「美術界の魑魅魍魎を笑い飛ばす<社会風刺ホラー>」ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
美術界の魑魅魍魎を笑い飛ばす<社会風刺ホラー>
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表面上はホラー仕立てだが、実体はその奥に蠢く美術界の魑魅魍魎を笑い飛ばすことに狙いがある。
高名な美術品を扱っているか、優秀な画家を抱えているか、大富豪がパトロンにいるか否かで優劣、上下の序列が決まる画商の世界。
そこに画商付きのベテランや新進気鋭の画家、美術品の値段(価値ではなくw)を左右できる評論家や、画家や評論家に色仕掛けで取り入る画商勤務の女性、生真面目で画商に死ぬほど働かされても文句も言えない事務員等々が絡んでいく。
富豪のパトロンを掴んで勤務先の画商を退職し、元の上司や経営者に対し嫌みを言い、小馬鹿にする女性がいるわ、埋もれた画家の膨大な作品群を手にして、一躍美術界の兆治にのし上がろうとする女性がいれば、彼女の元勤務先の上司は競業避止義務を盾に彼女の上前を撥ねようとする。評論家は愛人の希望次第で作品を褒めたり貶したりする――本作で描かれた美術界はまさに人間の姿はしているが、中身はバケモノ、妖怪変化の世界なのであるw
この魑魅魍魎の世界に本物のバケモノの絵画が流れ込んでくると、美術界のバケモノたちは目の色を変えて争奪戦を繰り広げていくが、一人またひとりと絵画の呪いによって非業の死を遂げていく。
この殺し方もなかなか趣向が凝らしてあって面白く、例えば現代美術のオブジェに手を突っ込んだら抜けなくなって、そのまま片腕を切断されて失血死していく画商のシーンには思わず笑ったw タイトル『ベルベット・バズソー』もその殺し方の一つだ。
美術からは総スカンをくらいそうな設定とストーリーだけに、刺激的で興味深い<社会風刺ホラー>とでも言うべきか。
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