金子文子と朴烈(パクヨル)のレビュー・感想・評価
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不公正を強いてくる社会でいかにフェアな関係を取り結べるか
関東大震災下の東京。政府の先導したデマによって煽られた朝鮮人虐殺。それを糊塗するために大逆事件の容疑者に仕立て上げられた「不逞鮮人」とアナキストのカップルは、法廷を彼らの演説会場に変える。やるせない怒りにかられるストーリーながら、国家による不当で理不尽な差別に、なんとか一矢報いようとする、痛快で切ない青春活劇としても見ることができた。
言語を交換した求愛シーンや、それぞれが自分の言語で話す尋問シーンは、
上等な人/下等な人、上等な言語/下等な言語という、不公正な関係を押し付けてくる社会、十五円五十銭という発音の正しさで人が選別される状況下で、いかにフェアな関係を取り結びわかりあう事ができるかという試みのように思えた。
天皇とは権力を付与するために 作り出されたシステムにすぎない 概ね...
天皇とは権力を付与するために
作り出されたシステムにすぎない
概ね、こんな言葉を金子文子が語る
日本語が堪能なチェ・ヒソが
シナリオ作成の段階から関わり
裁判記録を読み込んで作った作品だ
とのことであるから
あるいは文子自身の本当の言葉
なのかもしれない
大正末期に
まともな教育を受けたことがない
女性が
このように相対化した
ものの見方で
現実を的確に把握していたとしたら
驚きである
日本と韓国の
今に続く歴史を知ることにも
大きな意味がある
それは、韓国から見た歴史であるとしても
そうした認識を隣人は持っている
ことを知ることの価値は深い
そうした認識をもった上で
自分は
日本という国、韓国という国に対し
どんな関係を取り結ぶのかを
冷静に選び取る姿勢が
私と私が所属する社会の未来を
幸せなものにする
のではないだろうか
日本人として観るべき映画である
と同時に
この物語は金子文子と朴烈の
強烈な恋愛物語であり
青春物語でもある
チェ・ヒソの魅力と
言葉に頼らない演技が
この映画を忘れえないものにしていると感じる
朴と共に死ねるなら私は満足しよう
関東大震災後、日本人の不安をおさめるために政府が朝鮮人を無差別に拘束した中戦った朝鮮人の朴烈と日本人の金子文子の話。
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これを見に行く時絶対日本人にとってはソワソワする話かなと思ったんだけど、単なる朝鮮の英雄と悪の日本じゃなくて、
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ちゃんと悪いのは日本の政府・国家で、私たち民衆は手を取り合えるっていうのを描いてくれてて良かった。
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ニュースでたまに反日デモみたいな風に慰安婦のニュースやってるけど、日本に怒ってるからといって日本人が嫌いとは一概に言えないんじゃないかなって思った。甘いって言われるかもだけど。
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逆の韓国人の立場でも同じことが言えるわけで、日本が悪いことをしたからと言って日本人全員を嫌いにならないでほしい。映画中に出てきた日本人も言ってたけど日本人を信じてほしいな。
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あとこの映画、日本人の役もほとんど韓国人が演じてるんだけどめちゃくちゃ発音がうまい。劇中でも言われてた「せ」の発音も少し気になるところはあると言え、ほとんどネイティブと変わらない。
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さらに去年の韓国映画の流れ通り、日本を舞台にした話で歴史は違えど報道統制の話が出てきたことも印象的。
浮かび上がる「史実」をどう見るか
この映画が全国展開されるのかどうかは知らないが、平日昼間の渋谷イメージフォーラムは結構な入りだった。
多くが、高齢者。赤旗か東京新聞の愛読者か、みたいな高齢の左っぽいおじいさん、おばあさんが半分以上という印象。
平成30年の間に、すっかり日本人からは「反天皇」「版権力」といった心性は消えてしまったように感じる。
日本攻撃で大騒ぎする韓国。その国会議長は「昭和天皇の息子である今の天皇が謝罪すればよい」と発言したことに対しても、リベラルな人でも眉をひそめてみるほうが多いくらいではないか。
大正から昭和にかけて、日本が朝鮮半島と中国でやったことの事実は事実として、日本人は今一度理解し直してもいいんじゃないか。
さて、本作。
金子文子の存在は知っていたし、当時の空気を日本を舞台に、どの程度韓国映画が描くのか、と注目した。
「事件」を伝える新聞が、舞台が東京なのに、「大阪朝日新聞」はまだしも、どこか別の地方紙だったり、警官がサーベルでなく、日本刀をつけていたり、とハテナ? と思えるような場面があった。
まあ、そうした細かい時代考証の真偽はともかく、主人公男女の生き方、行動をストレートに伝え、基本知識のない日本人にも理解できる映画になっていた、と思う。
韓国に興味もなく、ただ毛嫌いする人たちは永遠に見ることもない作品だろうが。
史実を踏まえた大作。
脚色はあるんですが(水野内相は震災時の対応などあの通りだけど内閣の総辞職が頻繁で死刑判決の出た1926年(大正15年3月)は閣外だった)、文子の死の直後に春画的と書かれた写真入りの怪文書で出回ったりと夫妻の事件の大きな出来事は概ねその通りで驚かされた。
取り調べに当たってるのは予審判事で起訴をするかどうかの決定権を持っていた(戦後廃止)。
関東大震災のシーンも力が入っている。摩訶不思議な裁判、政府の考えた振り付けをはねのける朴烈と文子の戦いは時にコミカル、時に激烈に国を、一方通行な価値観の人々を揺さぶった。
もっと公開が広がりますように願う。
チェ・ヒソの演技!!
日本統治時代を舞台にした韓国映画でどうしても気になってしまうのが日本人役韓国人役者の日本語の発音。
映画の世界に入っていても、ついそこで我に返ってしまう事があります。しかし、この映画にはほとんど違和感がなく、役者達の日本語能力の高さが伺えます。特に金子文子役のチェヒソさんは凄い!日本語の発音だけでなく日本人の話す韓国語の発音も完璧でした。
そして言葉だけでなく、金子文子のキャラ作りもいい!要所要所で金子文子のするちょっとした仕草(鼻をキュッとする、ウインクする等)が何というかチャーミングでありつつも芯の強さが一瞬で伝わってきます。
後、何気に拘置所の刑務官が徐々に二人に対する態度が変化していくのが、心動かされます。
犬ころの様に。
鮮人、無国籍者、社会主義者でアナキスト。そして犬ころ。
強烈な差別を受けてきた二人の純愛物語。
社会のルールなんてくそくらえ。
正義、理想もくそくらえ。
ただ、ただ生きる。
思うがままに。食べたい時に食べ、寝たい時に寝て、セックスしたい時にセックスする。
犬ころの様に生きる。
その犬ころの生き様を縛ろうとする権力には徹底して戦う。
大日本帝国。その源である天皇。
徹底的に戦う。爆弾を投げつけてやる。
そして、純粋にそこら辺で犬ころが死んでいるみたいに死んでやる。
天皇の恩赦なんてくそくらえ。
愛する人と一緒に死ね。
最高の生き様。
カッコ良すぎる。
ただ、ただ生きる。思うがままに。
強烈な生き方
いろいろなことが頭に浮かんできて、一言では言い表せないけれど、観ている間中、頭にあった言葉は、「強烈」
金子文子も朴烈も
強烈な存在感
強烈な言動
強烈な愛と絆
そんな強烈なふたりの物語だと思った
アナキズムやアナキスト、民族主義、そう言ったものには正直、共感は出来ない
何かの信念を持って活動している方々を否定しないけれど、肯定も出来ない
時に何かの信念を持つことは、どちらかに大きく偏ることになるし、そういう思想やそういう考え方が苦手だから
でも、この映画は、そことは関係なく観る価値のある作品だと思えた
この時代、朝鮮人として、女性として、こんなにはっきりと、自らの意志を公の場で述べられる人がいたことに驚いた
それに、難しいことばかりじゃなく、主役のふたりの雰囲気なのか、ユーモアの感じられる作品
関東大震災の後の朝鮮人虐殺の話は、祖母や母から聞いたことがあった
朝鮮人が混乱に乗じて井戸に毒を入れた、というデマが流れ、それが原因となって、多くの朝鮮人が殺されたと
映画の中で、金子文子と朴烈が出会うキッカケとなる「犬ころ」という朴烈の書いた文章
まさにそんな扱いを受けていた人たちがいたこと
けれど、その後のこのふたりの話は知らなかった
自ら捕まり、着せられた罪を逆手に取り、自ら死を覚悟した大逆罪を招く
普通に考えれば、なぜ?と思わずにいられない行動の背景は、映画を観れば次第に分かっていく
そして、この作品の魅力は、他にもある
日本統治時代の朝鮮を描く作品はたくさんあるけれど、それらは独立のための闘いが描かれていて、朝鮮側は人単位で描かれるが、日本側はどちらかというとひとかたまりなイメージ
でも、この作品は、日本側にも人単位で様々な人がいたことが描かれている
それは、冒頭の朴烈の「自分たちが闘っているのは国家であり、民衆ではないだろ」という言葉からすでに描かれていたように感じた
監督も「”悪の日本、善の朝鮮”という二項対立の思考で描きたくなかった」と語っている
もうひとつは、言葉
100%完全ではないけれど、他の韓国作品で目にするような、日本人の設定には無理があるだろ〜という韓国人の喋る日本語ではないこと
日本語を流暢に喋れる人たちがキャスティングされていることもあるけれど、どうやらなるべく自然な日本語になるように、尽力された俳優さんたちがいらっしゃったらしい
おかげで途中から、韓国の映画を観てる感覚が薄らいでいく
そして、金子文子を演じるチェヒソさん
彼女は日本に暮らしたことがあるそうで、日本語はもちろん日本人に聞こえるレベルの流暢さだけれど、私が驚いたのは、彼女の話す韓国語
韓国語学習者でもある私にとって、彼女の話す韓国語は、日本人が話す韓国語に聞こえるから
朴烈のことを「パク」と呼ぶのだけれど、それが韓国人の発声する「パク」ではなく、日本人が発声する「パク」だから
イントネーションや、発音、それらが完全に外国人の韓国語
チェヒソさんは、自らのセリフをひらがなに書き直して、日本人が不得手とする発音や単語を調べ、一生懸命練習されたと
これには本当に驚かされた
そんなこんなで、120分を超える作品だけれど、長さを感じず、いろいろな魅力で最後まで見入ることが出来た
魂で結びついた二人の凛とした思想の物語。
BS番組の映画紹介で紹介されてから、俄然興味が湧き、鑑賞しました。
当初は上映2日後に鑑賞予定でしたが、満席の為断念。
翌日に鑑賞予約をしたら、平日にも関わらずかなり席も埋まってましたがサービスデーで1,100円でした♪
で、感想はと言うと、面白いと言うか、鮮烈な凄い作品ですが、なかなか難しいです。
当時の時代背景や思想、民族背景を理解しておかないとついて行けない部分や一部分の見方に振り回される部分も多々あります。
ですが、それでも自身の思想と民族の誇り、理不尽に虐げられる国に対しての怒りに命を賭しても毅然とする態度には凛とした美しさを感じました。
また過酷な運命ながらも何処かで悟りきった様な振る舞いにコミカルな感じもあり、見応えは十二分にあります。
観ている途中で「シド アンドナンシー」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」を思い出しました。
金子文子役のチェ・ヒソさんの振る舞いや仕草がチャーミングで、法廷の場での眼鏡を掛けた出で立ちもコスプレチックでなんか萌えますw
ストーリーは詩に感銘を受けた文子が朴烈の元に押しかけ女房をして、同志として恋人として、動乱の時代を駆け抜ける訳ですが、関東大震災から投獄されるまでの展開が早くて、獄中のシーンが結構長いです。
バランスが悪い感じもしますが、不法逮捕されるまでの朴烈は過激犯的な描写が多くて、ちょっと感情移入がしづらい分、獄中から何故大罪人として死刑になる事を分かっていながらも不利な言動行動を取ったかと言うのが理解するにはこれだけの時間が必要となるのは理解出来ます。
また、判事や担当刑務官とのやりとりも互いの立場に殉じながらも理解していくのが何処かコメディな感じさせながらもなんか良いです。
ただ、多くの日本人を韓国の方が演じているので、文子に比べてかなり片言の日本語になってるのが惜しいです。
韓国映画であるからなのか、当時の日本の背景が民族差別が横行して、大理不尽帝国に映っています。ただこれが誇張なのか、真実なのかは勉強不足な為、まだまだ十二分に理解と認識が足りない所がありますが、それでもこの様な事件が過去にあって、この二人が居た事は事実な訳です。
互いの生い立ちのいろんな体験で信じられない物と信じられる物が生まれ、その中で信じられる物の美しさが鮮烈な想いに変わり、二人が共に強い想いで結ばれるのですが、あの一緒に写った写真からも分かる様に何処か達観してるんですよね。
儚いと言えば儚いですが、強烈な純愛です。
法廷のシーンも見応えありますし、文子のその後にはかなりショックですが、個人的には観て良かったと思います。
いろんな見解がある中、それぞれの立場からの想いを発しているので観る人を選ぶ作品ではありますが、印象的だったのは朴が劇中に発した「この国は嫌いだが、この国の民衆は嫌いではない」言った台詞は時代が悪かったと言う一言では片付けられないとしても、翻弄されるのは常に庶民だと言う事。
上映館がまだ圧倒的に少ないですが、観る機会と興味があれば、観ていろいろと考える事と余韻に浸れる作品かと思います。
感動はするんだけど
朴烈と文子が早めに逮捕されるので、獄中と法廷のシーンが結構多い。なので、二人がなぜあれほど強い思いで結ばれていたのかが共感しきれなかった。もったいない。
それでも関東大震災での朝鮮人虐殺や法廷シーンはなかなかの見もの。二人の法廷での発言は感動してしまう。こういう映画が上映されることの意義もあるのだろう。かなりの混雑ぶりだった。
やっぱりもったいない。
本当なのか?そう疑いたくなる真実。 偏った教育の学生時代から多少の...
本当なのか?そう疑いたくなる真実。
偏った教育の学生時代から多少の事は分かっていたが、ストレートな描写に同じ人間としていたたまれない気分になる。
しおらしく寄り添うのではなく一緒に戦う同士だった文子、気持ち良いほどに信念的だ。
犬コロに強烈に惹かれた文子、なぜあんなにも強いのか?それはどこからきたのか?
そう、あの潔い生き方の背景がみたいのだ。
理不尽なあの状況で貫いた信念の背景をもっと知りたいと思った。
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