「(原作先読み)原作より救いのある結末になっているので寧ろ爽やか」アースクエイクバード もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
(原作先読み)原作より救いのある結末になっているので寧ろ爽やか
①この映画の中心となる事件は極端に言えば新聞の社会面に時々載る程度の話である。原作は、死に纏わり付かれている(と自分で思っている)ヒロインが日本で新たな死(殺人?)に巻き込まれることで起こるヒロインの心の揺れ(地震?)を一人称でサスペンスフルに描いたもの。登場人物も少ない。それで映画化は難しかろうと思っていた。映画はどうしても三人称的視点となってしまうから。主人公の内面を文章では直接書けるけれども、映画では外面からの描写で伝えなければならない。②演技の面では回りで起こることへのリアクションで表現しなてればならない。その点アリシア・ヴィキャンデルの演技は上手い。ヒロインはかなり独特の性格をしていて狭い範囲での人付き合いしかしない。他愛ない他人とのお喋りや遊びは時間の無駄としか思っていない。日本へ来たのも過去から逃れるためで母国に帰る気もない。③どうしてそんな風になったか原作では本人の独白で段々明らかになっていくのだが、本作でも多くを本人の口から語らせている。でもここは挿入される回想シーンで説明した方が良かったのではないか?兄を過失で死なせてしまったシーンも正視しづらいかもせれないが、やはりカメラに語らせた方が良かったと思う。その辺りがこの映画で不満な点である。④原作では犯人はほぼ間違いなく⚪⚪ではあるがはっきり書いてあるわけではない。まとわりつく死が二人を結びつけ、まだそれがヒロインにまとわりついている様な終わり方になっている。⑤しかし映画でははっきり犯人として出てくるし、その死に様を兄の死に様とダブらせている。それが更にヒロインの罪の意識を増幅させるのだが、原作とは違ってラストに意外なところからヒロインに救いがやってくる。そしてヒロインが自分にまとわりつく死の影から解放されるだろうことを暗示させて終わる。⑥ヒロインの心の闇が浄化され癒されていくのが日本であることは、日本人としては嬉しい。⑦佐久間良子が短い出番ながらヒロインの心に暗い影を落とす役柄で出演。久方ぶりの映画での再会です。