金子文子と朴烈(パクヨル)のレビュー・感想・評価
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真の自由を感じる
朴烈も、文子も、周りの不逞者の仲間も、大日本帝国の権力者側の人物がみな、このように陰惨で卑劣な差別虐殺がなされていた時代関東大震災での悲惨な出来事をきちんと伝えながらも、コミカルな部分含め喜怒哀楽をしっかりと表現する様に描かれており、絶妙な作品。韓国の監督、韓国の役者さんたちの、強さ明るさの賜物であろう、同じテーマ同じ時代の朴烈文子を日本映画がとったらもっと暗い感じになったんじゃないか。そもそも、反体制は後ろめたく暗く裏道人生みたいに思われがちなお国柄だから。
朴烈は朝鮮の人だな大胆で明るい人だなと感銘を受けた。朝鮮育ちの文子も然り。
そして、小さな子どもにまで日本語を言わせて日本人ではないとわかると虐殺したり、朴烈がハンストにはいると無理矢理食事を口に詰め込む。文明国家を謳いながら外国人や異質な背景文化の人を区別し差別する、ハンスト中食事を無理矢理口に詰め込むシーン、もう何十年経っても、今も入管施設で同じことやってる、文明法治国家で権力者は法を守らず人道も尊重せずやってるなと。
さわやかなアナキスト映画としても、さわやかな恋愛友愛映画としても、アジア日本の近現代史の一コマを知る映画としても、素晴らしい作品だと思う。絶妙なバランスでよくできた作品。また見たくなる作品。、
不条理な世の中
最近ものの在り方の不条理を感じることが多い。
映画を見てるとそれは今に始まったことではなく、昔から存在していて。
若干良くなってように見えても変わってなくて、記根本的な考え方の問題なのか。
関東大震災の朝鮮人大虐殺、なぜそんな論理になるにか。国主導で。
今の知事からは謝罪もされていないし。
昔から今に続いてる。
二人の主人公の考え方は真似できない。
犬の子
相当の侮蔑語らしく、シャレじゃ通じない語彙とのことで、これを詩の題材にする程のかなりヤンチャな人物だということは容易に想像出来る。作品中の何処までが史実に則っているのか、フィクション部分がどこなのかは分らないし、多分どちらの国が制作しようとそこに恣意が入るのは仕方がない。それは政治云々とは関係無く、ナショナリズムの根源たる『間違いとは思いたくない』という人間の性分がそうさせているだけである。この思いに囚われている限り、人間は絶対に進化しない。そんな諦観に支配されながら、本作を鑑賞した。少なくとも此方の国で上映できたという事自体が進歩したのだというほんの爪先程の移動に拍手を送りながら。
南海トラフ地震の予想を鑑みるほどもなく、常に地震の恐怖と隣り合わせの日本に於いては、その壊滅的打撃の不安やネガティヴな想像が至極当たり前に蔓延している。そしてそれを利用して権力は国民を統制し、意のままに操ろうと模索する。左右関係無くだ。第三の道である、無政府主義ではどうか。そもそも類人猿の頃に回帰できるのだろうか?まぁ、現実的では無い。彼や彼女のような焦燥感に駆られる、薄幸な青年達が幾ら勇気や自命を投げ出しても権力は反省しない。国家転覆など夢物語だ。
暗澹とした気分に苛まれながらも、今作品の注目すべきは金子文子役の女優の存在であろう。頭脳明晰さと均整の取れた容姿、そして努力を弛さない真面目さが表情に表われ、瑞々しさが零れる演技であった。勿論キュートな仕草も作り物とは思えず、イメージとしては仲間由紀恵の凛々しさと清々しさを大いに感じさせる。日本人が使う韓国語の辿々しさをきちんと日本人にも分るように表現する技術も舌を巻いた。その器用さも今後の活躍を裏付ける担保となるであろう。一時でも日本での活躍を熱望したいものである。
さて、幾星霜を経ても差別は無くならず、その意識を押し殺すことさえ出来ない我々は、何故に存在しているのだろうか・・・写真に一緒に写る二人の頓チキなポーズ、そして谷村新司ばりの左手の乳房への位置、あの自由さを羨ましいと思うほか有るまい。
魂で結びついた二人の凛とした思想の物語。
BS番組の映画紹介で紹介されてから、俄然興味が湧き、鑑賞しました。
当初は上映2日後に鑑賞予定でしたが、満席の為断念。
翌日に鑑賞予約をしたら、平日にも関わらずかなり席も埋まってましたがサービスデーで1,100円でした♪
で、感想はと言うと、面白いと言うか、鮮烈な凄い作品ですが、なかなか難しいです。
当時の時代背景や思想、民族背景を理解しておかないとついて行けない部分や一部分の見方に振り回される部分も多々あります。
ですが、それでも自身の思想と民族の誇り、理不尽に虐げられる国に対しての怒りに命を賭しても毅然とする態度には凛とした美しさを感じました。
また過酷な運命ながらも何処かで悟りきった様な振る舞いにコミカルな感じもあり、見応えは十二分にあります。
観ている途中で「シド アンドナンシー」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」を思い出しました。
金子文子役のチェ・ヒソさんの振る舞いや仕草がチャーミングで、法廷の場での眼鏡を掛けた出で立ちもコスプレチックでなんか萌えますw
ストーリーは詩に感銘を受けた文子が朴烈の元に押しかけ女房をして、同志として恋人として、動乱の時代を駆け抜ける訳ですが、関東大震災から投獄されるまでの展開が早くて、獄中のシーンが結構長いです。
バランスが悪い感じもしますが、不法逮捕されるまでの朴烈は過激犯的な描写が多くて、ちょっと感情移入がしづらい分、獄中から何故大罪人として死刑になる事を分かっていながらも不利な言動行動を取ったかと言うのが理解するにはこれだけの時間が必要となるのは理解出来ます。
また、判事や担当刑務官とのやりとりも互いの立場に殉じながらも理解していくのが何処かコメディな感じさせながらもなんか良いです。
ただ、多くの日本人を韓国の方が演じているので、文子に比べてかなり片言の日本語になってるのが惜しいです。
韓国映画であるからなのか、当時の日本の背景が民族差別が横行して、大理不尽帝国に映っています。ただこれが誇張なのか、真実なのかは勉強不足な為、まだまだ十二分に理解と認識が足りない所がありますが、それでもこの様な事件が過去にあって、この二人が居た事は事実な訳です。
互いの生い立ちのいろんな体験で信じられない物と信じられる物が生まれ、その中で信じられる物の美しさが鮮烈な想いに変わり、二人が共に強い想いで結ばれるのですが、あの一緒に写った写真からも分かる様に何処か達観してるんですよね。
儚いと言えば儚いですが、強烈な純愛です。
法廷のシーンも見応えありますし、文子のその後にはかなりショックですが、個人的には観て良かったと思います。
いろんな見解がある中、それぞれの立場からの想いを発しているので観る人を選ぶ作品ではありますが、印象的だったのは朴が劇中に発した「この国は嫌いだが、この国の民衆は嫌いではない」言った台詞は時代が悪かったと言う一言では片付けられないとしても、翻弄されるのは常に庶民だと言う事。
上映館がまだ圧倒的に少ないですが、観る機会と興味があれば、観ていろいろと考える事と余韻に浸れる作品かと思います。
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