「女の王としての孤独に奮闘した者たち」ふたりの女王 メアリーとエリザベス はとさんの映画レビュー(感想・評価)
女の王としての孤独に奮闘した者たち
ジャパンプレミアで鑑賞。スコットランドとイングランドの女王たちの信仰と権力闘争だが、同時に「女の王」であることの孤独を強烈に描き出している傑作。舞台は16世紀だが、今描かれても尚共感を呼び起こす。主演二人の演技、圧巻だった。
シアーシャ・ローナン、迫真の演技!威厳と優しさを兼ね備えている。あの時代ではまだ理解されないであろう人を受け入れ、自分を裏切った者にさえ愛情を注ぐ人であると同時に、王族としての誇りのためならいくらでも苛烈になる女王だった。ずっとギラギラ漲らせているのに、ちゃんと臣下や民には優しい目線を向ける。そのメリハリが素晴らしい。そして最後の衣裳!風格の違い、自身の主張を最後まで貫き通していた。
対するマーゴット・ロビーも凄まじく…君臨する、という言葉が相応しい立ち振る舞いに身震いする。攻撃は最大の防御という言葉を思い出すような人だった。ほしいものはどうしても手に入らず、真に分かち合える人もおらず、それでも君臨し続けた。
この二人を扱った話は以前ミュージカルで観ていたが、まるで違った印象を受けた。そちらにはオリジナルキャラクターがいて、女王でも人間なのだという面が強調されていた。けれどこの映画は人間であることも描いているのに、王であり続けた者たちの話だった。
スコットランドvsイングランドの話ではあるが、ふたりの女王は男社会の中で闘う点では同じである。女同士の闘いではない。そこを描き出していることが、重要な意味を持つ映画だ。フェミニズムに通じていて、今公開されるのに相応しい作品である。