運び屋のレビュー・感想・評価
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全体的にサスペンス感が足りないため、映画としては単調になってしまっている
クリント・イーストウッドのリアルな演技によってキャラクターのもつ重圧感はひしひしと伝わってくるし、人生を仕事に捧げたことで家族とは疎遠になった男の遅すぎる再生ドラマとしては申し分ないのだが、全体的にサスペンス感が足りないため、映画としては単調になってしまっている。
裏では麻薬取締局と麻薬組織との戦いや麻薬組織内の権力争いが勃発しているという背景がありながら、クリント・イーストウッド演じるアールに焦点が当たりすぎていて、温度差を感じてしまうし、結果的に麻薬組織がどうなったかが描かれていない。
組織内で芽生えた友情や信頼なんかも結果的に薄っぺらく扱われてしまっている。
運び屋を逮捕しただけで終わる規模の犯罪ではないと思うのだが…本来なら逮捕してからどうやって組織を摘発にいたったかを描いてほしいところだ。
やっぱり自分の話にしてしまっててしみじみ
流石イーストウッド。前作『15時17分、パリ行き』と違って普通に面白い(あれはあれで良かった)。麻薬カルテルが絡む実録犯罪モノなのに、やっぱり『グラン・トリノ』みたいに自分の話にしてしまっててしみじみ。それはそうとプロデューサーのロバート・ロレンツってあいつ今何してる?
ロバート・ロレンツ監督『人生の特等席』は普通に面白くなかったけど、あれで監督としてのキャリアが閉ざされるほどの駄作では全然なかった。IMDbを見てもプロデューサーとしてのキャリアも『アメリカン・スナイパー』以降実績がない。ロレンツ自身がチャレンジを後悔してなければいいけど
ジジイの軽やかな人生の楽しみ方
グラン・トリノでこれほどない人生の退場を演じ切った後で、これ以上何を伝えようとしているのかと思いながら鑑賞。
なるほど、自分の存在意義とか、社会的役割とか、そんなことより毎日を頑張って楽しく生きろよとでも言われているような作品だった。
私にはグラン・トリノの対極にあるような作品だと思えたが、両方ともイーストウッドその人なんだろう。
一方は優等生的な映画人、一方はだらしないが人たらしのジジイ。
この作品は後者だ。
この主人公のやっていることは、決して褒められることではない。
運んでいる物もそうだし、家族をないがしろにしている点も家庭人としても失格だ。
だが、このジジイは軽やかである。
ギャングとも仲良くなるし、困っている人がいれば助ける。
無意識的に差別的な発言をするが、それを指摘されれば受け入れる。
社会的な正しさは別として、今いる環境を受けられ、進んでいくしなやかさが大きな魅力。
とにかく必死で楽しく生きていることが大切なんだという、老境での悟りを感じた。
こんな作品を観せられると、今後も永遠にイーストウッド作品を見続けたいと思わせられる。
やっぱり、イーストウッドが好き。
遺書更新
久しぶりのイーストウッド監督・主演作。
同じく監督・主演の「グラン・トリノ」を観たとき、これはイーストウッドの遺書だと思ったけど、それから10年経って撮られた本作は「グラン~」と同じテーマでありながら主人公の性格は真逆。
主人公が家族を顧みずに家庭が崩壊したのは一緒だけど、本作のアールは外面は良くて人付き合いが好き。
ある意味で、演じるイーストウッド自身により近いキャラクターなんじゃないかな。
そう考えると、アールのキャラクターも含めて10年前の遺書を更新したような映画だと思う。
映画館で観たかったです。
劇場で観たかったのですが、近くの映画館に来なかったため、今になって漸く鑑賞しました。
実話から着想を得た作品との事で、完全に実話に沿った作品にしなかったのが良かったですね。
シリアスになり過ぎずところどころユーモアを感じさせる作りになっていながら、中盤以降は緊迫感も有り、更には心に響いてくる作品に仕上がっているあたりは流石クリント・イーストウッド監督ですね。
とても面白く良い作品だと思います。
行いはとても褒められたものではありませんが、何故か憎めずチャーミングに最後には好感さえ持てる主人公であるアール。
クリント・イーストウッド監督だからこそ創り上げられた人物像だと思いますし、役者としてのクリント・イーストウッドだからこそ魅力的に演じられていたのだと思います。
そう言えば作中でクリント・イーストウッドが着ていた衣装は“グラン・トリノ”や“トルゥー・クライム”“ザ・シークレットサービス”などで実際に着た衣装だったのですね。
気がつきませんでした。
今回90歳の運び屋の役を演じたイーストウッド監督ですが、88歳ながら今回の役を演じるにあたってわざと老人らしい演技をなさったとの事。
1ファンとして、監督業だけでなく、まだまだ現役の役者さんとしてイーストウッド監督には頑張って欲しいです。
お話に直接関係があるわけではありませんが、アメリカの雄大な景色を見ながらのドライブは楽しそうですね。
倫理の側面
「事実は小説より奇なり」という名言もあるが、数々のヒーローを演じてきた反動なのだろうかクリントは実話ベースに嵌っているようだ。アメリカという広大な風土と実在の孤老の犯罪者、恥知らずと一蹴されても不思議ではない話に何故クリントは魅かれたのだろう・・。
語られる家族の大切さは表層的に思う、人種のるつぼ、銃社会、従軍経験のない私は人間の欺瞞性への気づきに劣るのかもしれない、人生の終焉が遠くはないと気づいたとき、使命感のない人間は戸惑うばかりだろう。
主人公と重なる年齢のクリントが感じた老いへの想いがひしひしと伝わってくる。俳優、監督はもとより、脚本、音楽、衣装、撮影、どれをとっても誇張がないプロの仕事が心地よい。
大切な人達と過ごす時間
時間だけはお金じゃ買えない。
もっと大切な家族と話をし、
同じ時間を共に過ごそう。
家族が側にいるのに、お金は必要無いだから。
そして、妻に最愛な人だけど、苦痛の元なんて言われるのもいい。
イーストウッドの老いぼれジジイ感は秀逸。
吹き替え版で見ました。
何というか、尺がもう少しほしかった。ストーリー自体物足りなさに欠けた気がします。イーストウッドが監督した初めて見た映画はこれで良かったのかレンタルした自分自身も分かりません。今回、多田野さんのイーストウッドの演技はまさに山田康雄さんの再来!素晴らしい出来にびっくりしました!これは過去作も吹き替えして頂きたいですよね!
入り込む!
次の展開が読めてしまうストーリーだったけどイーストウッドの名演技でグッと映画に入り込んでしまう。
金が全てではないけれど、金で過去の清算ができてきたとこで、良いこと?は続かない。どこの国でも教訓は一緒。
監督としての才能も最高なイーストウッドの上手な映画作りを改めて見させてもらいました。
遠慮しないじじぃだ(笑)
差別用語もサラッと飛び出す危険なじじぃ(笑)
花ばかりいじって、家族はほっといたから嫁から娘からブチキレてる。
薬の運び屋になったら金回りが良くなって中々のリッチなじじぃに(笑)
元から遊び人気質としか思えない。
密売ギャング相手にも軽口が止まらない。
下品なじじぃだ(笑)
感動する訳じゃないが、イーストウッドの軽妙さにニヤけてしまう。
大ボスと会ってもこの調子が変わらない(笑)
密売ギャングも悪いのは悪いが何だか人がいい所がある。
時間を取り返せなかったじいさんの話は1つの寓話として観ていられる。
ただクリント・イーストウッドのヨボヨボぶりは別な何かを感じられるかもしれない。
素晴らしい!
脚本がとても良かった。
無駄なカットもないし、
ストーリーもクライマックスに向けて分かりやすく
主人公、マフィア、警察が絡み合って行き
とても面白かった。
イーストウッド作品には信頼を置いてるけど、
それでも90歳の運び屋は、迫力に欠けるのでは?
と映画館で観なかった自分を恥じる。
カーアクションなんかなくても、
人間の迫力、
90歳の人生の重みを感じる事が出来ました。
麻薬を運ぶ事を自ら選んだのだから、自業自得でしょ。
とならないのがとても不思議。
イーストウッドの愛嬌なのか、
家族を犠牲にして仕事ばかりしてたけど、
全ては家族のためだったというのが、
丸まった背中から感じられたからか、
犯罪者の説教もとても心地よく、
無事であってくれ!と願っている自分がいた。
イーストウッドが送って来た人生も
乗っかってるからか、とても見応えのある
大傑作が誕生したように思います。
素晴らしかった。
ダーティーハリーからワイルドさを取って渋さを残した
事業に失敗した園芸家が、ひょんなことからコカインの運び屋になると言う、実話を元にしたストーリーだそうです。
かつてはハードなアクションでならしたイーストウッドも、流石にヨボヨボの爺さんになってそういう映画で主役は張れなくなりました。しかし、相変わらずの存在感を示しています。麻薬カルテルのメンバーや麻薬捜査官とのやりとりの中にもかつてのダーティーハリーシリーズで見せたウィットを感じさせ、そして犯罪映画なのだけど嫌味なく家族の再生を織り込む手腕は流石です。
実の娘であるアリソン・イーストウッドとも父娘役で共演していますが、その息もぴったりでした。この渋さを感じるには、観る側も人生の年輪が必要かもしれないですが、良い映画だと思います。
懺悔
どうしても作っている本人と被る。もはや、生い先長いとは思わない映画人の作品として捉えてしまうし、本人もその見られ方に意欲満々のようだ。
仕事人間の成れの果て。このジジイを赦せるかどうか。ここでは赦されるが、そこがポイントではなく、赦されるためではなく、自発的な行為として懺悔を描く。そこが軽やかだ。
実力俳優で固められる捜査陣。そことコンタクトなく進んだ挙句の朝食のシーン。実に味わい深い。
イグナシオ・セリッチに向けられた乱痴気合間のジジイのメッセージ、唐突なブッコミ方ではあるが、こちらのテーマもファミリー、ドラマの見方が深まる凄い一手である。
ストーリーは面白いが、色々引っ掛かる
事業に失敗し家族からも見放された90歳近い老人(クリント・イーストウッド)が、警察の目を逃れて長年麻薬の運び屋をしていた実話を基にした物語。最後はこの老人が家族を取り戻すと言う大変良く出来たストーリーで、それなりに面白かったのは間違い無いのですが、少し気になる点が... 例えば、主人公が罪の意識を余り感じていなかったこと、急に金回りの良くなった彼のことを周囲の人たちが殆ど見咎めなかったことなど。それに、この運び屋の仕事を紹介したのは、主人公の義理の息子(娘の夫)の友人だったと言うのもどうかしています。本当にこの主人公の回りには余程ロクな人がいなかったのでしょうか? 実話が下敷きの作品と言われなくては、不自然な設定に胡散臭さを感じてしまいそうだったのが何とも残念でした。
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