「辞世の句」運び屋 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
辞世の句
どおにも出来すぎた話だった。
今までの作品とは一線を画すというか…異質な感じがする。
コカインの運び屋っていう、かなりセンセーショナルな主人公なわけだけども、彼を取り巻く職場環境は実に平和だ。
皆、友好的で冗談が飛び交う。
逆に家庭では最早排除されていると言っても過言ではない。
この「家庭」に帰属するっていうのが物語の結末なのだけれど…どおにも大団円すぎて。
そおいうものなのかもしれないが、妻が最大の理解者なのである。
どおしようもないこの俺の良さを発見してくれた第一人者、その俺に家族を与えてくれた立役者、のような解釈だろうか。
後半はガッツリその辺りの事が語られる。
物語は12年前から始まり、若干若いイーストウッドに特殊メークの威力に感嘆とする。
脚本も順を追って構成されていて、見やすい。展開も至極簡潔。
というか、まっしぐらだ。
齢90歳、棺桶に両足突っ込んで後は横たわるだけぐらいの爺さんが、落ちるとこまで落ちた自分を唯一必要としてくれる人がいる。
罵り合いもしたし、拒絶も拒否もした。
それでもやっぱり、命か尽きるその間際には、人生かけて「愛している」と告げたあなたの傍がいい。
なんか珍しくホームドラマ寄りな作品に拍子抜け。分母が大きい作品とでも言おうか、彼の境遇に共感する人は多いと思う。
それ故に、犯罪に加担して得た金の用途への言及はほぼない。
コカインを流通させて得た金で開かれた結婚パーティーや、卒業とか、結構わだかまりが深そうに思うんだが、アメリカはそうでもないのだろうか?
大団円にもっていく強引さが、珍しく目立ったとも言える。日本ほど世間体に頓着しないお国柄なのかもね。
それと今回はシーンの〆のカットが随分と緩かったような気がする。
引き絵だったり、風景だったり、移動してたり…そのせいなのか、若干ダレた印象がのこる。
イーストウッドの顔が、とても優しくて…いや、驚くほど柔和で印象深かった。