアニオリの「不思議な少年」、「消えた黒帯の謎」、それと「から紅」が大好きなので信頼しています。静野監督よりは永岡監督の方が相性良さそうです。
というわけで、やっとこさ静野監督&櫻井脚本の呪縛(特に「向日葵」……)から逃れられそうな劇場版コナン。永岡新監督&劇場版2作目の大倉脚本による初作品はまずまずといったところでしたが、今後ますますブラッシュアップされていくことが期待できるのではないかと思いました。
来年赤井さんかぁ……はぁ……
Shi.ma様こんにちは! コメントありがとうございます!
冷静とは恐れ多いですー。読み返してみるとまだまだ書きたいことありましたね。
どれも「文句」ではなく「惜しいなー!」というポイントですが。今作は本当に、手放しで褒められはしないものの良作になれそうな点はたくさんあった惜しい作品だったと思いますね……
ハッキング便利過ぎは思いますね!
哀ちゃんのサイドキック感というかコンビ感は好きなのですが、あくまでコナンでは気付けないところを指摘する役であって欲しいなー、と。
情報としては同じものを共有しながら、哀ちゃんならではの女性としての視点での指摘によって、コナンの推理に足りていなかったピースがはまって、真実に辿り着く……という様な。あるいはそれは探偵団の子供らしい気付きや、小五郎や山村警部のトンデモ推理だったりするわけですが。そういったある種のアクシデントによって事件を解決するのは確かにご都合主義感もありますが、やはりそこは漫画ですし、普通の人ならなんとも思わない様な点にとっかかりを得て解決の糸口を見つけるのが名探偵、ですよね!
警察のデータベースから情報得て推理するって、それ警察が無能なだけなんじゃ、という。得てして探偵とは警察の捜査の上を行くものではあるとは思うんですが、探偵を立てる為に警察をサゲるのは違うよなー、とも思います。
向日葵は……
予告編の段階での期待値が凄く高かっただけに本当に残念でした。「動機は犯人に直接聴くとして」は一生忘れません。小説では色々回収されているそうですがあまり確かめる気にならないというか……毎年観ているので今更お金でとやかくは言いたくないですが、1800円払ってるんだから劇場本編だけで楽しませてくれ、と思ってしまいます……
特にここ数年の作品は残念なのが多かったり文句が勝ってしまったりですが、去年今年と続けて監督が変わったことから、製作陣も色々模索してくれてる時期なのかなーと思います。なんだかんだ必ず観にいきますし無くなったら悲しいので、色々なコナンを前向きに楽しんでいきたいですね。
さかきさま、こんばんは。
正にその通りなレビューで!ついコメントを。。。
私は感情的になりがちなのですが、さかきさまの冷静なまとめに感服の限りです。
原作ばりに「死んでる!」は本当に私も思いました!あれは良かったですよね^_^
リシ君が分かり易すぎるのも、私としても全然アリでした。コナンが事件起きた直後から犯人を絞っていることはよくあることですし。ただそこにどう証拠と動機を犯人に突きつけるかが見所なんですよね!そういう意味ではそこが弱いと名探偵感が薄れちゃうのは残念ですよね…
個人的には最近、パソコンから情報を得たり、哀ちゃんのハッキングに頼りがちなのが、警察じみてて残念ポイントです。偶然見つけた新聞や、イベントの広告や、人から聞いた話から見えてくる真実。漫画のご都合主義と言われてしまうかもしれないですが、通常の人なら見逃してしまうカケラを拾い集めて、推理で繋ぎ合わせて、そこから真実にたどり着くのが名探偵の醍醐味だと思っていて…。過去作や原作の方が偶然に頼ってる事件解決までの「不安定感」が好きです。
あとは、園子のちょい惜しい感とか、レオンに返すのはナシ!とか、正に過ぎる…‼︎同感です‼︎
さかきさまも向日葵へのトラウマが相当ですね(笑) 私も未だにですが(ノ_<)笑
長文失礼致しました。