ザ・ライダーのレビュー・感想・評価
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『ノマドランド』も『エターナルズ』もこれがなかったら始まらなかった!
クロエ・ジャオがいま最も注目されている映画監督であることは間違いなく、特にアカデミー賞で『ノマドランド』が作品賞や監督賞、主演女優賞に輝き、次回作がアンジェリーナ・ジョリー主演のマーヴェル映画『エターナルズ』っていうんだから、これほどのサクセスストーリーもなかなかない。
ぜひ知っておいてほしいのが、ジャオの大躍進は『ザ・ライダー』の才能の多くの人が仰天したからだということ。本人曰く「ローバジェット(低予算)というよりノーバジェット」というインディーズ映画で、出演者はアメリカのド田舎に暮らす本物のカウボーイたち。限りなくドキュメンタリーのようなフィクションで、キャストには素人を多用し、撮影監督のジョシュア・ジェームズ・リチャーズが自然光を巧みに使って抒情的な映像を作り出す、というジャオのトレードマークのような作風は『ザ・ライダー』で完璧に出来上がっている。
『ノマドランド』は『ザ・ライダー』を観たフランシス・マクドーマンドから依頼された企画だし、『エターナルズ』は『ザ・ライダー』をきっかけに抜擢された仕事。つまりジャオという映画作家のもっとも純度が高い作品が『ザ・ライダー』とデビュー作の『Songs My Brothers Taught Me』ということになる。
残念ながらまだ後者は字幕付きで観られないので(2021年4月時点)、ロデオをいう生きがいを失った若きカウボーイの物語『ザ・ライダー』の奇跡のような表現に触れていただきたい。これほどの詩情に出会える映画はなかなかないと思いますよ。
クロエ・ジャオ監督は荒野が好きなのだろうか
「ノマドランド」でオスカーを獲得したクロエ・ジャオ監督の前作だ。この映画を観たフランシス・マクドーマンドがクロエ・ジャオに白羽の矢を立てたらしいが、それも納得だ。荒野に生きる人を時代遅れの保守的な人間と切り捨てない視点を持っている。大怪我を負った若いカウボーイが人生をかけて挑んできたロデオの道を断念する。これからの人生をいかに生きていくべきか、主人公は逡巡する。やがて馬のトレーナーを頼まれ、広大な荒野を馬にまたがり駆けていく。
クロエ・ジャオ監督は中国出身のアジア人だが、この映画もノマドランドも、全くアジアと関係のない題材なのは興味深い。むしろ、古き良きアメリカを慈しむようなものを感じさせる。出自でその個人の資質を測れないのは当然のことで、アイデンティティ・ポリティクスには必ず限界があるのだが、彼女のような才能の出現はそれを如実に示していると思う。
Unconventional Empathy for Characters I Normally Wouldn't Care About
The Rider is educational about rodeos, horse psychology, and the hard life of a modern cowboy. Chinese director Zhao's outsider perspective into the seldom seen Dakota countryside effects original and updated Americana. The film's microscopic invitation to anything that can fall into a shot, such as a swatted fly or an antique pizza heater, assembles impressive realism. Inclusive of handicapped.
そこにある人生
ときどきどうしてこんな短い時間の中でこの登場人物の人生を詰め込めるのかと驚く映画に出会うけど、この映画もまさにそうだ。
人生を切り取るだけだったら我々もスマホで動画を撮ればそれはそれで人生の切り抜き記録になるわけだが、その動画の中に人生を詰め込めるかといえばそうではない。
画面の中で言葉で語ること、語らないこと、映像で見せるもの、見せないもの、動くもの、動かないもの、その選択の的確さが、映画であるか、否かなのだ、と思わせる圧倒的映画の力を存分に味わいました。
えっ?エタータルズの監督なの?じゃあそっちも見なきゃ!
ほぼドキュメント👍🏻
昨日『ノマドランド』観てきて
アメリカ西部がこの世と思えない風景だったので
この方の(クロエ・ジャオ監督)芸風お手並み拝見ということで拝見したら
なんと素晴らしい馬
馬とロデオライダー
ノマドも本当に車上生活をしている人々を起用していたが
こちらも主人公らが(主人公の家族も)リアルご本人、すごいはずだわ調教
ドキュメントを撮っていると見せかけて
映画で伝えておくべき映像を残したという使命を感じます
ロデオランド
『ノマドランド』のクロエ・ジャオが2017年に手掛けた長編監督第2作。
日本では未公開、小規模作品ながら、多くの映画賞で受賞やノミネートされるなど、飛躍の作品となった。
アメリカ中西部のサウスダコタ州。
有望なロデオ乗りだったブレイディ。が、競技中に落馬して頭部に大怪我を負う。
一命は取り留め、再びロデオの世界に戻ろうとするが…。
普遍的な一人の若者の喪失からの再生の物語。
それを、じっくり繊細に丁寧に描き出していく。
また、『ノマドランド』の原点とも言える演出/作風も見え隠れ。
主人公のブレイディは実在の人物がモデル。周りの家族らも然り。それを、ご本人が演じる!
…と、まあ、以前にもクリント・イーストウッドが『15時17分、パリ行き』で同手法で撮ったが、本作の方が圧倒的に味わいがあった。
主演のブレイディ・ジャンドローを始めキャスト皆本当に素人さん?? 名演!
またそれが、フィクションを見ているような、ドキュメンタリーを見ているような、不思議な感覚に陥る。
そして、アメリカ西部の雄大な映像美。
これは『ノマドランド』以上で、より古き良きアメリカ西部への憧憬を感じた。
クロエ・ジャオの長編監督第1作も現代カウボーイの物語らしく、見れる機会があったら是非見たい!
ロデオ。カウボーイ。
アメリカの男の代名詞であり、体現。
ブレイディも意気揚々とカムバック…否! そう容易くはなかった。
一度は命すら危ぶまれたほどの大怪我。
トラウマはあまりにも大きかった。
戻ろうとするも、あの時の恐怖が蘇る。
家族は止める。
すると、反発したがる。
久し振りに騎乗する。
嘔吐してしまう。
さらに、医者からある宣告が…。
馬を降り、全く別の仕事を始めるが、本当に俺はこれでいいのか…?
主人公一人だけじゃなく、周りを取り囲む物語でもある。
ブレイディと調教した馬。
ある時その馬が脚に怪我を負う。ロデオ馬として、もはや絶望。このまま生きるのも難しいかもしれない。下した決断は…。愛馬に対し、俺は…。
ブレイディと“家族”。
知的障害の妹。自分も傷を抱えながら妹を支えているが、時には妹に支えられ…。
兄のように慕う元ロデオ・スター。が、競技中の事故でブレイディより重い全身麻痺。そんな動けない姿になっても、ブレイディにエールを贈る終盤のシーンに胸が熱くなった。
夢を諦めるな。
ドストレート。
ドストレートだから響く。
どん底、挫折、喪失を経験したのならば尚更。
乗り越えるのは楽ではない。
が、再び乗る事が出来たら…。
人が馬に乗って大地を駆ける姿はどうしてこうも素晴らしく、美しく、カッコいいのだろう。
だから、魅せられる。
この生き方を止められない。
どんなに危険であっても。
馬が、アメリカの西部が大地が、俺を呼んでいる。
俺は生粋のカウボーイ。
この時はオスカー自体には絡まず、“新鋭”や“注目”で終わったクロエ・ジャオだが、今回は本当にオスカーの主役に。
アカデミー賞発表直前。
前評判から考えても、クロエ・ジャオ(と『ノマドランド』)の勝利は揺るぎないだろう。
あれ?彼、本当に俳優なの?!
と、暴れ馬の調教シーンで、共に観ていた息子が口にした。
乗馬ライセンスを持つ彼だが「働けば、馬に乗せてあげる」という倶楽部の言葉を聞いて一所懸命手伝いに通ったもののほとんど馬には乗せて貰えず、タダ働きで馬の世話能力ばかりが上達した悲しい経験がある。
予備情報を一切与えず鑑賞したかったので「エンドロールで答えはわかるらしいよ」と答えたが、見事過ぎる調教技術に「演技で出来る事じゃない」と確信を抱いたそうだ。
信頼するPROレビュアー、村山章さんのお勧めに従い、ノマドランド視聴前に本作を観た。
「人はなんの為に生きるのか」
「人は何故、夢を追いかけるのか」
有史以来、何度となく繰り返されてきたであろう問いへの、この映画も一つの答え方だと思う。
これ以上無いほどの率直さと真実味でもって、ジャオ監督は夢を絶たれた若者の苦悩と葛藤と再起、それを取り巻く家族の無償の愛、友人達の優しさを描いていく。
「夢が見つからない者」は多い。
「夢、或いは、何か、を探し求めて時の流れを彷徨う者」は非常に多い。
「夢を見つけた者」「自分が何者であるかを定めた者」は幸いだ。
だが、ひとたび、それを喪失するとなったらそれは生命そのものの喪失にも等しい・・・。
そして、そんな人間の複雑に入り組んだ想いをよそに、悠久の大自然は、変わらずそこに佇んでいる・・・。
細長い島国育ちの日本人には、どれだけ考えても想像の域を出ないが、大陸において、大都会の東海岸側から、西へ西へと荒野を旅する、或いは開拓を続けるというのはどれだけ過酷な事だろう。(西遊記しかり、だ)
まるで西部劇世界の子孫そのもののようなブレイディ達の素朴な暮らしは、余計なものが少ないからこそ「自分自身の在り方」というテーマを浮き彫りにし、物質文明の恩恵に溺れかけている観客にも同じテーマを思い出させてくれる。
言葉は要らない。論理的で緻密な構成ではあるが、この作品は「詩」だ。
バラではなくて、その香り。
空ではなくて、その光。
海ではなくて、その響き。
と言ったのは、エリナー・ファージョンだが、本作も、西部の大地に生きる人々の姿が、言葉よりも豊かに感情を揺さぶり、光や轟きのようなメッセージを残していく・・・。
役者ではない、カウボーイ村に住むごく普通の人達の信頼を勝ち得て出演させてしまうジャオ監督、そしてサウスダコタの雄大な景色も人々の何気ない表情や動きからもエモーショナルな画面を創り上げるリチャーズ撮影監督。公私共にパートナーである2人のタッグあればこそ成せた、白眉の仕事かと思う。
※余談だが、アンティークのピザヒーターに、ちょっと心惹かれた(笑)
どこかで入手可能かなぁ?
マルボロのcmの続きをみたいなら
マルボロの世界感のcmが映画になった。
現実と映画の狭間の表現は、派手さもなく、淡々と現実的な表現は、アジア人らしい映画。
映像美も素晴らしく、カーボーイの世界観がよく表現されていた。
精密な画面設計と作家性が生み出す圧倒
ただただ文句なしに素晴らしい。
暫くは、この作品の深い余韻から抜け出せそうにない。それくらい胸に響き心を打たれてしまった。余韻に浸りながら今、泣きそうな自分がいる。
ロデオ。それはたった8秒間、暴れ馬に乗るために命を賭ける競技。
幼い頃から夢見ていたカウボーイは落馬し頭蓋骨を骨折。後遺症を無視しながらも続けようとするが症状は深刻化。夢と現実の狭間で揺れ動くカウボーイの姿を、自然の雄大さと生命の儚さと共に静かに描いた。
どこかドキュメンタリーっぽさを感じる撮影と編集。常に主人公を焦点にしているので、微妙な表情や仕草から感情が伝わってくるようになっており、主人公と共に、笑い、苛立ち、悩み、涙することが出来る。
かなり突き詰めた脚本で胸糞展開も多く、ドキュメンタリー調ということもありラース・フォン・トリアー監督作品、特に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と似ているように感じたが決定的に違うところがある。
それは「人間の描き方」
映画というフィクションの場合、どうしても完全な悪という役を与えられるキャラが登場するが、この映画は違う。
ある時には悪役になり、ある時には頼れる奴になる。そんな矛盾だらけで面倒くさいリアルな人間を、愛情を感じるほど丁寧に描けているものだから、よくある「観客を泣かせる為のシーン」がごく自然で主張も激しくないのでシラケることも無い。なのに心にグイグイ響いて自然と涙が溢れてくる……
思い返しながらこの文章を書いてるだけでも何かが込み上げてくる。
『夢を諦めるな。』そんな陳腐な言葉に泣かされる日がくるとは思わなかった。
この感動はモデルとなった人達が実際に演じているからこそ成せた業だな。
太陽と荒野の美しい画面設計、全てが考え尽くされた脚本。精密に計算されたありとあらゆる要素を主張もなくポンと出してしまうクロエ・ジャオ監督、素晴らしい才能だ。
夢と現実
この映画に出てくるライダーと同じように、夢を掴む人間って本当に一掴み。
夢に生きるか、現実を生きるかなんて簡単には選択できない。だけど、その中の過程で自分の生きる目的がなんなのかを改めて考えることが必要なんだなと思った。
どんなに人生のどん底でも、いつか道は開けるし、いい事あるかもみたいなスタンスで今後も生きていきたいなと思った作品だった。
馬+カウボーイ+荒野=👍
馬好きな為評価が甘いかもしれない
馬の走り回るシーンなどは好きなのだ
でも、個人的にはウマが出て来る映画としては
荒野にてに及ばない感じがした
どうも、実在の人物に役を与えたようだ
実際に怪我した人だったみたい
途中で出て来る入院中の人も本人の名前だったから
演技ではなく実際の姿なのかもしれない
ロディオで生計を立てるのの難しさを感じさせる物語
また、障害がある(と思われる)妹の存在など
環境がプレッシャーを作っている
結局主人公はロディオを諦め別の人生へと歩み出す
先行きはわからないが風景は美しかった
ウマが怪我してるシーンとかやめて欲しかった
下手なホラーより痛かったよ
穏やかな旋律
個人評価:4.0
静かで心地よい旋律を刻む物語。主人公であるカウボーイのとても穏やかな口調が、作品に静かな品の様なものを与えている。主人公含め、他の登場人物も実際の人物を起用する驚きのキャスティング。だからこそ地に足がついた物語に仕上がっている。
荒野に生きる野生の掟と、カウボーイの夢を対比させた素晴らしい人間ドラマだ。
家族の物語
劇的に感動を煽るような演出は皆無で、一人のカウボーイの青年を淡々と描く。
中国出身でしかも女性の監督が、ネイティブ・アメリカンの血を引く若者たちを中心に、古き良きアメリカの漢でもあるロデオ・カウボーイを題材にする斬新さ。
冷たい視線や優しい甘えのような演出を物語に加える事はなく、夢を諦めるしか無い青年を主軸にカウボーイの日常を巧く捉え、父親に妹と脇役だけに収めない演出描写と全てが大切なシーンであり、無駄がない。
ラストは悲観的にしても感動を煽るエンディングと思いきや、意表を突かれる展開に感動が静かにゆっくりと。
カウボーイは"Wrangler"のジーンズって解っている監督、アン・リーを超える日も近い筈。
【映画の作為性を極限まで削ぎ落し、一人の男の夢を追う姿を見事に描き出した作品。】
ー映画にとって、”作為、虚飾”は必用十分条件であるのは重々承知をしているが、今作は”それ”を削ぎ落したことで、ドキュメンタリー要素も漂わせた見事な作品になっている。-
ブライディ・ブラックバーンは若きロデオ乗り。
映画は、ブライディの頭部の傷のショットから始まる。(素人でも分かる大怪我である。怪我をした部分の頭髪を剃っているため、縫い目が生生しい。)
その影響か、ブライデイの右手はモノを掴むと上手く開かなくなってしまう。(医者からは”複雑部分発作”と説明される。)
ブライディは自らより可成り思い症状(口が効けない・・、身体全体が不自由・・)のレイン・スコットを見舞う。どうやら、彼もかつてはロデオ乗り”ブル・ライダー”であり、相当なレベルの乗り手だったことがブライディの言葉から伺える。
ブライディにとって、レインは憧れの存在でもあったようだ・・。
■白眉と思ったシーン
・ブライディが父が買った荒馬を”クール・プリーズ”と言いながら、優しく愛おしむように手懐けるていくシーン。
長時間掛けて、最後は馬に乗れるところまでになる。父の”流石だな”という言葉。ブライディの馬を扱う熟練の技と共に、彼が如何に馬を愛しているかが良く分かる。馬は”アポロ”と名付けられる。
・ブライディがレインを見舞うシーンの数々。中でも、レインを簡易な人口ロデオに乗せ、ブライディが手綱を捌きながら、楽しそうなレインを見つめるシーン。そして、帰途車の中で静に涙を流すシーン。
・鉄条網で怪我をしてしまった”アポロ”を安楽死させようとするシーン。ブライディが呟くセリフ。
”俺もアポロと同じ。けれど、人間は生き続ける・・。”
・レインが”震える手”の仕種でブライディに伝えた言葉・・。
■エンドロールで、”ブライディの馬を手懐ける長回しシーンを含めて”そういうことだったのか・・・”と気付く。
数少ない登場人物の役名が実名と一部だけ違っているが、ほぼ同じなのである。レイン・スコットに至っては、実名である・・
<この映画には派手なシーンは殆どない。ロデオでの激しきシーンも殆ど描かれない。けれど、この映画は”あるメッセージを雄弁に”見る側に伝えて来る作品である。>
■追記
・先日、今作により、名を馳せたクロエ・ジャオ監督の新作「ノマドランド」が、大規模公開された。才能ある若手監督の更なる躍進を期待したい。
ザ ライダー(人生の挑戦者)
The rider(2017年)米国
監督:クレオ シャオ(北京からニューヨーク大学でフィルムを勉強して監督に)
全く疑いもなくフィクション映画だと思っていた。でも、40%がフィクションだけでカウボーイの実在人物の青年、ブレディの事故は本当で、家族である妹も父親も本物が 俳優で出ていると。
アメリカ中西部のサウスダコタ州のバッドランズを舞台にしていて、インディアンの居住地とされている付近でブレディの家族が住んでいる所。ブレイディは、事故で頭部を痛め、2度とロディオの馬乗りになれなくなった。カーボーイの暴れ馬のトレーニングが慣れていて専門家のようだとは思ったが、主役がロディオスターと馬のトレーニングの専門家で役者はズブのしろとだとは思わなかった。一般人が生きているところが淡々と描かれているし、家族をみつめながらブレディが立ち直っていく姿がよく出ていて、父親もこれから家族の輪を作って行くだろうと思わせる姿に心が温まる。
クレオ シャオの作品をもっと観てみたい。彼女の捉え方はなにか違う。人の生き方を淡々と描いているが、誰も目をつけないような場所で人間ドラマを描いている。
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