劇場公開日 2021年6月11日

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「脱富野、脱二次創作、そして新時代へ」機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Kisakiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 脱富野、脱二次創作、そして新時代へ

2021年6月12日
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鑑賞方法:映画館

​サンライズが閃光のハサウェイに注いだ熱量からは、脱富野、脱二次創作、そして新時代へという強い意志が感じられます。その影響は、以下の3つの点に集約されるでしょう。
​新規ファンを歓迎する姿勢: 初心者でも物語に入れるよう、丁寧に描かれている。
​世界観の重視への回帰: 細かい設定よりも、作品全体の雰囲気やメッセージを重視している。
​先進的な映像表現への挑戦: これまでのガンダム作品にはなかった、斬新な映像体験を提供している。
​ガンダムシリーズは作品ごとに独自のメッセージを持っていますが、本作は映画としての表現に徹底的に振り切っているため、そのメッセージは非常に鋭く、見る人によって賛否が分かれるかもしれません。
​現代において、ハサウェイのように確固たる当事者意識と主体性を持って行動に移す人間は稀です。そんな彼が与えられた役割を全うしようと奮闘しながらも、人間らしい葛藤の中に生きる姿を現代の私たちがどう評価するのかは非常に興味深いテーマです。三部作の第一部である本作は、まるで一瞬の閃光の間に心に深い傷を残されるような予感を抱かせました。実際、鑑賞後は恐怖に満たされていたのを覚えています。
​内面描写に深く踏み込む邦画が多い中で、悩み傷つきながらも歯を食いしばって戦い抜くテーマを描いたのは非常に果敢な挑戦です。そしてこの「未来を見通す」視点こそが、ガンダムの長年の魅力でした。本作が素晴らしい作品であったことは間違いありません。
​本作について、*映像の暗さと三部作構成が評価を下げる要因として挙げられることがあるようです。これについて私の考えを述べたいと思います。
​映像の暗さは、本作が現象をリアルに描くことに注力している結果です。真夜中、実弾が飛び交い街に着弾して火花が散るシーンは細部に至るまで緻密に演出されています。これにより、MS戦がどれほど恐ろしいものか、そしてテロリズムと市民生活の間に横たわるギャップが鮮明に表現されています。
​この暗さは映画館の設備によっては見えにくい場合もあるでしょう。製作側の高い技術力とそれを十全に再現できる上映環境との間にギャップが生じているのかもしれません。最高の体験を得るためには設備の良い映画館で観ることを強くお勧めします。
​三部作構成については個人的には全く問題視していません。この点は好みが分かれるところですが、本作の演出の細かさとその効果の高さは、重厚なドラマを構成する上で非常にバランスが取れています。次回作の公開がいつになるかは不明ですが、一度にまとめて何十回も観ないと理解できない作品にするよりも、じっくりと物語を紡ぐことを製作側が選択したのだと感じています。

Kisaki
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