「脱富野、脱二次創作、そして新時代へ」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 山﨑丈さんの映画レビュー(感想・評価)
脱富野、脱二次創作、そして新時代へ
サンライズが「閃光のハサウェイ」に込めた熱量は、脱富野、脱二次創作、そして新時代へといったところだろうか。その影響は
1,初見でもある程度のサポートで歓迎できる
2,設定ではなく世界観重視に回帰
3,今まで見たことのない先進的なガンダム作品へ
といった風に感じられた。
ガンダムには作品ごとにメッセージ性というものがあるわけだが、「閃光のハサウェイ」では映画というものに振り切っているのでかなり尖っている。それに関しては賛否が分かれそうだ。
現代においてハサウェイ並みの当事者性と主体性を持ち合わせ実行に移す人間は稀有である。そんな彼が与えられた役割を演じ切ろうと奮闘しながらも、人間らしい葛藤の中に生きる姿を現代人がどのように評価するのかは興味深い。自分は一発の閃光の間に深い深い傷を残される予感がある。三部作構成の為、予感という言葉にいているが、事実観劇後は恐怖に満たされていた。
自身の内面を常にフォーカスする邦画が多い中で、悩み傷つきながらも歯を食いしばって戦い抜くテーマで描くのは果敢な挑戦である。そしてこれが未来を見通してきたガンダムの魅力でもあった。素晴らしい作品であったことは間違いない。
さて、評価を下げる要因のうち作画の暗さと三部作構成があると聞くのでそれについてコメントを書く。
本作「閃光のハサウェイ」は現象をリアルに描く事に注力している。真夜中、実弾が空を飛び交い、街に着弾した場所から火花が起こったりというようなシーンが細かく演出されている。見え方というものが非常にリアルに検証されているしそれによる効果は凄まじい。ガンダムと言えばコロニー落としが原爆に代わる恐怖の対象として描かれていたが、本作ではMS戦が如何に恐ろしい物かを表現すると同時に市民とテロリズムのギャップを示してくれている。暗さは映画館の設備上の問題もあるわけだが、製作の技術と出力の技術にギャップが生じているのなら問題かもしれない。良い映画館で見ることをお勧めする。
三部構成であることは、個人的には問題視していない。好みによる個人差が生まれやすい箇所だが、演出の細かさとその効果の高さは重厚でバランスが良い。次回作がいつ公開になるか分からないが、一作にまとめて何十回も見ないとわからない作品にするよりも、じっくりドラマを組むことを製作は選択したのだろう。