運び屋のレビュー・感想・評価
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歌が多くを語る
イーストウッドが自分の監督作の音楽を自ら手掛けるほどの音楽好きで、ジャズピアノを嗜むことはファンにはよく知られているし、カントリーシンガーを演じた『センチメンタル・アドベンチャー』のように、トレードマークとのしわがれ声で歌ってみせた作品もある。ただし、ここまでカジュアルなノリで歌いまくった映画も珍しい。イーストウッド扮する主人公は、ドラッグの輸送で全米をドライブしながら、カーステレオに合わせて歌いまくるのだ。
この主人公の老人のお気楽なノリは、彼の魅力でもあり、強面のギャングの心を軟化させ、また、彼自身を軽率に犯罪の世界に足を踏み入れてしまった遠因にもなっている。
巧いなあと思うのは、ガンで死ぬゆく妻を見舞った際には、カーステで流れていた「More Than Yesterday」の歌詞がそのまま愛の言葉になっていること。いかにもハリウッドらしいやり口だが、こういう脚本の妙にまんまと乗せられるのが、悔しいというよりも心地いい。
人は幾つになっても間違うし正せたりする
当初ストーリーラインはシンプルに見えたが、さすがクリント・イーストウッド、哀愁とスカした感じは健在で物語に滲み出るある種の深みと雰囲気を感じた。
確かに家庭での関係に失敗し、最終的には仕事にも失敗し、ドラッグの運び屋まで身を落としたが、麻薬カルテルに殺される危険をおかしても死にゆく元妻に会いに行き、娘とも和解することに成功した。それも90歳になって。。人間やる気になれば何歳になっても人生の優先順位を正すことができるという希望を、また勇気をもらった。
余談ですが、最後クリント・イーストウッド扮するアールが、DEA麻薬捜査官たちに空から前から後ろから挟まれて絶体絶命になった時、彼が大口径のリボルバー拳銃で捜査官を撃ち殺し、薙ぎ倒していくイメージが一瞬頭によぎったが、全くそうはならなかった。ダーティーハリーまた観たいなぁ。
極上の人生ドラマ、隠し味は「西部劇」
イーストウッドおじいちゃんと言えば、頑固・偏屈・タフの3拍子揃った「俺様系おじいちゃん」を想像してしまう。
彼の演じてきた役柄がそんなイメージを植え付けているのだ。だから、今作「運び屋」のおじいちゃんもそんなキャラクターなんだと勝手に思っていた。
ところがなんと「運び屋」のアールは社交的で朗らか。ちょっとキザなところはあるけど、概ね柔らかい雰囲気の人気者おじいちゃん!
おじいちゃんウオッチャーとしては、完全に虚を突かれたね。
経営していた農場が差し押さえられ、一文無しのアールは、家族の中で唯一慕ってくれている孫娘の「結婚式の費用を出す」という約束を守れなくなる。
家族をほったらかし、仕事に邁進しすぎたアールは家族に拒絶され、孫娘の結婚式から締め出されそうになる。
結婚前のパーティーで出会った新郎側の友人は、そんなアールのオンボロトラックに目をつけ、運び屋の仕事を紹介する…、という流れで彼は縁遠い「運び屋」の世界に足を踏み入れることになるのが大まかなストーリーだ。
なんと言っても、アールのキャラクターが良い。どっからどう見ても、人の良さそうな可愛いおじいちゃんなのだ。
お金の使い途だって、孫娘の結婚式や退役軍人会館の修繕。怪しいタイヤ工房に常駐している刺青スキンヘッドの連中にも「タタ(じいちゃん)」と親しまれ、観てるこっちもほんわかした気持ちになる。
そんな優しいアールだが、彼自身は古い価値観の男だ。女性バイカーの集団に「息子よ」と話しかけたり、黒人男性へ差別的な呼び方をして注意されたり、全くアップデートされてない「時代遅れな男」。
ただ、アールが今までイーストウッドが演じてきたようなおじいちゃんと違うのは、そんな時代の変化をわりとすんなり受け入れて、全く相手を否定しないことだ。
だから最終的に相手にも受け入れてもらえる。
アールは古い男だ。家庭より仕事を優先し、外での価値を高めようとしてきたこともそう。それは変わらない事実だ。
そんな「時代に取り残された男」が、それでも「俺は俺」を貫き、常識では考えられない「運び屋」稼業を成立させる。
次第に周囲の人の好感を勝ち取り、状況のマズさと裏腹に充実した毎日を送っているのが、なんとも表現しがたい人生の不思議を感じさせる。
「時代に取り残された男」が、破滅の予感をさせながらきらめきを残す物語、という意味では同じくイーストウッドの「グラン・トリノ」や、西部劇の傑作「明日に向かって撃て!」とも共通するところがあるように思うけど、それをこんな可愛いおじいちゃんでもやれちゃうのは、ある意味衝撃だった。
どんな人生にも西部劇的なロマンはある、ということなのか。
もしくは「イーストウッド」というイメージが私にそう感じさせるのか。
それはどっちでも構わないと思う。映画から私が受け取った感情こそが、私を私たらしめているのだから。
変わっていく時代、変わっていく価値観、変わっていく関係の中で、それでも人の根本的なもの・好きなこと・大事なものは変わらない。
そんなラストシーンにじんわり感動できる、おじいちゃん映画の新境地。
おじいちゃん映画ファン以外にも、是非観て欲しい。
じいさんの運び屋
実話が元。
家族より仕事を取って生きてきたじいさんが後悔する。家族も金も失ったじいさんは、麻薬の運び屋になり家族を取り戻そうとする。
最高の運び屋となり金を稼いだじいさんだったが時間は金で買えなかった。
おもしろいが、放蕩爺には感情移入し難く
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仕事と趣味に生きて家族を顧みなかったクリント。
娘の結婚式にすら出ず、娘は10年以上口をきいてくれず、嫁からは離婚された。
ただ超優良ドライバーだったので、ある時麻薬の運び屋の仕事を受ける。
簡単に金が儲かり、孫の結婚式には参加して金を出すことも出来た。
ただ生来の自由奔放さが消えることはなかった。
麻薬を運んでる間に好き勝手に車を降りたり友人と会ったり。
でもマフィアのボスは「だから警察には疑われない」と気に入ってた。
しかしボスが部下の裏切りで殺されて代替わりし、ルールが厳しくなる。
やがて奴隷のように扱われ始め、自由に行動をしたらいつでも殺すと脅された。
そんな折、麻薬輸送中に元嫁があと数日の命との電話が入り、会いに行く。
まさか来ると思ってなかった妻は喜びながら死ぬ。葬儀にも参列する。
姿を消したクリントをマフィアは躍起になって探していた。
やがて見つかって命の危機が訪れるが、マークしてた警察により逮捕。
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家族を蔑ろにして来た男が90歳くらいで家族の大切さに気付く話。
クリントらしさは爺さんになっても健在やな。
ただこの話、面白くはあったのやが、どうもこの爺に感情移入できない。
全ては自分が悪いだけやんって思ってしまうんよなあ。
まあ歳が離れ過ぎてて同調できんってのもあったかも。
それより男前の刑事の方がよっぽど感情移入できたわ。
2人は逮捕より前に偶然会って、家族の会話を交わしてた。
逮捕時もその話をちゃんと覚えてて、他人へのリスペクトがある。
涙の再会、とはいかなかったが、2人はどこか心通じるものがあった。
あと刑事の上司、この人どっかで見たことあるなあ。
顔が悪人なもんやから、きっと裏でマフィアとつながってると思ってた。
ところが全然関係ない普通の良い上司やったw
運び屋
【ピロシの映画レビュー⑩】
邦題 運び屋
原題 THE MULE
⚫︎監督
クリント・イーストウッド
⚫︎脚本
ニック・シェンク
⚫︎出演者
クリント・イーストウッド
ブラッドリー・クーパー
⚫︎公開
2018年
⚫︎上映時間
116分
⚫︎製作国
アメリカ合衆国
⚫︎ジャンル
ヒューマンドラマ、ロードムービー
記念すべき!?第10回めのレビュー
ということで、、、
当時齢88のクリント様の監督&主演作品でございます。海外では割と一人二役、二刀流やられている方多いのかもしれませんが、日本人で監督・主演する人っていうと北野さんぐらいでしょうかね?古くは伊丹十三監督?
ところでメジャーの大谷くんなんて、もはや監督もやって三刀流?目指した方が良いのではと考えてしまう今日この頃。
話逸れましたが😂クリント様監督作品といえば、『硫黄島からの手紙』は名作でしたね〜。ニノさんの演技良かったですね←改めてレビューしたい。
ちなみにバチェラーの坂東さんも出演していらっしゃいます。
今回はNetflixでおすすめに上がっていたので、2回目の視聴。ストーリーは割と覚えていた。比較的新しい作品なんですね。
⚠️⚠️⚠️⚠️ネタバレ注意⚠️⚠️⚠️⚠️
家族との関係がギクシャクしている花職人の老人が主人公。
仕事一筋300年で家族を顧みてこなかったツケがキタ━(゚∀゚)━!ということで、総スカン的な扱いをされるわけですが、ひょんなことから麻薬の『運び屋』さんをすることとなり・ ・ ・。
ヒューマンドラマであり、若干ハード色もあるのですが、薬物を運送するシーンはまさにロードムービー。ピックアップトラックを新調したあと、熱唱しながら乗りこなす姿が渋くもあり、可愛くもあり、素敵❤️バッググラウンドソングの演出がニクい!
特に良かったシーンは、やっぱり妻に会いに戻るところですかね。2人のやりとりが泣かせます。
ストーリー的には基本淡々と進みますので、ハラハラドキドキしたい方には向かないかな?帰せずして犯罪の片棒担いでしまった悲しきお爺さんという悲壮感はなく、一貫として家族愛をテーマにした映画ではないでしょうか?かといって押し付けがましくもないのも良い。
キャスト面から見ると、娘役に本当の実娘(アリソンイーストウッド)が出演しているという!町山さんの解説も参考にすると、本映画は『女たらし』クリント様の人生が投影されているとも言えるようです。
年齢的には、中高年向きの作品かもしれません😆若い人には、50overになったら見て欲しい作品ですかね😅ワタスはこういう人間ドラマ大好きです🥰🥰🥰日本タイトルも珍しく適切だ(笑)
🎬️本作の名ゼリフ
『遅咲きなのよ』
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時間
なんと、実在した『伝説の運び屋』を演じるクリント・イーストウッド氏を
スクリーンで観られるとは・・・・映画ってすごいですね。
監督&主演というのもかっこいい。
仕事や、仲間を最優先し家族と疎遠になった孤独な90歳のアール
運ぶものは、大量の麻薬。
インターネット(通販)の普及で
農園の経営が困難となり 自宅も差し押さえられたアールは
孫娘に会いに行った時、出会った男に仕事を紹介され
一度きりと引き受けたが、運転するだけで多額の報酬が手に入り
壊れかけた家族との関係を修復する為
何度も「運び屋」をしてしまう。
危険な仕事だと 知った後も運んでいる車内で
カーラジオから流れるカントリーを口ずさんだり
ルート変更も頻繁にと 勝手きまま振りがまた凄いです。
そのアールを追う麻薬取締局の
ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)も
家族より仕事を優先してきたという接点があったり
娘アイリス役は、実の娘アリソンさんが演じられていて
父と娘の共演も嬉しいところです。
年老いた役ですが、気持ちは、若く ぞの存在感がステキ。
クリント・イーストウッドのリップクリームをつけるシーンも
見られますよ(≧▽≦)
最後に奥様との会話で
「大切な家族との時間を作る事ができなかった人生」と
潔く認め 後悔した気持ちが印象的でした。
退役軍人の
肝の据わり方、にじみ出てたなあ。刑事に遭って、びびって避けるのご普通。逆に、翌朝、カフェで会ったとき、人生を説く…
酸いも甘いも、経験し尽くした、人生の先輩。
でも、家族を幸せにできるかは別。
妻のメアリーご、最期にアールに感謝…
よかった。
時間を返して欲しい
クリント・イーストウッド主演監督というだけで高評価にしすぎでは?泣ける要素は1ミリもないです。
導入や途中のやり取りなど所々に面白い箇所はありましたが結末は…ですね。
仕事に生きた男が人生の最後に自分を嫌っている家族に奉仕をして仲直りをするという内容。その奉仕の内容も薄っぺらい上に家族が1番側にいて欲しい時に家におらず、普通に考えて仲直りできないです。仕事に生きた男の自己陶酔、自己満足の映画でしかありません。
結局何が伝えたかったのでしょうか。家族は大切にするべきだとか心を込めて接すれば相手はわかってくれるとか、ありきたりなことが伝えたかったのでしょうか。
家族、夫婦はこんなに単純ではありません。
だからこそ、皆さん悩み、苦しんでいるのです。
この映画を絶賛している方はまだ結婚、子育てをしたことが無い方なのでしょうね。
本当に見る価値なしです。
自分の居場所を失ったとき、自分もこうなるのかな?
初めての鑑賞
主人公は時代の流れに乗れず、農園の経営に失敗
それまでも農園の仕事優先で、今では家族と不仲になってしまった
借金で農園を失い居場所がなくなった主人公が
事実を知らないまま覚せい剤の輸送の片棒を担いでしまう
一旦やめようと考えるが
「農場を取り戻したい」とか「火災で経営難の退役軍人施設の運転資金」とかで
運び屋家業を続けてしまう
帰る家庭と、家族がいればこんなことしなかったんじゃないかと思ってしまう
父性とは。
◆ストーリー
主人公は荷物配達のドライバー職を定年退職したおじいさん。老後は園芸農場を営むも時代の波に飲まれ潰れてしまいます。そんな折にただ荷物を運ぶだけで高額バイト代が貰えるという仕事を軽はずみに引き受けてしまいます。
おじいさんは若い頃から仕事人間で、娘の結婚式にすら出席しないほどです。家庭は一切顧みません。当然家族関係は冷え切っています。
軽はずみに受けた高額バイトは組織の麻薬の運搬でした。運搬回数を重ねていく毎にバイト代は弾むも、おじいさんが裏切らないように麻薬組織にずっと監視されるようになったり、徐々に警察の捜査が伸びてきたり、家族関係、違法な仕事に手を付けてしまった事への罪悪感が主人公を苦しめます。
◆感想
物語の核は「人生で大切なものとは...」と言った所ですが、私が印象的だったのはおじいさんの監視役は組織の若い青年で、この監視役がおじいさんの父性に影響を受けて心を開いていく所です。
劇中のシーンで
おじいさんは
・銃を突きつけても屈しない
・車のパンク修理が出来る
・美味しいサンドイッチの店を知っている
・それを一緒に飯を食べる
・監視役が警察に捕まりかけるピンチを救う
これら全て憧れの対象となるような『父性』です。
そして物語の最終局面、詳細は避けますが父性の大事な要素、「家族に規範を示す」が描かれています。規範を教え、社会で間違わないように教えるのが父性です。それを見事に描いています。
物語の核をなすメッセージも凄く感動するもので、いい映画でした。
※精神科医樺沢紫苑著:『父滅の刃』を読了し、“父性”という視点からこの感想を書きました。
意外だったエンディング
この主人公のキャラクター、すごく好きですね。ブツを運ぶ途中、本来ならすごく緊張してるところなのに、モーテルでは二人の女といちゃついたり、レストランでは警官にお説教したり等、好き勝手やっているが、人情味溢れて憎めない人柄が惹きつける。
中盤までは実に良い雰囲気で進んでいく。なんとなくコメディタッチの展開だ。運び屋で得た報酬で、差し押さえられた家屋や農園を取り戻したり、退役軍人のパーティーを再開させたりと、実に充実した生活ができるようになったところも面白い、
でも、結局警察に捕まるであろうことは、簡単に想像できるストーリーだ。特に、麻薬売人たちの仲間割れで、2名が殺されるあたりから、主人公の悲劇的結末が頭をよぎってしまった。麻薬組織のリーダー格の人物から、寄り道をしたら殺すと言われていたのに、危篤の妻が住んでる家に寄り道してしまった。殺されることよりも、妻との最後の別れを優先した彼の人間性に感動した。この寄り道によって、彼と彼の家族との和解が生じる結果となった。特に 彼と彼の妻との会話が心に染みる。
でも、寄り道をしてしまったので、実際に最後は殺されてしまうのか?あるいは、麻薬組織と警察との銃撃戦か何かで、流れ弾に当たって死んでしまうのか?そんなことを考えているうちに、結局警察が 彼の車に追いついてしまい、前方には車のバリケードで絶体絶命のピンチになっていた。もしかしたら、「バニシング・ポイント」(ちょっと古いかな?)のように体当たりして自滅するのか?
しかし、結果は意外な展開だった(私にとって)。クリント・イーストウッド監督作品としては、数少ない後味が悪くないほうの映画だった。俳優としても、いぶし銀のような演技で、素晴らしかった。
あなたは一番大事なものに時間をかけている?
麻薬の運び屋をしていた90歳のおじいさんのお話。
単に実話を元にしたというよりは、もっと普遍的な「自分が本当に大切にしたいもの」がテーマ。主人公としてはそれが家族ではあるのだが、家族だけではなく、本当に大切な何かを大事にすることの大切さを解く。
主人公アールは家族との大事な時間を仕事に費やしてきた人生によって、家族からは半ば絶縁状態だった。
自分に本当に大切なものは家族との時間である、そこに至るまでの心の変遷を描くのが本作。
時間が大切だった、お金でなんでも買えたが時間だけは買えなかった、というセリフは印象的。奥さんからも、主人公が仕事で育てる花と同じように、家族も時間をかけて大事に育てなければならない、と言われている。
また、若者に対しても、本当に大事なものに目を向けなければならないという思いを吐露している。
この映画は麻薬の運び屋という犯罪者に対して、仕方がないとか、すごい理由があってみたいな、そういう描き方はしていない。100%犯罪だ。だが、奥さんが倒れて余命幾ばくもない中、麻薬を運ぶ途中であのような状況であなたは奥さんの元に戻ることができるだろうか。時間に間に合わなければ死が待っている。それでも戻れるだろうか。何があなたにとって重要で、何がそうではないか。僕たちは、この映画を通して、それを問われている。そう思える。
イーストウッドの存在感あっての説得力
アールは家庭を顧みず仕事に打ち込んできた、まさに仕事が趣味の男。
花がそんなにお金になるとは私は知らなかったが、その業界では品評会で高評価を受け一目置かれた存在。
栄光の時代も終わり、気がつけば孤独に。その埋め合わせをするかのように、その仕事が危ういと感づきながらも運び屋となる。
面白いのは、アールの堂々とした立ち居振る舞いや言動に、マフィアたちも巻き込まれていくところ。友情めいたものまで育んでしまうのだから、イーストウッド爺さんの存在感恐るべし。若い女性になぜかモテる、というのも説得力。対比して奥さんの苦労は仕事だけじゃなかったんだな、というのも垣間見える。
また、お金の使い道について考えさせられる点も。
運び屋という仕事は汚いものだが、報酬の使い方は孫の学費や退役軍人のサロンの修繕など、周囲を喜ばすことばかりだ。チンピラがろくでもないことに使うより、よほど善用しているといえる。
違法になるのは、それが法律違反だと定められているからであり、定めたのは第三者の意図であり、こちらの承諾無しに存在してきたものでもある。
アールの代わりに結局誰かが雇われるだろうし、彼が運び屋のままの方が社会的には益だと考えると、そこに複雑なものが去来する。
しかし、積み荷の正体を見てしまった以上、アールは無用な言い訳をせず罪を潔く認める。どちらかというと粗野な人間で紳士然としていないからこそ、不器用な人生を送った男の悲哀がより立ち上る。
「ミリオンダラー~」や「グラン・トリノ」のように劇的すぎないのがよい。きっと獄中でも「アール節」で周囲を巻き込んでいくんだろう。
少ない会話で彼の背景を汲み取るベイツ刑事の存在も、出しゃばりすぎず良い。
しかしブラッドリー・クーパーってこんなにさっぱりした顔してたっけ。
運び屋
最後自分の命が失われるのを覚悟して、奥さんを看取りに行ったのが感動。それによってまた家族を失うことを防いだ。
その結果が法廷でのシーン。娘と孫が励ましてくれたシーンは本当に良かった。ある意味ハッピーエンドであるが、罪を犯せば捕まるという現実も表現。
人種とか差別にも視点。
彼の人柄の良さがギャングにも伝わり、仲良くなってたのも良かった。
レジェンド
90歳近いクリント・イーストウッドが出演してるだけで凄い。老人がコカインの運び屋と言うストーリーは面白い。力の抜けた自然の演技が良い。ブラッドリー・クーパーの演技もいいが、いくら逮捕前に偶然会って会話したからって、罪を犯した者に対して、優しすぎると感じた。
音楽がスパイス
WOWOWにて前情報なく鑑賞。
非常に良い作品だった。
クリント・イーストウッド演じる運び屋アールは飄々としていてどこか憎めない。反面、黒人やメキシコ人、バイク乗りなどへの発言など、悪意なく出てしまっている。
自分の中の常識を時代の変遷に合わせられておらず、スマホを扱えないのと同様、取り残されてしまっている。
物語では、組織のボスが変わることで、システマチックな組織になり、個の自由から効率を求めた組織利益の追求にシフトチェンジしているが、その分ルートが読みやすくなり捜査網に引っかかってしまうという皮肉。
一方で時代が変わっても普遍的なものは家族。
後半部分は家族との絆を再構築していく。
また、高収入を得ることで何歳でも人は自信を持てるという希望はあったが、本当に大切なものは金では買えなかった、という文字にするとありきたりだが映像で観ると学ぶことが多い。最終的には、変わろうと努力していて、人は何歳でも変われるんだなぁと思う。
最後のシーンが俯瞰で終わることの意味を考えているが、まだ分からず…。
以下、うろ覚えの印象的なセリフ。
「一緒にいるのにお金なんて必要ない」
「あなたは人生最悪の悩みの種、そして人生最愛の人」
「おじいちゃんは遅咲きなだけ」
「家族が一番大事、仕事は二の次なんだ」
家族
90歳の『運び屋』を描いた作品。
家族より仕事を優先してきた主人公のアール。
だがその仕事も手離さなければならない事に。
孫の結婚相手の友人から『運び屋』の仕事を紹介され…
最初は一回だけということだったが、
羽振りが良すぎるのですぐ次の仕事の依頼を受ける。
友人や麻薬組織からの待遇は良くなるが家族だけは振り向いてくれない…
デカイ仕事の途中で孫からの連絡で
倒れた奥さんの元に向かいようやく家族とも和解。
当然最後は捕まるが
結果としてはアールは大切なものを取り戻した。
CMを見て気になり鑑賞したけど、
もっとハラハラする展開かと思いきや、
運び屋で稼いだ金で楽しむ展開にビックリ。笑
どんどんリッチになってくし女と遊ぶし
これはいつ報いを受けてもおかしくないと思った。
だけど元軍人なので肝がかなり座っていて
ちょっとした脅しにはビクともしない。笑
悪口や言い返しにユーモアがあり、
ちょっとしたピンチを凌ぐことで
不信感を持っていた組織の連中からも
少しずつ好意を持たれる感じの人柄の良さが見ていて面白かった。
歌ってるシーンも和む。
クリント・イーストウッドは
基本的に無表情だったけど、
その演技も年齢設定も役にピッタリだった。
朝食で警察との会話のシーンがあったことで
捕まったシーンも心に残るものがあった。
教訓『金で時間は買えない!』『家族を大切に!』
イーストウッド久々のはまり役
クリント・イーストウッドって人は映画監督としては超一流で、なんでこうも傑作ばかり作れるんだろうと不思議に思える位物凄いお方です。しかしその反面、俳優としては大根もいい所で困ったもんでした。理由は表情に乏しく、喜怒哀楽が顔に出ないからです。だからニヒルで無表情な役はそのままでもとてもハマって見えます。昔のマカロニ・ウエスタンやダーティ・ハリーなんかはその好例です。しかし表情を必要とするシリアスな作品では、それはそれは酷いことになります。
ということで本作はイーストウッド主演と聞いて、即見る気が伏せました。だから劇場では見ず、WOWOWで放映されたので暇つぶしに見た程度でした。
しかしこれは大誤算でした。この主人公役はもう彼以外はあり得ない程のはまり役なのです。あの無表情さが年齢を重ねて怖い物無しの老人役にピッタリなのです。実際役通り90歳近くになったイーストウッドは痩せて背中も曲がり始めて、外観もこの役のままになっています。まさに演技をする必要もなく、彼自身をそのまま演じれば良いのです。
ストーリーもこの手のクライム物とは全く違う人間ドラマになっていて、若いチンピラギャングが慌てふためくようなハラハラする場面も、主人公の年齢からくる落着きで全て交わしてしまうのです。それはもう滑稽な程です。
周りから邪魔者扱いされ、家族にも見捨てられた主人公がギャングの麻薬の運び屋という仕事を得、徐々に信頼を勝ち得て、遂にはギャングの大ボスにまで気に入られてしまうという下りは全くお笑い物です。
特に本作の優れているところは、随所に主人公の人生哲学が散りばめられているところでしょう。またそれを演じるのが同年代のイーストウッドだからこそ言葉に重みがあります。その90歳の主人公でも自分の元妻の死に立ち会って初めて、この世の中で何が一番大切なのかを学ぶことになります。それはとても感動的なシーンになっています。
本作はテーマの重さも含めて、クリント・イーストウッドの演出・演技の集大成といっても過言ではありません。まさに名作の域に入っている傑作だと思います。
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