「名所を破壊する"ゴジラ"シリーズのお株を奪う」名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
名所を破壊する"ゴジラ"シリーズのお株を奪う
なんと言うべきか。すごい、すごい、すごい・・・まだ足りない。後半のクライマックスは、口をポカンと半分開けっぱなしだ。
特別、"コナン"のファンでもないし、定番アニメをそう簡単に褒めたくはないものだが、これにはヤラれた。
91.8億円と記録的なヒット作の「名探偵コナン ゼロの執行人」(2018)まで約20年間、右肩上がりで登り詰めたシリーズだが、劇場版23作目は、シリーズ最高スケールの大作といって間違いない。推理ストーリーのバランスもいい。
前作の安室透(あむろ とおる)同様、今回も人気のサブキャラクターを主役に持ち上げる手法を取り入れている。
今回は、コナンのライバル、"怪盗キッド"と、空手家・京極 真(きょうごく まこと)を登場させる。京極 真は、鈴木財閥の令嬢・鈴木園子の彼氏であるが、一方でミーハーな園子は"怪盗キッド"の大ファンでもあり、イケメンを両天秤にかけるところはお約束だ。もちろん工藤新一と毛利蘭のラブストーリーも進行する。
米ディズニーが3D CGIの描写力で、実写とアニメのハイブリッドの壁を破ろうとしているなら、名探偵コナンは、本来の2次元の描きこみで、実写カメラ的な画角テクニックを凌駕しようとしている。背景描写のリアリティはもちろん、レンズフォーカスのボケさえも何気なく使いこなしている。
その凄さは、まさに原作者の青山剛昌氏のプロデュース能力の高さにあり、その革命的な進化を支えている。
ふつうコミック原作の映画は、アニメ化や実写化を問わず、"いかに原作に忠実であるか"を標榜する。
ところが"名探偵コナン"は、原作が3ウェイなのである。すなわち"コミック"、"TVアニメ"、"劇場版アニメ"それぞれにオリジナルストーリーがあり、互いを補完しあっている。
究極は、アニメで初登場するキャラクターが、のちにコミックに出てきたりして、青山剛昌氏はマルチアウトプットを容認する、革新的な漫画家なのだ。
さらに、それぞれの画角サイズの違いで表現できる作画の可能性を使い分けている。だからこそ劇場版のスケール感は特別になる。
なんといってもシリーズ初の海外設定。しかもシンガポールの名所である5つ星ホテル、"マリーナベイ・サンズ"をぶっ壊してしまおうという発想が大胆すぎる。観光名所を破壊するというのは、"ゴジラ"シリーズのお株を奪うものだ。
自称"平成のホームズ"のコナンが、"令和"にどうするべきかは、さておき。おそらく動員数で「アベンジャーズ / エンドケーム」と並び、令和元年のGWのラインナップを牽引する1作となることは間違いない。
"喰わず嫌い"なオトナにこそ、もう一度、言いたい。"必見"だ。
(2019/4/12/ユナイテッドシネマ豊洲/ビスタ)