劇場公開日 2020年11月20日

「前半は良い」ばるぼら むさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前半は良い

2020年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

政治家の娘は富や名声を、秘書さんは家庭性や包容力を表し、それらの女性像を断ち切ってばるぼらに堕ちてゆく構成がうまいと思った。
マネキンや犬の箇所も良く、暗い運命の暗示が効いてこちらも引き込まれる感じ。
ポールダンサーの女性たちの映像など、女性性に堕ちてゆく導入がとても綺麗だった。
ただ、ライバル作家の四谷はもっとキャラの立たせ方があったのではないかと思うし、ばるぼらがミューズであるなら実際にインスピレーションを受けて一度隆盛を極める描写があってよかった気もする。

以下は多少ネタバレ
後半は、もっとラストにかけて狂気が加速する感じが見たかったのに、死体に〇〇するとか××するなど、肉体的な意味だけで「狂気」を表現してほしくなかった。
ばるぼら母のムネーモシュネーの報復や世の中の人々など、もっと外界から追い詰められて極限状態で、美倉とばるぼらが肉体的だけでなくお互いを征服しようとする感じがあってよかったのではないか。ばるぼらは死ぬにしろさっさと死んでほしくなかった。
自分にとってラストが尻切れトンボになっていた。

とはいえ、映像の陰翳が人間の心の影や底知れなさ、昭和の新宿のアングラ感を出していていいなと思った。(あの時代のアングラ感を出すなら、なんでばるぼらをコクーンタワーの通りで撮ったんだろう)
予告映像のばるぼらは話し方が微妙だと思ったが、映画では全く違和感なし
二階堂ふみはすごい。
稲垣吾郎の演技も結構はまっていたのではないかと自分は思う。
主演二人の人気もあるが、このようなファナティックでオカルティックな映画で、一般層からもある程度見られて支持されているのはすごいことではないか。
芸術の「おぞましく美しい」側面が見られた。

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む