「「福田村事件」大ヒットで再上映されている映画館も増えている作品。」金子文子と朴烈(パクヨル) yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
「福田村事件」大ヒットで再上映されている映画館も増えている作品。
今年318本目(合計968本目/今月(2023年9月度)28本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
この映画自体はすでに公開から4年経っていますが、「福田村事件」が連日の立見席まで売られているようにヒットしている事情から、この映画に発展・関係するようなテーマの映画も同時に放映される傾向があり、この映画もその一つです。
ストーリーに関しては、実話であることもあり、かなり厳密に描かれているな…といったところです(一部、「福田村事件」と関係して当時の差別事情があったことは前提として求められます。何にせよ「福田村事件」等何らかの作品を見てないと理解が難しいです)。
ドキュメンタリー映画という要素もそこそこあり、あることないこと描けないタイプの映画になること、また、当時の思想感がそのまま表れているため、2023年の今日においてはやや不適切ないし配慮を要するのではなかろうかという字幕、言い回しも一応ありますが(注意書きはなかったはず)、映画の趣旨として当然使われうる範囲に収まっています。
ストーリーという観点では特に触れるところはないものの、見る方が混乱するかなぁ…という説明不足に見られる点はいくつかあります。
行政書士の資格持ちレベルでの感想です。
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(減点0.3/2人がなぜ拘束されたのかの説明が不十分)
当時の治安警察法の運用において、広く「何らか事件を起こしそうな人、思想が有害と思われる人」といった異様に幅広い対象をとって「予防検束(~けんそく)」(強制的に一時隔離するというもの。現在の行政法の考えでいうと直接強制にあたるもの)が、行政執行法という法律の規定のもと行われており、これによります。
ただ、この予防検束は人権侵害という疑いが強いもので(直接強制それ自体も)、戦後はこれらは廃止され、趣が異なる「行政代執行法」という法に変わりました。
※ 現在(2023年)においては、特に人権侵害の恐れが強い「直接強制」が行われることはほぼありません(違法駐車の車をレッカー移動させるのは「即時強制」と呼ばれるものでこの2つは似ていて違います)。
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(減点なし/参考/一部のセリフについて)
・ (大審院では)日本語を用いなければならない
・ (大審院において、必要に応じて)非公開の裁判ができる
→ 今の「裁判所法」の前身の「裁判所構成法」に定められていたもので、前者はそのままありますが、後者は日本国憲法へ移動し「秩序を乱すなどの恐れがある場合」について非公開とできる(判決は必ず公開)というようになりました(日本国憲法82条)。
(減点なし/参考/大審院と現在の最高裁判所の違い)
・ 大審院と今の最高裁判所は「およそ」同じで、法律の学習における判例学習においては、解釈上有効な限り大審院の判例も学習しますが(例えば、民法177条における「第三者」が何を指すのか、は、有名な「大審院」の判例)、一方で、大審院には違憲立法審査権が認められない、下級裁判所への指揮命令権がなかった(当時は司法大臣が全権を握っていた)といった点が異なります(ただ、不完全ながらにも三権分立の芽生えが見られた当時の帝国憲法とそれから派生した不十分ながらの大審院ほかから構成される「不十分な」状態は、当時の世界水準でもまだ高い方であり、これが第二次世界大戦後に「十分な」今の姿になっていくのです(もっとも、現在も改憲運動があるように、「完全な」ものではないし、ある制度に「完全さ」を「常に追い求めていく不断の努力」は常に必要なのです)。