劇場公開日 2021年7月2日

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「気になるチャイナマネーの悪影響」ゴジラvsコング アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5気になるチャイナマネーの悪影響

2021年7月3日
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鑑賞方法:映画館

字幕版を鑑賞。ハリウッド製ゴジラの4作目で、2作目以降のゴジラの続編であるため、ゴジラのデザインも踏襲されている。シン・ゴジラを見た後では、体型があまりにずんぐりしているように見えるが、変えるつもりはないらしい。

話は非常に荒唐無稽であり、リアリティを求めるのはナンセンスである。地球の中に巨大な空洞があって、そこがゴジラなどの巨大生物の生まれ故郷だというのだが、何故か重力が逆転しているというワケワカの設定になっている。地球の中に深く入ってしまえば自分より下の地球の質量が減るので、重力が減ることはあっても、逆転する理由はない。また、特に必要な設定でもなく、何故あんな話になるのかと首を傾げた。そもそも、地下なのにどこから光が来ているのだろうか?

折角キングコングを登場させながら、ほぼサブキャラ扱いだったのには唖然とさせられた。そもそも人間の管理下に置くことのできるコングと、野放しにするしか方法がないゴジラとでは、勝負は最初から目に見えているようなものである。おまけに、口から訳の分からない強力な光線を吐くゴジラと、特殊能力を持たないコングが対面して戦うのは、一方的にコング側の不利である。

また、今作のコングは何と手話を理解して、自分も手話を使うので、人間とコミュニケーションが取れてしまうという驚嘆すべき能力を見せており、それが物語の核心部分を作っているのだが、あまりに都合の良い設定であり、モンスターとしての価値を大きく損なってしまったのではないかと思えてならなかった。コミュニケーションが取れるなら、最初から暴れるシーンは不要だったのではないかと思われてならない。

本作に登場する怪物はコングとゴジラばかりではなく、他にも何種類か出て来るのだが、全てが CG で作られている。中でも非常に強力な人工物までが登場して重要なキャラとなっており、オールドファンを喜ばせてくれる。「トランスフォーマー」などのような表面がツルツルしたロボットは CG 化も比較的簡単だと思われるが、体表がザラザラしたゴジラなどのキャラを CG 化するのは難易度が格段に上がるはずなので、CG 作成チームの丁寧な仕事には敬意を表したい。

今作に東洋系の登場人物は小栗旬のみで、 47 人の登場人物はいないようだが、何故か決戦の舞台が香港というのは、またも巨額の資金が 47 から投入されたことを窺わせるに十分であり、香港でなければならない理由も特になかったように思われた。最近のハリウッド映画の 47 汚染は本当に目に余るものがある。ゴジラまで奴らの手に落ちたのかと忸怩たる思いが拭えなかった。

俳優は小栗旬がこれまでの渡辺謙の息子という設定で登場していて、渡辺謙と同様に Godzilla の発音を日本風に「ゴジラ」と発音するこだわりを見せていたものの、あのように白目を剥くだけであれば小栗旬である必要はなく、折角の彼の演技力の万分の一も出せていなかったのには勿体ないと思った。英語の台詞もネイティブとは程遠く、台詞もそんなに多くないのだから、ちゃんとコーチを付けてしっかり発音練習をしてほしいところであった。ボスキャラであるべき人物もラスボス感が薄かったのは脚本の出来の悪さではないかと思った。眼福だったのは社長の娘とゴジラ研究者の娘であった。

音楽は本格的にクラシカルな作りで好感が持てたのだが、エンドロールで歌謡曲風になってしまったのが少し残念であった。完全にオリジナルの曲であったが、ゴジラの登場シーンでは伊福部昭の作風を彷彿とさせるところもあってかなり気に入った。

CG での戦闘シーンは終始見応えがあったが、やはり脚本の出来の悪さがハリウッド版の難点であると思わされた。特に「エネルギーをダウンロード」という描写などはナンセンスの極みで、頭から冷水を浴びさせられたも同然であった。この先も続編が作られる可能性もゼロではないと思うが、くれぐれも 47 の言いなりにはならないで欲しいと表明せずにはいられない思いに駆られた。
(映像5+脚本2+役者3+音楽4+演出4)×4=72 点。

アラ古希
アラ古希さんのコメント
2021年7月10日

そうだったんですか。存じませんでした。貴重な情報有難うございます。

アラ古希
pipiさんのコメント
2021年7月9日

発音練習、salmonだけでも数百回以上、行ったそうですー。
どうしてもダメで、脚本は大幅カットのみならず、人物ドラマよりも「怪獣対決」に主眼を置いた内容にシフトせざるを得なかったとか。

小栗旬が「脚本の内容を見てオファーを受けた」という「本来の脚本内容」が知りたかったです。

pipi