運び屋のレビュー・感想・評価
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高級ジゴロ
90歳にしてコカインの運び屋をやっていた実在した爺さんをモデルにした話。
エルパソでデイリリー農園を営んでいたが、仕事に執心し家族をに蔑ろにして愛想を尽かされた上に、仕事が上手くいかず90歳目前にして自宅も農園も差し押さえられてしまうという自業自得とはいえ踏んだり蹴ったりな爺さん。
仕事を失い失望する中で唯一相手をしてくれる孫娘の家を訪れて、パーティーに来ていた男に紹介された荷物を運ぶ仕事を引き受けてコカインの運び屋になるというストーリー。
最初は何を運んでいるのか、報酬がいくらかかも知らないで始めたけれど、理解しても繰り返していくのは気前が良いのかきっぷが良いのか外面が良いのか…懐具合や生活に余裕が出来てからの振る舞いやラストをみるに性根は悪い人ではないのだろう。
トレーラーからは重い話を想像したけれど、口を開けば毒入りジョークばかり、いい歳して女好き、ちょっと見栄っぱりだし家庭を崩壊させちゃったけど、昔ながらの人情や潔良さを持った爺さんがおりました…というちょっと哀しく切なく愉快な贖罪と赦しの物語という感じかな。
それにしても、実在の話にどこまで忠実かは知らないけれど、エルパソからシカゴまで直線距離で約2000㎞。爺さん色々タフ過ぎる。
とてもよかった
メキシコ人のギャングの若者たちが明るくて楽しそうだった。前のボスも愉快な人物で、特にパーティが楽しそうだった。誘われたい。新しいボスは暗くて締め付けがきついので、みんなに嫌われてすぐに失脚しそうだ。
イーストウッドが車を新車に変えて、あのボロボロだからよかったのに、新車でバレるのではないかとハラハラしたのだが、全然関係なかった。
警察に捕まってまた娘に嫌われるのではないかと思ったのだが、そこは特に問題なかったようでよかった。
ベテランによる手慣れた話芸
永年、ユリの栽培に情熱を傾け、家族のことは蔑ろにしていたアール・ストーン(クリント・イーストウッド)。
品評会を優先して、娘(アリソン・イーストウッド)の結婚式もすっぽかしたこともある。
妻(ダイアン・ウィースト)とも別れ、農場も借金のカタに手放さざるを得なくなったある日、孫娘の結婚前日パーティを訪れたアールは、パーティは追い出されるも、出席者のひとりから「ちょっと運んでもらいたいものがある・・・」と持ち掛けられる。
貧すれば鈍す、中身は訊かずに、永年の無事故無違反の腕で運ぶことになったものは、メキシコから持ち込まれるコカインだった・・・
といったところから始まる物語で、あらすじだけ書くとサスペンス映画、それも90歳近い老人が主役なので、クリストファー・プラマー主演『手紙は憶えている』みたいなヒリヒリ系映画かと思いきや、さにあらず。
老人の運び屋アールに、お目付け役が加わり、どことなく相棒(バディ)+ロードムーヴィの趣き。
ロードムーヴィといっても、シカゴとの往復ドライブ、同じような行程なので、ハラハラ度なんて、ま、まるでない。
アールがお目付け役の若い衆に人生訓を垂れたり、メキシコのボス(アンディ・ガルシア)に招待されて年甲斐もなく(いや、高齢なのは自覚しているけど)羽目を外したりと、自由気ままな老人の人生で、これを良しとするか悪しとするかで、映画の好き嫌いは分かれそう。
イーストウッド本人がこれを良しとはしていない(が、好しとはしている感もある)ので、最後の最後は家族のもとにに帰ってきちゃう。
そこいらあたりは、なんとも自分勝手なハートウォーミング話みたいな感じがして、お尻がむずがゆくなっちゃうので、個人的には、「オレは家族なんてしらないよ、ま、別に運び屋してても、人生最後は悪くないからね」なんて平然としてもらったほうが面白かったのだけれど。
あ、ここまで書かなかったけれど、「凄腕運び屋」を追う麻薬捜査官たちの面々、ボスのローレンス・フィッシュバーン、実働部隊のブラッドリー・クーパーにマイケル・ペーニャと顔触れは凄いが、どうにもボンクラに見えてしまう。
ま、そこの追いつ追われつが主眼じゃないので、最後の逮捕劇はあっけない。
ということで、ベテランによる手慣れた話芸だけれど、それ以上の面白さがないともいえるのだけれど(それを言っちゃいけないのかも)。
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