運び屋のレビュー・感想・評価
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淡々と描かれるマニッシュな映像美
悪を犯しながらも、麻薬の運び屋をやり続けた実話をイーストウッドが熱演。
まもなく90を迎える彼と主人公の心境はきっとどこかでオーバーラップしていたのだろう。あまりに自然すぎる演技に、肩の荷が降りる気持ちで観ていた。
仕事に没頭した男が、人生の終着点で最も大切な何かに気づけたなら、それは幸福である。
噛めば噛むほど味わいのある映画だろう。
時間を大切に生きよう
家族より仕事を優先したため孫以外の愛と信頼を失った男がたどり着いたのが麻薬の運び屋だったって話。
頼まれると断れない気さくな爺さんが仕事をこなしていくうちに後戻りできなくなっていくのが悲しい。
ただ後味は悪くなく構えずに観られる映画です
淡々飄々と進む中で時々挟む自らの経験をもとにした愚痴や忠告の説得力は抜群。監督主演俳優からのメッセージを無駄にしないように生きようと思いました
さすがのイーストウッド作品
良かった。
イーストウッド自身の集大成にしようとしたのか、自身に身を重ねるようなテーマの映画。
最初は冗長なシーンが続く。
確執を抱えた親子の会話。表と裏社会の対比もどこかありきたりな描き方のように見えた。
これからどんな展開になるんだろう、とハラハラするが警察に尋問されるシーンも、裏社会の人間たちとの会話にもあまり緊張感が伝わってこなかった。
それでも目が離せずストーリーに引き込まれていくのは、イーストウッドの怪演のおかげだろう。
老いてからの過ごしかた、人生お金じゃない、などよくあるテーマ、セリフ。それがなぜいちいち沁みてくるのか。経験した人でしか語れない、現せないイーストウッドならではの視点で描かれているから と これもまたありきたりな感想だけれども、人生の深みを味わえるイーストウッドの集大成の映画 と思いたい。
イーストウッドの映画史ももうすぐ、、
いつまでイーストウッドウッドの新作を観れるのかわからない領域にはいっていることは重々承知のうえで、なくなって欲しくない物語のフォーマットをいろいろ思い出してた。今回はとくにパーフェクトワールドとかを思い出しながら。イーストウッドウッドもさることながら、ダイアン・ウィーストも一瞬誰かわかんなかったりして、ほんとにこの人たちを観ながら育ったんだな、自分も歳をとったんだ、とテーマが重層的に広がり、あの主題歌でなんとかなく、あの花を育ててる顔を観ながら自分のこと老後を考えてるしまった。
頑固ジジイの・・・
クリント・イーストウッドの映画、それも本人が主演した作品の主人公の性格は皮肉れている。いつだってそうだ。
あの「グラン・トリノ」にしても、「人生の特等席」にしても、今という時代についていけず、不満や不平を言い放つ。もちろんパソコンやスマホといったIT機器は大嫌いだ。このアールにしても、自分の職業を追われたのがインターネット通販によるものだから、頭にくるのはよくわかる。そんな時代についていけない人たちの声を代弁し、負けるのはわかっていてもそれでも言わないと気が済まない。
この映画に出てくるイーストウッドは、まあ、よぼよぼ一歩手前といったところか。
歩き方にしても、時速にして3.5キロくらいか?
話す速度も通常の人の半分くらい。
なんにしてもまどろっこしいのだ。
あのダーティ・ハリーの拳銃を打つ時の格好良さはどこにいった!
そりや〜、仕方ないだろう。なんせ、88歳だぜ。
だけど、一つのことをやらせるとすごい。運転にしても不器用に見えて確実にことを運ぶのだ。あまり複雑に考えず、やらせてみせるのなら、88歳の男に任せるのが無難だって思わせる。
アールが人生を振り返って、一番悔いが残るのが家族のことだ。
娘の結婚式にも、孫娘の卒業式にも、自分の仕事を優先させて行かなかった。それなのに、孫娘の結婚式にはちゃっかり行こうとした彼に、孫娘は喜び、娘は自分勝手と叫び、妻は優しくNOと言った。3人3様の受け答えがあった。
そして、最後の法廷で「自分は有罪だ」と言って、裁きを受ける。
それは運び屋としての罪と同時に、家族をないがしろにしていた自分の人生に対しての有罪だったのではないかと思う。そして、なんとも言えないのが囚人たちの労役のシーン。満開に咲いた花をみて満足そうなアールの顔。この場面を見ただけで、ぼくも涙が出たのだった。評価A
家族は大切
時間だけはお金で買えなかった。家族は大切だよ。
お金で繋がった友人は、結局家族にはかなわない。だから、家族との時間を大切にしましょう。そんなメッセージを受け取った。
しかし、いま家族を持たない事を選択する方や何らかの理由で持てない方もいます。
映画からのメッセージは、人によりとても違ったものになると感じました。
チャラ過ぎて重さ格別!
始まってすぐガンガン伝わってくる今回の主人公のチャラさ。寡黙で耐える人物が多かったイーストウッド作品を待ち構えていた当方としては、それはそれで心地よい肩すかしだった。
だが考えるほどに老齢にてチャライとは、パワフル過ぎないか。
主人公の挙動を追いながら、「もう歳だから」「いまさら」と手放すありがちさについて考えさせられる。
俺のように人生を楽しめ。
言う一方で、楽しんだ代償も一つのテーマに。
追いかけ、取り戻し、己がままに行く。
その果ての、年齢分ためこんだ知恵と経験が導き出したティーンエイジャーとは異なる結末の重みには「老人青春ムービー」なんて言葉を思い浮かべてみたり。
とびきりキュートで、しかしながら淋しさ漂う一本だったなぁと振り返る。
しかしイーストウッドの芝居は素なのか、老人ぶっているのか、いまだに分からない。
円熟のクリント・イーストウッド
老人の運び屋の物語という設定に正直さほど期待していなかったのですが、いやいやかなり面白かったです。
円熟したクリント・イーストウッドの、派手さはありませんが深みを感じさせる素敵な映画でした。
それぞれに語りかけるもの
長く生きていれば色々ある。
エンディングの歌の歌詞を見て、思い出したので、サミュエル ウルマンの青春の詩を、レビューに替えて、下に記します。いつもスマホのメモにしのばせてる詩。
サミュエル ウルマン
青春の詩(Youth)
青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ。
若くあるためには、創造力・強い意志・情熱・勇気が必要であり、安易(やすき)に就こうとする心を叱咤する冒険への希求がなければならない。
人間は年齢(とし)を重ねた時老いるのではない。理想をなくした時老いるのである。
歳月は人間の皮膚に皺を刻むが情熱の消失は心に皺を作る。
悩みや疑い・不安や恐怖・失望、これらのものこそ若さを消滅させ、雲ひとつない空のような心をだいなしにしてしまう元凶である。
六十歳になろうと十六歳であろうと人間は、驚きへの憧憬・夜空に輝く星座の煌きにも似た事象や思想に対する敬愛・何かに挑戦する心・子供のような探究心・人生の喜びとそれに対する興味を変わらず胸に抱くことができる。
人間は信念とともに若くあり、疑念とともに老いる。
自信とともに若くあり、恐怖とともに老いる。
希望ある限り人間は若く、失望とともに老いるのである。
自然や神仏や他者から、美しさや喜び・勇気や力などを感じ取ることができる限り、その人は若いのだ。
感性を失い、心が皮肉に被われ、嘆きや悲しみに閉ざされる時、人間は真に老いるのである。
そのような人は神のあわれみを乞うしかない
エンドロールで考えさせられ
老いには誰しも恐怖を感じる、自分なりにつかさ、つかさでは正しい選択肢を歩んできても重ねた歴史を振り返り、自責する。劇中も痛々しいまでに老いが目立つ巨匠が実話をもとに実在の主人公にシンクロさせ、演じる演技が深く、エンドロールで考えさせられた。
おじいちゃんすごい
映画界の現人神、ここ10年の最高作。
冒頭、最初の台詞でいきなり人種差別ギャグかましてくるあたり、怖いもの無しであります。
イーストウッド映画では(おそらく)初めて、現代社会最大の問題「カネ」に焦点を当てた題材選びが見事。
本物の老いぼれにしか出せない老いぼれ演技も見事。演出は多少クサいがそれでも見事。オチにも納得。
何より、淡々としながらスピード感抜群。単純に娯楽作として面白い。
次のシーンでいきなり逮捕されてもおかしくない、そんな緊張感が絶えない作劇が実に上手い。
イーストウッド自身の人生とか総括とか、いくらでも深読みは出来ますが、そんな事するまでもなく非の打ち所ない傑作です。
まだまだ現役で頑張って
クリント・イーストウッドの主演監督作品はいっつも最高で心に響いてくる。アールを必ずしも善人には描かずに人間臭くしてるのも堪らん。そして歳をとってからのクリント・イーストウッドを見てると死んだおじいちゃんをちょっと思い出す。
クリントイーストウッド自身を描いたような作品
素晴しかったです。
削ぎ落として削ぎ落として残った部分をたっぷり堪能する感じの作品。主人公は物凄く危険な橋を渡っているし、周りはピリピリしているのに、本人は飄々として鼻歌交じりにドライブしたりしちゃうので、不思議と笑えてきてしまう。しかもしれっと差別的なワードを使ったり、びっくりするようなことを言う。これが人生90年修羅場をくぐり抜けて生き抜いてきたからできる所作なんだろう。そんな主人公に影響を受けていく周囲の人間(だいたい悪者)も良い味を出していました。
最後の家族とのシーンと、クリントイーストウッドの笑顔、綺麗なデイリーリリーが印象に残りました。90歳でもまだまだ新しい挑戦が出来るしそれで変われる事もある。まさにクリントイーストウッド本人を描いたような作品で、いろんな意味で凄いの一言。まだまだ現役!これからも傑作を生み出してくれるのを楽しみにしています。
名優の集大成
伝説的名優の世界観に一瞬で酔いしれてスクリーンに釘付けになった。想像を超える素晴らしい作品でこんな熟成された男に憧れます。ラストも感動的でイーストウッドの重厚なセリフが心に響き、思わず目頭が熱くなりました。過去の名作にも劣らない満喫した時間を過ごすことが出来る作品。
強く印象に残ったセリフ
「家族は宝、一番大切しなければならない」
「時間はお金で買うことが出来ない」
2019-43
陽気なイーストウッド
勝手に「グラン・トリノ」越えを期待してしまう、燻し銀なイーストウッドを!?
渋いイーストウッドの姿を久々に見たが「ラッキー」のH・D・スタントンや「クリーン・ユア・クロック」でのL・キルミスターの如く、命を削るような生き様に鳥肌が立つ。
最後まで振り切って陽気なまま突き進んで欲しかったが、ラストを含め多少の美化された描写など、全体的にシリアスにもコミカルにも映り消化不良。
ポークサンドが、美味そうで食ってみたい。
派手さは皆無なのにこの面白さ。
イーストウッドはやはりさすが。表現がわかりやすい。終盤裁判のシーンでは思わず泣けてしまった。
悪意はないのに人生が転げ落ちて行ってしまう事ってあるんだなー、と。運び屋の回数積んで行ってどこかで気がついていたのかもしれないけど。それでもそうならなきゃいけない人生がまたつらい。自身で決着つけた人生にもなみだ。
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