「ステレオタイプだが、惹かれるのも事実」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)
ステレオタイプだが、惹かれるのも事実
本作の主役、ハサウェイ・ノアは優秀な軍人である父と財閥出身の母の間に生まれたサラブレッドです。そんな彼が、テログループの首魁という裏の顔を隠しつつ、謎めいた美少女と出会い、また優秀なライバルとも早々に邂逅を済ませる・・この「第一部」の構造は実に映画的で、ダークヒーローものとフィルム・ノワールのテイストを併せ持ち、同時にある種の貴種流離譚でもある。かなり映画を研究してきたな・・と言った感じで、好感を持てます。
しかしそれゆえに本作は基本的には「どこかで見た」要素に満ちているんですよね。端正な作画も、今お金をかけてガンダムを作るとだいたいこうなるよねって感じの絵面ですし、ライバルとなるケネスフレッグや、その部下のレーンのキャラ付けも、「どこかで見たなー」感がすごい。にもかかわらず本作に惹きつけられるのは、下世話な男女関係をちゃんと押さえているから。ハサウェイとギギとケネスの関係性、ハサウェイと彼の仲間たち(とくに女性)との関係性など。ぽんぽさんの台詞ではないですが、ヒロインが可愛く見せれたらそれで映画は持ってしまうものです。ハサウェイは死者の亡霊に取り憑かれているのもポイントが高い。ガンダムをガンダムたらしめるのは、富野さんが参加しているかどうかではなく、この「死者の思念にて生ける者が奔走する」という哲学性だと思っています。マフティー・ナビーユ・エリンは亡霊に取り憑かれているからこそ、妖しげだし、危なかっしいし、先の読めない魅力がある。本作(原作)のテーマもまた、今の時代の空気にとても合っていて、いまこそ世に問う意義がある。ほんと、いいタイミングでアニメ化したなーって、思いました。
劇伴の音域はかなり広いので、ご家庭のテレビで再生するのは大変そう。台詞がよく聞こえるように調整していると戦闘シーン(とその挿入歌)の爆音でびびります。画面の明度も相当に暗いので、そういう意味では劇場で見たい映画。とはいえ、細部は繰り返し見ないと分かりづらいし、なんなら字幕もほしいってところなので、ブルーレイを買って復習しつつ劇場にも通う信者ムーブが本作の正しい見方なのかもしれませんね。
3部作のラスト、その顛末をどう処理するのか・・今から楽しみでなりません。
PS..新しい松竹のロゴカッコ良すぎませんか?
>吉田さん
わーご覧になられましたか!良かったです。仰るように、ガウマンと新任ケネス部隊の市中戦は見てて迫力がすごかったです。ガンダムの戦闘でおっかないなーと思ったのは初めてかも。巨大な鉄の塊同士が戦闘するとはどういう事なのかを、一般市民の目線で描いており、過去作にはないアプローチでしたね。モビルスーツのコンソール部分のUIも凄い凝ったCGになっていてかっこいい。ロゴの富士山は、その迫力もさることながら、提供ロゴが見えているうちから劇伴を被せる演出(今回だとカチカチカチという時計の針のような音がしていた)は好きです。「シンエヴァ」でもマリが「真実一路のマーチ」を協賛ロゴに被せて歌っていましたが、あれもいい導入だと思いました(笑)
やっと見れました!
見てよかった!そんな映画のクオリティでした。
導入の背景説明もしっかりやりつつ、この後の展開を期待させる構成作成
CGを適度に取り入れた戦闘シーンといい興奮冷めぬ時間が堪能できました!
少し気になったのは過去作ではあまり戦闘でおきる人の犠牲(モブの死)についてはあまり気にしないスタンスだったと記憶していましたが
今作では戦闘が発生すれば近くにいる人間に被害が出る可能性がある、という視点が少し強くなってリアルになった気がしました。
今後はノアが、地球人の今さえ良ければといった思考が蔓延しているなかで、どのように戦っていくのか楽しみです!
ps松竹のロゴ壮大な感じになってて納得しました笑
>吉田さん
いつもコメントありがとうございます!ハサウェイ、ほんと面白いです。ロボットが出てなくても、場面(シーン)が立っているというか、間が保つんですよ・・ちょっとびっくりです。「ガンダム」である以前に、きちんとそこに世界が存在してる感じがすごくあって、ダバオに行ってみたくなる事請け合いですよ!(あんなホテルには泊まれませんが笑)
わーい、猫シャチ先生のレビュー心待ちにしておりました!
お変わりない洗練されたレビューで、辞書を片手に楽しませていただきました。
そのうえ評価が厳しい猫シャチ先生から星4.5ときたら、映画館に行くのが今から待ち遠しく心踊ります!同
出来るだけ作品を楽しみたいので、逆シャアを家で見直してから見に行きます。
PS...松竹オープニングの富士山が出てくると、いつも座り直しちゃいますね笑