記者たち 衝撃と畏怖の真実のレビュー・感想・評価
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ロブ・ライナーの正義に触れた
原題: Shock and Awe
前作「LBJ ケネディの意志を継いだ男」から半年足らずでライナー作品と遭遇した。
時は2001年の9.11〜イラクに侵攻した2003年3月、31紙を傘下に擁したという新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局を舞台に、報道のあるべき姿を問う。
大量破壊兵器の存在やフセインとビンラディンとの関係など誤った情報操作で戦争を必然とする政府。ニューヨークタイムズやワシントンポスト、そして傘下の新聞社さえも政府の流す情報に迎合する中、ナイト・リッダーのみが真実に迫るが……
大統領や政府の要人たちは一糸乱れぬ嘘つき合戦を紡ぎ、軍需産業が肥大化し戦争せずにはいられない国家となったアメリカの狂気を露わにする。
支局長を演じたライナー自身の演技が秀逸!てか、出番が多くて渋くて過去イチだと思う。そう言えば、昨年上映された監督デビュー作の「スパイナル・タップ」にもしっかり出てました。
俳優陣では「LBJ 」でも主演したウッディ・ハレルソンがもはやライナー組という感じの安定感、ジェームズ・マースデンの二枚目な笑顔は嫌味がない。若いころ完全無欠だったジェシカ・ビールはそこそこで、むしろユーゴ出身で芯の強いハレルソンの妻を演じたミラ・ジョボビッチに惹かれた。
「大統領の陰謀」のDNAを継ぐ硬派かつエンターテイメントな秀作。あっという間の91分だった。
実話ベースだけに
総括した映画
トップの発言=真実?
傑作!
単細胞の極み作戦と名付けても良かった。
真実は小説より奇なり
ド直球社会派ドラマ
踏み込みがいまひとつ
スターティングロールの最初に字幕監修が池上彰とあったが、池上さんはタイ料理にあまり詳しくないのか、情報提供者がトミー・リー・ジョーンズにパッタイが好きと言ったのを、タイ料理が好きという字幕にしてしまった。パッタイはタイ料理の焼きそばで、風味や味付け、麺の質などが中華の焼きそばとかなり異なる。たかが料理の話と言うなかれ。例えば外国人が日本料理が好きと言うのと、茶碗蒸しが好きと言うのとでは、かなりニュアンスが異なる。茶碗蒸しが好きと言われれば、その人は日本料理についてそれなりの造詣があるかもしれないと思うだろう。それに料理の名前を上げることで、その人は物事に対して具体的で正確な捉え方をする人だというイメージを作ることができる。映画の製作者は言葉にとても敏感だ。何故タイ料理ではなくパッタイなのか、きちんと考えて字幕にしてほしかった。万が一映画ファンはパッタイを知らないだろうという理由でタイ料理にしたとすれば、それは映画ファンを侮っている。
字幕についてはもうひとつ、パトリオティズムとナショナリズムを、愛国心と愛国主義という字幕にしてしまっていたが、これも愛国主義と国家主義と、正しい字幕にするべきだ。アメリカでは愛国者であることは社会人としての必須条件で、自分は愛国者ではないと言うと村八分の対象となる。しかしアメリカの愛国心は、ともすればトランプのようなアメリカ第一主義に陥りがちであり、ブッシュ政権のイラク侵攻を支持したのも同じである。それでミラ・ジョボビッチはそういうのをパトリオティズムではなくてナショナリズムだと言った訳だが、愛国心そのものを否定できないアメリカならではの表現である。
ハリウッドのB級大作の多くは、敵を探しだしてやっつける英雄が主役である。英雄はピンチに陥るが、最後は勝利する。予定調和の決まりきったハッピーエンドが喜ばれ続けるのは、観客の愛国心をくすぐるからである。民衆が共同体に精神的に依存している限りは、愛国心が善とされ続けるだろう。
本作品の記者たちは、他の多くのメディアが政府の広報と堕す中で唯一、イラクにWMD(大量破壊兵器)がないことを主張する。その主張が正しく、ブッシュや小泉純一郎が間違っていたことは既に歴史が証明している。ブッシュを選び、トランプを選んだのはアメリカの有権者たちであり、愛国者たちである。愛国心がどれほど人の判断力を鈍らせるものか、記者たちには解っている筈だ。しかしそれでも愛国者であることをやめようとしないところに、アメリカという国が抱える問題の本質がある。そこまで踏み込んでほしかった。
人間が共同体の呪縛から逃れ、寛容で平等な視点を獲得するまでには、まだまだ沢山の血が流れるだろう。その総量が人類のすべての血の総量に等しくならない保証はない。アメリカはこれからも、国内では銃の乱射事件を起こし、他国に向けては脅迫と恐喝を繰り返し、時には膨大な数の生命を奪い去るだろう。
話せばわかるのは個人同士の関係で、共同体への帰属意識が絡むと、問題は絶対に解決には至らない。祖国や故郷といった言葉に感動しているうちは、人は優しさを会得することはないのだ。
発見された大量破壊兵器、0個。
愚直に真実のみを追い続ける姿
イラク戦争において、ブッシュ政権の嘘を次々と暴き、イラクに大量破壊兵器がないことを主張し続けた「ナイト・リッダー紙」の記者たちの姿を描いた作品。
911の報復として行われた戦争だが、ラムズフェルドを筆頭に中東の石油利権や軍需産業と結びつきの強い政治家や役人が、「イラクを潰すありき」で結論を先に用意して、戦争を正当化させるための「諜報活動でやってはいけない嘘」ばかりに包まれた姿を、政権の外側から見ていく。
この戦争に絡んだブッシュの発言は完全に嘘で、911直後に「最も支持率を得た大統領」となり、その後「最も支持率が低い大統領」となって、任期満了をもって逃げるように退陣したわけですが……
「売れるために、政府発表の戦意高揚記事」ばかり載せていた、ニューヨークタイムスやワシントンポストの姿もあらわに。
「何が真実なのか?」という疑問を捨てずに取材を続けたために、「ナイト・リッダー紙」の記者たちは世間から孤立していく。
『大統領の陰謀』の時代から時は流れ、タイムスもポストも堕ちたものだと嘆きつつ。
『大統領の陰謀』におけるニクソンのように、記者たちの記事が大統領を辞任させるような展開ではなく、「正しいことを載せてもあまり新聞は売れず、世の中は変わらない」し、「世の中は政府の公式発表を無条件で信じる」傾向だと映し、「のちに正しかったと証明された」だけのモヤモヤしたところで終わるので、映画としては落とし所に物足りなさもありました。
政権の広報になったような「報道のあり方」の過ちを、アメリカはもとより、日本のテレビ局や新聞社にも、本作から学んでほしいですね。
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