劇場公開日 2019年2月16日

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「強烈な生き方」金子文子と朴烈(パクヨル) yukarinさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5強烈な生き方

2019年2月20日
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鑑賞方法:映画館

いろいろなことが頭に浮かんできて、一言では言い表せないけれど、観ている間中、頭にあった言葉は、「強烈」
金子文子も朴烈も
強烈な存在感
強烈な言動
強烈な愛と絆
そんな強烈なふたりの物語だと思った

アナキズムやアナキスト、民族主義、そう言ったものには正直、共感は出来ない
何かの信念を持って活動している方々を否定しないけれど、肯定も出来ない
時に何かの信念を持つことは、どちらかに大きく偏ることになるし、そういう思想やそういう考え方が苦手だから

でも、この映画は、そことは関係なく観る価値のある作品だと思えた
この時代、朝鮮人として、女性として、こんなにはっきりと、自らの意志を公の場で述べられる人がいたことに驚いた
それに、難しいことばかりじゃなく、主役のふたりの雰囲気なのか、ユーモアの感じられる作品

関東大震災の後の朝鮮人虐殺の話は、祖母や母から聞いたことがあった
朝鮮人が混乱に乗じて井戸に毒を入れた、というデマが流れ、それが原因となって、多くの朝鮮人が殺されたと
映画の中で、金子文子と朴烈が出会うキッカケとなる「犬ころ」という朴烈の書いた文章
まさにそんな扱いを受けていた人たちがいたこと

けれど、その後のこのふたりの話は知らなかった

自ら捕まり、着せられた罪を逆手に取り、自ら死を覚悟した大逆罪を招く
普通に考えれば、なぜ?と思わずにいられない行動の背景は、映画を観れば次第に分かっていく

そして、この作品の魅力は、他にもある
日本統治時代の朝鮮を描く作品はたくさんあるけれど、それらは独立のための闘いが描かれていて、朝鮮側は人単位で描かれるが、日本側はどちらかというとひとかたまりなイメージ
でも、この作品は、日本側にも人単位で様々な人がいたことが描かれている
それは、冒頭の朴烈の「自分たちが闘っているのは国家であり、民衆ではないだろ」という言葉からすでに描かれていたように感じた
監督も「”悪の日本、善の朝鮮”という二項対立の思考で描きたくなかった」と語っている

もうひとつは、言葉
100%完全ではないけれど、他の韓国作品で目にするような、日本人の設定には無理があるだろ〜という韓国人の喋る日本語ではないこと
日本語を流暢に喋れる人たちがキャスティングされていることもあるけれど、どうやらなるべく自然な日本語になるように、尽力された俳優さんたちがいらっしゃったらしい
おかげで途中から、韓国の映画を観てる感覚が薄らいでいく
そして、金子文子を演じるチェヒソさん
彼女は日本に暮らしたことがあるそうで、日本語はもちろん日本人に聞こえるレベルの流暢さだけれど、私が驚いたのは、彼女の話す韓国語
韓国語学習者でもある私にとって、彼女の話す韓国語は、日本人が話す韓国語に聞こえるから
朴烈のことを「パク」と呼ぶのだけれど、それが韓国人の発声する「パク」ではなく、日本人が発声する「パク」だから
イントネーションや、発音、それらが完全に外国人の韓国語
チェヒソさんは、自らのセリフをひらがなに書き直して、日本人が不得手とする発音や単語を調べ、一生懸命練習されたと
これには本当に驚かされた

そんなこんなで、120分を超える作品だけれど、長さを感じず、いろいろな魅力で最後まで見入ることが出来た

yukarin