劇場公開日 2019年3月8日

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「沁みるなぁ」運び屋 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0沁みるなぁ

2019年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

本当は、早めに仕事を切り上げて、映画館に向かうはずたった。なんせ、クリント・イーストウッドが銀幕に返り咲くのだ。初日に観に行かねば、男がすたる。
が、よりによってこんな時に、急ぎの要件がたて込む。まぁ、そんなものだ。結局、レイトショーに駆け込んで、ようやく着席…。こんな時に、彼ならどう言うのだろう。"遅いな。だが、サボり魔のクソ野郎にしては上出来だ"かな。

冒頭でいきなり、ヨタヨタ歩く老人が出てきた。彼だ。
「ダーティハリー」あたりからだから、かれこれ40年以上、彼を見続けているのだと、改めて感じた。歳をとったな、ヨボヨボじゃないか。
しかし、すぐにあの、口汚い軍隊式挨拶と軽口で、昔の彼に戻った。彼の演じる主人公は、大抵退役軍人で、ものに動じず、ユーモアを忘れない、人生を楽しんでいるタフガイであり、いわゆる良きアメリカの頑固オヤジなのだ。

古い友人に「生きてたのか? 死んだと思ってた」、井戸端会議のおばあちゃん達には「場所が違うぞ。ミスコンの会場は3階だ」てな挨拶を声をするわけだ。それと同じ感じで、ピストルを突きつけるギャングに、「俺は戦場に行ったんだ。指図は受けない」と返す。あまりに格好良すぎる。しかも、そうしたギャングの若者に対しても、優しく心を寄せ、老人のアドバイスだと人生を諭す。もはや、眩しくて目が開けられない。

監督としても、彼の作品には、何かしらの信念があり、タフで優しい。大抵苦難を笑い飛ばして弱者を助けるような、粋な人物がいて、信じたことのためには徹底的に戦い、友人のためであれば命も惜しまず、法や権力さえも彼(彼女)を止められない。こういう強さに裏打ちされた優しさが背景にあって、母国に誇りを持っている。アメリカはそういう良き人々が暮らす、偉大な国だよな、というのが彼のメッセージであり、アメリカ・ファーストと叫んで歓心を買うような必要は無いはずだ、という自信が感じられる。

さて、なんだか映画の感想になっていないが、私にとっては、無条件に観なければならない作品だった。予定通り、イーストウッド節が心に沁みる、心地よい時間が過ごせた。この余韻をそのままに、家で「グラン・トリノ」でも観ようかな。

AMaclean