「キングスマンなフッド・ヒーロー」フッド ザ・ビギニング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
キングスマンなフッド・ヒーロー
ロビン・フッドの映画も数多い。
古くはエロール・フリン主演のクラシック名作活劇、ディズニー・アニメのキツネ・ロビンも居ればケヴィン・コスナー主演のヒーロー・ロビン、近年最後の映画作品はリドリー・スコット×ラッセル・クロウで中年ロビン。
古典ヒーローでありながら多種多様なロビンに、また新たなロビンが。つまり、
“若き頃”“誕生秘話”“誰も知らない歴史の裏側”“新解釈”…定番の“新生”“現代風”。
実はロビン・フッドの物語は何となく知ってるようで、詳しくはよく知らない。
Wikipediaで元の原作の話にさらっと目を通してみたら、本作は踏襲しつつ、オリジナル要素も。
中世イングランド。
領主のロビンは美しい娘マリアンと恋に落ち、何不自由ない暮らし。
十字軍として出征、4年後帰って来ると、戦死した事になって何もかも失い、マリアンは別の男と暮らし、悪徳州長官により領民は苦しめられていた。
ロビンは戦地で敵だった弓矢の戦士ジョンと手を組み、悪政と闘う事を誓う。頭巾(=フッド)で顔を隠した反逆ヒーローとして…。
表向きは州長官らに取り入り、大きな卓に座ろうとする上位志向の領主。
が、フッドに隠した本当の顔は、悪どい金持ちたちから金を盗み、領民たちに配る正体不明の“ねずみ小僧”。
こういう二面性のあるヒーローって、いつの時代も魅力。
かと言って、ロビン一人で悪政に立ち向かう訳ではない。
終盤、領民に呼び掛け、共に奮起。
その姿はまさしく、民衆のヒーローだ。
ロビン・フッドと言えば、弓矢の名人。
でも最初は、“遅すぎる”。
ジョンから訓練・修行…いや、しごかれる。
メキメキ腕を上げていき…
本作の見所の一つは、そのド迫力の弓矢アクション。
オーソドックス・スタイルで射ったり、ジャンプしながら射ったり、複数で射ったり、高速で連射したりと、放たれる弓矢アクションの数々には興奮必至。
弓矢アクションだけではなく、馬車チェイスなど見せ場とアイデア凝らしたアクションに圧倒される。
それらに文字通り体を張って挑んだタロン・エガートン。
もはや彼には、スピーディーでキレッキレのアクションは十八番。
若く熱い新生ロビン・フッド像もイメージに合っている。
ジョン役のジェイミー・フォックスも力演。何故、ラジー賞助演男優ノミネートなんだろう…?
そういやこの二人、エルトン・ジョン&レイ・チャールズだね。
州長官役のベン・メンデルソーンも悪役を憎々しく。そういやこの人、『ローグ・ワン』でも中間管理職的な悪役だったね。
全体的に現代的なアクションや衣装やキャラ描写。
悪くはないが、センスが冴える!…とまでは活かず。
ロビン・フッドの映画を見ている筈なのに、名だけ借りた中世版タロン・エガートンの某人気アクションを見ているような…。
悪役は神に仕えたり、携わる者たち。なので、その宗教観がイマイチ伝わりにくも…。本作の評価が低いのはそれもあるのかな…?(ラジー賞作品賞ノミネート)
州長官は例外として、よほどの悪人でないと他者を殺めないロビン。戦地で因縁ある将軍と再び対峙した時も命を奪おうとはしなかった。殺し合う領民や敵兵に呼び掛け、自分が犠牲になろうとする崇高な心の持ち主ではあるが…、でも別の場面では敵兵を弓矢で何の躊躇も無く殺したり…アレ? まあこんな事言い出したら、アクション映画は成り立たないんだけど。
それから、マリアンはロビンにとって必要不可欠な運命の女性であり、ヒロインでもあるんだけど、何か本作に限っては魅力もイマイチな蛇足感が…。
マリアンの現カレが…!?
有名な地名の登場やラストで集ったロビンと仲間たち。
ロビン・フッドの物語をよく知る人にはニンマリリンクネタで終わって、製作側も続編を作る気でいただろうが、興行・批評共に弓矢が大外ししてしまったので、まあ無いだろう。
でも総じて、思ってたよりかは楽しめた、新生現代風ロビンであった。