劇場公開日 2019年2月16日

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「近代史を扱った見事な作品」金子文子と朴烈(パクヨル) ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5近代史を扱った見事な作品

2019年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

愛を描いた映画として出色で、日韓の複雑な歴史にスポットを当てた点でも高く評価できるし、表現の自由の大切さを訴えた作品としても素晴らしく、権力と大衆の愚かさの普遍性を描いたという点も見事。同じ時代を舞台にした『菊とギロチン』と合わせて観るとより深く理解が進む作品だと思う。
大正末期の関東大震災直後は、震災のショックと政治権力の圧力の増大という点で、現代とも共通した社会背景があるが、朝鮮人へのいわれなき非難などのデマの横行など、人々の行動もあまり変わらないようだ。日本人、韓国人の登場人物ともにフェアに描かれていて、国籍関係なく時代と権力に翻弄された人々の生き様を鮮烈に描いた作品だ。
有名な「怪写真」のくだりは、どの程度事実なのだろうか。作中の解釈は正しいのかわからないが、あの2人の人間性に惹かれた人間は、実際に権力側にもいたのだろうか。少なくとも、本作での、あの写真の撮影に至るまでの物語には非常に説得力があったと思う。あの写真の2人のふてぶてしさが全編に渡ってよく表現されていた。

杉本穂高