「クリント・イーストウッドの渾身」運び屋 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
クリント・イーストウッドの渾身
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通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
会社の同僚と観に行きました。
高齢にも関わらず凄まじいバイタリティーで監督業に専念しているのをすごいと思う反面、もう演技をすることはないのかなと感じていた矢先本作を知り、観るしかないなと…
仕事一筋、家族を顧みて来なかったひとりの老人。生き甲斐だった仕事を失った彼が飛び込んだ、メキシコ麻薬カルテルの運び屋と云う危険と隣り合わせの仕事。
大金を手に入れて、孫娘の披露宴の資金を出したり、閉店危機の退役軍人クラブを助けたりする。「自身の存在を認めて欲しい」と云う欲求が次第に加速していく。
実際の事件を元にしたストーリーとは言え、まるで俳優としてのクリント・イーストウッドの人生が窺えるような作品だなと、めちゃくちゃ心に刺さりました。
時折クスりとさせられる場面もありましたが、全体に漂っていたのは人生の終幕に差し掛かった男の生き様が醸し出す哀愁と、本当に大切なものは何かと云う問いでした。
イーストウッドのこれまでが滲み出る。娘とのやり取りも実の娘が演じているだけにリアル。役柄に自身を投影しているみたいで、フィクションと現実の境が無くなる感覚でした。
アールが気づいた、居場所の温かさ。元妻の変わらぬ愛に触れ、娘とも和解し、老境にして新境地へ辿り着きました。最後に残るのは家族の想い。いくつになっても人は変われる。
アールの姿を通して、人生の深味を教えられたような気がしました。これまでの俳優人生の総決算的な渾身の演技に引き込まれ、最後にはその生き様に自然と涙がこぼれました。
※修正(2023/09/26)
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