劇場公開日 2019年2月1日

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「女性の地位が向上した証」フロントランナー とえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0女性の地位が向上した証

2019年2月2日
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鑑賞方法:試写会、映画館

1988年のアメリカ大統領選挙で、民主党の有力な候補者だったゲイリー・ハートに降りかかるスキャンダルを描く作品
実話の映画化

現在では、不倫スキャンダルで政治家が失脚するのは、よくある話だ

むしろ、リスキーなのがわかってて、よく不倫なんかするよなぁと思う

しかし、この映画の舞台である1987年当時は、そうではなかった

プライベートなことよりも政策で戦う時代だった

ところが、ゲイリー・ハートの不倫が明らかになると、これまでスキャンダルを扱っていなかったワシントンポスト紙までが、ハートの不倫を書き立てるようになる

ゲイリー・ハートは、女性スキャンダルによって、その資質が問われた初めての大統領候補なのだ

そんなハートの姿を見て、なぜ、1987年というタイミングだったのかと考えた

中には、ジャーナリズムの質が落ちて、販売部数を増やすために政治とは関係のないスキャンダルに手を出すようになったという見方もあるかもしれない。

しかし、それは女性たちの地位が上がった証ではないかと、私は思った。

それまでの男性社会では、不倫や女遊びは、男の甲斐性、ただの火遊びだと思われいた。

しかし、女性の地位が向上し、意見が言える立場になった人が増え
「女性を遊び道具のように扱うのは不快です」
と言える人が増えてきたということだと思った。

だから、私はこのゲイリーの件が、ジャーナリズムの質が落ちて、くだらない三面記事まで扱うようになっただけだとは思えなかった

確かに、そういう一面もあるかもしれないし、確かにジャーナリストはスキャンダルよりも政策を語るべきかもしれない

しかし、その反面で、お堅い新聞が政治家の女性スキャンダルを暴くことで、若い女性をポイ捨てする権力者の地位が落ちるのは大歓迎だと思った

人間は誰しも失敗をするもので、ゲイリーの件も騒ぎすぎだったという見方もあるかもしれない

しかし、この時、ゲイリーの女性スキャンダルが明らかにならなかったら、彼に捨てられる女性たちは、もっと増えていたかもしれないのだ

ゲイリーはただの運が悪かった男ではなく、起こるべくして起きた件だったのではと思う

なんとく、話の展開は分かっているものの、それでも、スリリングな展開にハラハラドキドキしながら最後まで見入ってしまった作品だった。

とえ