「これは。ぜんぜん中世英国の話ではない、トランプ批判、習近平批判の現代政治劇だ。」フッド ザ・ビギニング 高武蔵守師直さんの映画レビュー(感想・評価)
これは。ぜんぜん中世英国の話ではない、トランプ批判、習近平批判の現代政治劇だ。
見栄え優先、アクション優先、話の辻褄もなんか妙に合ってないんだが、面倒な筋は飛ばしていいじゃん的な?ツクリ。
だいたい、なんで馬を盗みに来た泥棒女といきなり恋しちゃうんだ? 美人だから? それあり?
十字軍から帰ってきたら領地没収されてたって、無茶苦茶な話に、どうしてもっとちゃんと抗議しないんだ。抵抗運動するにも、順番が違う。
衣装も建築物も、ことによると人間の思考方法も、中世と現代をつき混ぜたような不思議な世界。悪役は現代風のスーツ、てゆうより宇宙船の乗組員みないな妙にオシャレな服、いっちゃえばスペースオペラ。
原題は単に「ロビンフッド」。ザ・ビギニングてのは誰がつけたんか、と思ったけど、なんか続編作りたそうなラストだったから、まあよしとして。
物語の設定も、十字軍っていうより湾岸戦争。鉱山の抵抗運動はモロに今日の香港のデモを思い出す。義賊に共感した民衆が街角にフッド(頭巾、つまりフードだな)を打ち付けて「連帯」の意志を示すのなんか、つまり「雨傘運動」だ。
つまり、時代劇の名のもとにまっすぐに現代世界の物語を描いている。 全体のテーマは、完全に現代の合衆国政策批判。イスラムとの戦争を煽って私腹を肥やすノッティンガムのシェリフ、貧民層を憎む言い草は完全にトランプ大統領のモデル。
だんだん中世らしさはカケラもなくなっていく。つまり、この映画は現代の話をやりたいんだ。彼らは自分たちで「これは革命だ」って言ってるし。
これは「盗賊の話だ」ということは、ははあ、ルパン三世なんだこれは。んで、この妙に胸の谷間を強調したマリアンは峰不二子で、滅法強いアラビア人のヨハーム?は次元大介なわけだ、なるほど。荷車のお宝を奪取する仕掛けとか、「ケーパーもの」としてみれば、それはそれで楽しい。
「中世十字軍のころの歴史モノ」を期待していった自分としては、何か違うモノだなと思ったのは事実ですが。