「人種的性的るつぼの現代的作品」インスタント・ファミリー 本当の家族見つけました つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人種的性的るつぼの現代的作品

2024年2月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

親が子を、子が親を愛するというのは大抵の場合簡単なことだが、それぞれが愛されていると思うことは、自分のことではなく相手の気持ちであるから少々複雑だ。
それでも長い時間をかけて育まれ、漠然とでも愛されているとわかるものだと思う。

しかしこの映画の主役である家族は里親と里子であるからその時間を得られなかったことがドラマとなる。
特にこの夫婦は親として成長する時間も得られていないわけで、十年分、十五年分の感情が鉄砲水のように一気に襲ってくるのだから受け止めるのも並大抵ではない。

前半は特に面白かったし、コミカルで明るく、シーン毎の内容も良い。
終盤の「俺も写真に入るぞ」のシーンは実に感動的で、ホロッとさせられた。
だけど全体的にイマイチ気持ちがのらないのは求めていたものと得られたものの不一致にあると思う。

この手のハートウォーミング系作品の場合、物語の着地点は容易に想像できる。いや、想像というよりは、もうこれしかないと信じている。つまりそれを確信を持って期待しているのである。

本作の場合は5人が家族としてまとまること。少し手前は、リジーが新しい父と母として夫婦を受け入れることだと思う。少なくとも私はそれを期待した。
終盤になって急に話がまとまったなと感じた人は私と同じだと思う。急にまとまった理由はリジーから父母への歩みよりのシーンがなかったからだ。
そのせいで、なんとなく一方的で強制的に家族になったような気さえしてくるのだ。

自身も養子縁組し子を育てている監督の経験が反映された作品で、つまり監督が描きたかったものは親になる夫婦の物語だったのだ。
ピートと妻が親としての心構えを学び、子を愛しそれを伝えることを学ぶ物語。これには子の愛を感じる親の姿が欠落している。
酷い言い方をすれば、監督の一方的で強制的な愛しか表現されておらず、実にエゴイスティックな愛の押し売り作品なのである。

星4つのつもりでここに来たのだけれど、レビューの内容が悪口みたいになってしまったし、子に厳しく接する親の気持ちで評価を下げようと思う。

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つとみ